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残席僅少!「スペイン二つの貌」の裏側と、一人の学生の成長物語

学生の成長は、いつも分かりやすい形で現れるわけではありません。
急に立派なことを言うようになるわけでも、ある日突然、何でもできるようになるわけでもありません。
けれど、ふとした一言の中に「ああ、この学生は変わり始めているな」と感じる瞬間があります。
今日は「スペイン二つの貌」という公演の裏側で奮闘してきた、Iさんのことを書いておきたいと思います。

テレビの取材風景

最初に申し上げておきますが、Iさんは私のゼミ生ではありません。
けれど、この1年間は公演制作の助言をするために、長い時間を一緒に過ごしてきました。また感性が鋭く、企画の着眼点がとても良い学生です。

昨年5~6月に行われた「企画制作演習Ⅱ」(学生が実現させたい公演を企画し、実際に形にしていく授業)の企画選考会で、Iさんはサグラダ・ファミリアの主塔完成、ガウディ没後100年、ファリャ生誕150年という2026年の大きな節目に着目し、「スペイン二つの貌」の元となる企画書と予算書を提出しました。
約20本の企画が集まった中で、採択されたのはわずか2本。
その一つに、Iさんの企画が選ばれました。

ただ、本当に大変だったのは、選ばれてからでした…。

Iさんは、最初からスペイン音楽に詳しかったわけではありません。
建築家の教員からはガウディに関する本を、プロデューサーの教員からは大量の音源やスペインの歴史と音楽に関する本を渡され、一つひとつ勉強するところから始まりました。

企画は、思いついた瞬間がゴールではありません。
選ばれてから、“自分の企画に自分自身が追いついていく時間”が始まることを、Iさんは心の底から実感したと思います。

授業時の風景

途中、うまくいかないこともありました。
Iさんは優しい学生ですが、その分、仲間に仕事を頼むことが苦手で、自分で抱え込んでしまうところがありました。
また、進捗の共有が十分でなく「これで大丈夫なの?」「今、どこまで業務が進捗しているの?」「リーダーであるIさんに判断して欲しいのにそれをしてもらえない」等、会計や広報を担う仲間たちが不安に感じる場面もありました。正直、この頃はIさんも含めて全員が決して楽しい時間ではなかったと思います。

王子ホールで礒絵里子さんの公演を鑑賞

公演制作は、一人ではできません。
良いアイデアがあっても、仲間と共有しなければ形にならない。
責任感があっても、一人で抱え込めば周りは動けなくなる。
Iさんは、そのことを痛いほど感じたはずです。

しかし、私のゼミ生でもあるNさんやMさんは、Iさんのことをずっと粘り強く支え続けました。特にNさんは、広報担当としてメディアの方に何度も何度も電話をかけて当公演のことを取り上げていただけるようお願いし、神奈川新聞、東京新聞、かわさきFM、OTTAVA、Fm yokohama、音楽の友、ショパンなど、多くのメディアに取り上げていただくことに繋がりました。さらにMさんも、春休み中も毎日のように大学へきて、後輩たちも上手に巻き込みながら膨大な業務を黙々とこなしました。その努力が実を結び、4月に入ってからはチケットも大きく動き始めました。

Fm yokohamaのラジオ収録(パーソナリティ:礒絵里子さん)

先日、運営研究所でIさんと二人になったときのことです。Iさんが、こんなことを私に言いました。

「先生、私は今まで自分のことだけを考えて生きてきました。でも『スペイン二つの貌』の企画制作を通じて、仲間に助けられているうちに、自分も能力を高めて、仲間を助けられる人になりたいと思いました。人を助けられるほどの余力を生み出せるようになるために、シゴデキ(仕事ができる人を略した言葉)になる方法を教えてください」

この言葉を聞けただけでも、私は泣けてきました…。

「スペイン二つの貌」は、アートマネジメントを学ぶ学生たちにとって、単なる授業課題ではありません。
学生たちが悩みながら、迷いながら、それでも最後まで届けようとしている、自分たちの「作品」です。

完売まで、残り僅か。
ぜひ、満席の中で舞台と客席がひとつになり、心が震える瞬間を彼らに味わってほしいと節に願います。Iさん、Nさん、Mさんはじめ、学生たちの努力と想いが、どうか5月2日に報われますように。


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