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(ショートショート)本日は人柄もよく

 ある映画監督のインタビュー記事が、私の視点を決定的に変えてしまった。

 「演技には、その人間の人柄や生き方がすべて出る」

 その言葉を読んで以来、私は映画やドラマを観ても、物語に没入できなくなってしまった。

 画面の向こうで、芸能人が自信満々に演じている姿を見ても、どこか引いた目で眺めてしまう。

 確かに、この世はすべてが「演技」だと言えるだろう。

 誰もが社会という舞台で、理想の自分を演じ、仮面を被って生きている。 
 
 けれど、どれほど完璧に演じているつもりでも、ふとした瞬間にその人の積み重ねてきた生き方が漏れ出してしまうものだ。

 それは、きっと文章においても同じだろう。

 かつて憧れていた女優の熱演を見ても、もはや何も感じない。

 そこに映るのは「役」ではなく、巧妙に計算された「演出」と、その裏に透けて見える彼女の本性ばかりだ。

 ふと、テレビから映画のプロモーション映像が流れてきた。

 タイトルは、『本日は人柄もよく』。

 主役の俳優が、いかにも誠実そうな顔をして、自信たっぷりに作品の魅力を語っている。

 「馬鹿らしい」

 私は大きな声で吐き捨てると、リモコンを手に取り、無機質な黒い画面へとテレビを葬った。

 どんなに「いい人」を装っていても、何かの拍子に、塗り固めたメッキは剥がれ落ちる。

 隠しようのない「本当の人柄」が現れる瞬間ほど、残酷なものはない。

 「自分も、気をつけなきゃな」

 冷めた部屋の空気の中で、私は自分自身の「生き方」を振り返り、少しだけ背筋が寒くなった。

 化けの皮が剥がれる前に、私は早々に明かりを消し、眠りの淵へと逃げ込むことにした。


Fin。


※この小説はフィクションです。
冒頭の映画監督の部分は、実際に言ってたことをもじりました。
登場人物や作品は、存在しません。


↑この企画に参加しました。
ありがとうございました。