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【不正の連鎖】現場に押し付けられる責任と崩れる信頼

なぜ不正は繰り返されるのか? 訪問看護の実態

サンウェルズと医心館、不正の構造

この2社は、いずれも訪問看護を名目に診療報酬を不正に請求し、利益を膨らませていた。しかし、これは決して特殊なケースではない。
サンウェルズは、パーキンソン病専門の有料老人ホームPDハウスを運営する企業だ。同社は、訪問看護の時間を実際よりも長く記録し、総額約28億4700万円の不正請求を行っていたことが特別調査委員会の報告で明らかになった。

一方、全国約120か所で医心館を展開するアンビス社も、不正請求の疑いが報じられている。彼らの手法は、必要性に関係なく1日3回の訪問を設定し、数分の訪問を「30分」と記録することや、1人での訪問を複数人で行ったように見せかけるものだった。

ここも同じか…

この2社は、いずれも訪問看護を名目に診療報酬を不正に請求し、利益を膨らませていた。しかし、これは決して特殊なケースではない。

こうした不正が、全国各地で報告されている。

東京都足立区の綾瀬病院では、通院時の面談を「訪問看護」として診療報酬を請求鳥取県の介護事業所千葉県柏市の訪問介護事業所でも、架空請求や無資格者によるサービス提供が問題となった。

では、実際に現場で働く看護師や介護士たちは、どう感じていたのか?

「おかしい」と思いながらも働くしかなかった

「この記録、戻しておくから書き直して。」
そう言われたとき、違和感を覚えた。

実際に訪問したのは29分。時間が多すぎても、少なすぎても記録は差し戻される。さらに報告書には、本人・家族の希望に応じ、1日3回・週7回訪問。病名・症状によりADLに介助を要する状態であり、頻回な全身状態の観察や安全なケア介入が必要なためという文言が必須とされ、これを書かなければ受理されなかった。

訪問先で利用者が寝ているのを確認しただけでも、予定通りの時間を書くよう指示された。実際にいた時間を正直に書くと、また記録は差し戻される。あるとき、夜間に「寝ているので来ないでほしい。」と言われた利用者のもとへ、2人で訪問したことがあった。上司に「これ、本当に必要なんですか?」と相談したが、まともに取り合ってもらえなかった。

それでも、働くしかなかった。周辺の訪問看護よりも賃金は良かったし、生活もある。

「おかしい」と思いながらも、働く選択肢しかなかった。

「話しても無駄だ」と思わせた会社の空気

社内には、もともとおかしいという空気があった。開設から1年ほど経ったころ、本社の人間が来て定着面談を実施した。離職率が高く、現場の不満を聞き取る目的だったのかもしれない。そのとき、記録の書き直しを強要されている。必要のない訪問を指示される。と訴えた職員もいた。

しかし、何も変わらなかった。

話しても無駄。会社は変わらない…
そう思うと、誰も声を上げなくなった。

止められなかったリーク、報道が続いた理由

マスコミの取材には一切応じないようにという通達が出た。

そして、社内向けにはこういう通達があった。

万が一、不適切な業務が発生した場合、皆様の資格やキャリアに影響を及ぼす可能性があることを十分にご理解いただき、法令を遵守しながら業務に従事していただきますようお願いいたします。また、社内規定に基づき、不適切な業務に関与した場合は相応の処分が科される可能性があります。

なお、社内で発信された情報(本書面を含む)は機密情報として扱われ、許可なく外部に持ち出された場合には、社内規定に基づく厳正な対応が取られます。

出典がわからない様一部改変

不正を指示していたはずの社長が、いざ報道が出ると「資格に傷がつく」と職員を牽制した。

会社の指示でやったのに処分されるってことか?
マニュアルに記載してあってもそれを外部に訴えても社内規定違反となると会社は守ってくれない。

「会社は守ってくれない」
——これが、今回の問題から見えてくる現実。

会社の指示で業務を行っていたにもかかわらず、問題が発覚すると「個人の責任」として処分される可能性がある。社内のルールに従っていても、不正と判断されれば厳罰の対象となる。

さらに、不正を外部に訴えようとすれば「社内規定違反」とされる。こうした仕組みにより、職員は不正を拒めず、いざ発覚すれば自己責任を押し付けられる。

それでもリークは止まらず、報道は続いた。

最初の報道が出た時点で、記者たちはすでに複数の記事を準備していたはずだ。それでも社長は「不正や過剰請求は一切ない。」とコメントした。

——どうやって切り抜けるつもりだったのか?
——株主総会を乗り切れるとでも思ったのか?

もう、誰も会社の言葉を信用しなかった。

「金に群がる底辺看護師」と言われても

不正を防ぐには、適正な運営をするしかない。決められた基準を守り、ルール通りに経営する。それだけのことだ。

だが、もし別の会社に移るとしても、給与で選ぶ。

「金に群がる底辺看護師」とネットで書かれたらしい。だが、私たちはボランティアではない。生活がある。老後の蓄えだって必要だ。お金を考えずに働くことなど、できるはずがない。

では、どうすれば不正はなくなるのか?

——なぜ、不正は繰り返されるのか?
——それは、経営側が「ルールを守る」という選択をせず、現場に無言の圧力をかけ続けるからだ。


おかしいとわかっていても、生活があるから従うしかない。
誰もがそう思っている限り、不正は続くだろう。

事件発覚後の動き

事件発覚後から、職員は次々と辞めていった。
今日もまた、ひとり辞めた。


「事件とは関係ない」と言っていたが、本当にそうだろうか?
少なくとも、事件が判断材料になったのは間違いない。

不正をなくすには、現場の声を守る仕組みが必要だ

では、現場の職員が声を上げるには、何が必要なのか?
経営側がルールを守るために、本当に必要な仕組みとは何なのか?

不正が起きるたびに、経営者は「知らなかった」と言い、現場の職員は「従うしかなかった」と語る。
そして、問題が明るみに出ると、責任を取らされるのは現場の人間だ。

この構造が変わらない限り、不正はなくならない。
誰かが声を上げても、会社が守らない限り、その声は潰される。

では、どうすればいいのか?
それを考えなければ、また同じことが繰り返されるだけだ。

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