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(ショートショート)花びらを

 「花びらを集めて、何を作ろう?」

 放課後の校門を抜けると、視界いっぱいに淡い春が広がっていた。

 私は、舞い散る桜の絨毯じゅうたんをゆっくりと歩きながら、頭の中でいくつものアイディアを考えている。

 高校の美術部に入ってから、私の世界は「観察」であふれるようになった。

 「考える」ということは、決して楽しいことばかりじゃない。

 正解のない問いに立ち止まり、自分の才能のなさに打ちひしがれることもある。

 けれど、生みの苦しみを越えて、真っ白だった空間に一つの形が宿ったときのあの震えるような喜びは、どんな言葉を尽くしても言い表せない。

 ふと立ち止まり、足元に舞い落ちた花びらを一枚、指先でそっとすくい上げてみる。

 「不思議だなぁ」

 遠目には一色のピンクに染まって見えるけれど、こうして至近距離で見つめれば、一枚一枚、形も色味もわずかに違うことに気づく。

 不揃いで、繊細で、それでいて力強い。

 それはまるで、それぞれが違う「個性」を持っているかのようだった。

 「ねえ、あなたたちは本当は何になりたい?」

 指先の桜に、小さく問いかけてみる。

 誰かの髪を飾るアクセサリーか、あるいはキャンバスの上で永遠に枯れない絵具の一部か。

 風が吹き抜け、私の手のひらから再び花びらが舞い上がった。

 彼女たちの返事を聞くために、私はまた、誰も見たことのない「正解」を探して歩き出す。


Fin。


※この小説はフィクションです。
登場するモノや人物は存在しません。


↑この企画に参加しました。
ありがとうございました。