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『3つのお題に空想のひらめきを』&イラストから空想した世界を書いて下さい。第41回(ショートショート)ひつじ雲の宿と、忘れ得ぬ風の記憶

 ふわりと、身体が宙に浮く感覚。

 僕は今、色とりどりの気球に乗って、見たこともない空を旅している。

 これは、きっと夢だ。

 突然、視界を塞ぐように、巨大な雲の塊が現れた。

 それは、もこもことしたひつじの形の雲が幾重にも重なり、まるで城のように聳え立っている。

 看板には光の文字で『ひつじ雲ホテル』と書かれていた。


 周りを取り囲むひつじ雲が虹色に光を反射し、言葉を失うほど神秘的だ。

 「一体、どこから入るんだろう?」

 僕は気球の縁に掴まり、入り口を探してきょろきょろと辺りを見渡す。

 気球がホテルのテラスらしき雲の層に近づくと、僕は意を決して、柔らかそうなひつじ雲の上に飛び乗った。

 沈み込むような感触を予想していたが、雲は僕の身体を優しく受け止め、そのまま滑るように移動を始める。

 小さなひつじ雲の案内で、僕はホテルの内部へと招き入れられた。

 ホテルの中は、綿飴のような壁に囲まれ、不思議な温かさに満ちていた。

 窓から下を覗き込むと、遥か下に、小さな明かりが灯っているのが見えた。

 そこは『月うさぎのパン屋』という、可愛らしいお店だった。


 うさぎのお父さんが、焼き立ての香ばしそうなパンを、小さな子供のうさぎに見せている。

 親子は顔を見合わせ、ニコニコと幸せそうに笑っていた。

 その微笑ましい光景に、僕の心も温かくなる。

 ホテルを後にする際、僕はそのパン屋さんに立ち寄った。

 うさぎのお父さんが「一番のおすすめですよ」と手渡してくれた、月の形をしたパンを買う。

 一口齧ると、口の中に優しい甘さと温かさが広がり、心から幸せな気分になった。

 幸せな余韻に浸りながら歩いていると、僕は不思議な場所に差し掛かった。

 そこは『記憶ときらめく風の通り道』と呼ばれているらしい。

 光の粒子が風に乗ってきらめき、まるで川のように流れている。

 そのきらめきの中に、色とりどりの人々の記憶が、一瞬の情景となって浮かび上がっては消えていった。

 楽しそうに笑い合う家族の記憶、何かに真剣に取り組む姿、そして少し切ない別れの記憶。

 忘れてはならない大切な記憶もあれば、できれば忘れたいと願う記憶も、そこには確かに存在していた。

 良い思い出も悪い思い出も、すべてがこのきらめく風の一部となって、明日へと流れていく。

 きらめく風の通り道を抜けると、次第に空が明るくなってきた。

 夢の世界の心地よい疲れと、確かな温かさを胸に、僕は静かに帰路につく。

 そろそろ、この優しい眠りから目を覚まそうか。

 まぶたの裏に、ひつじ雲ホテルの神秘的な光を浮かべながら。


 Fin。


※この小説はフィクションです。
登場するモノや人物は存在しません。


↑この企画に参加しました。
ありがとうございました。