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イラストから空想した世界を書いて下さい。(ショートショート)銀色の翼と、三日月の教え

 春の冷たい夜気を切り裂いて、幼いドラゴンは高く、どこまでも高く翼を広げていた。

 遥か眼下に見える街並みは、まるで宝石箱をひっくり返したような輝きを放っている。

 家々の窓から漏れるオレンジ色の灯りは、あんなにも温かそうなのに。

 けれど、そこに集う人間たちの表情を覗き見て、ドラゴンは首を傾げた。

 仕事を終え、家路を急ぐ人々。

 その肩は重く垂れ下がり、街灯に照らされた顔はどれも疲れ果てた灰色に見える。

 誰一人として、この美しい夜空を見上げて微笑む余裕さえないようだった。

 「人間はどうして、あんなに疲れているんだろう」

 不思議でならなかった。

 ドラゴンにとって、空を自由に駆け巡ることはそれだけで心躍る冒険だ。

 風を頬に感じ、星屑を追いかけるだけで、自然と笑みがこぼれてくる。

 この広い世界に命を授かったこと、ただそれだけで胸の奥が温かな感謝で満たされるというのに。

 地上を観察し続けていたドラゴンは、ふと一つの真実に気づいた。

 彼らは、自分ではない「誰か」と自分を比べ続けているのだ。

 隣の家の灯りの強さを、誰かの足取りの速さを、手に持っている荷物の重さを。

 そうやって他人という「ものさし」で自分を測るから、魂が削られ、疲れ果ててしまうのだ。

 「他人と自分は違うのが当たり前なんだから、比べちゃいけないよ」

 ドラゴンは、夜空に鋭く光る三日月を見上げて小さくつぶやいた。

 自分はドラゴンとして、この翼で風を掴めばいい。

 人間にはなれないし、なる必要もない。

 自分を愛し、自分の空を飛ぶ。

 大切なことを学んだ子供のドラゴンは、満足げに尾を揺らしながら、温かな雲の上の我が家へと帰っていった。


Fin。


※この小説はフィクションです。
登場するモノや人物は存在しません。


↑この企画に参加しました。
ありがとうございました。