ラーメンメガネ

高校を卒業してから。
ラーメン屋でバイトをした。

店長は中卒だったようで。
進学校だった私に対して。

おいしっかりしろA高校。
A高校を出ても大したことねえな。
と嫌なことを言われた。

加えて私は丸坊主で。
作務衣のような制服が。
似合いすぎていたので。
新興宗教とあだ名をつけられた。

他のおじさんのアルバイトの人も。
私に対して当たりがキツかった。

店長の奥さんと。
女性のアルバイトのBさんが。
優しかったのが救いだった。


昼のピークのあとに。
賄いをいただけたのは。
ありがたかった。

どうだうまかっただろ。
とニコッと笑う。
ヒゲのプロレスラーみたいな店長は。
悪い人ではないのかもと思った。

25歳のお姉さんのBさんと。
2人で賄いを食べる時間は。
緊張したが嬉しかった。

十二国記という小説が面白いよ。
と教えてくれた。


毎日。皿洗い。
ラーメンの盛り付け。
メンマ、餃子の仕込み。
後片付け。デッキブラシがけ。

油ギトギトで働いた。
原チャリに乗って。

盗んだバイクで走り出す〜。
と歌いながら帰っていた。


ある日。出勤すると。
Bさんがひどく落ち込んでいた。
店長の奥さんが慰めていた。

賄いの時に。
何があったのか聞くと。

食べ終わったあとの席に。
メガネの忘れ物があり。
Bさんがお客さんを追いかけて。
メガネを渡したそうだ。

だけどそれは。
別のお客さんだったようで。
あとからメガネの忘れ物の。
問い合わせがあったという。

え。何その話?
なんでソイツは。
メガネを受け取ったの?
意味わかんない。

でも違う人に渡してしまった。
ということで。
Bさんが弁償をする羽目に。
なってしまった。

7万円だという。

いやいやいやいや。
マジですか?
店長そこは払ってあげてよ。
と思った。

警察に相談しても。
しょうがない話か・・。


7万か。きびしいな・・。
2万くらいなら出せます・・。
と言うと。笑ってくれた。


その後。すぐに。
Bさんは辞めた。

それが原因ではなく。
結婚が決まっていたのだ。

お相手は他の店で。
ラーメンの修行をしている人で。

自分の店を出すことが。
決まったそうだ。


もうずいぶん前の話だ。
何故だかふと思い出した。

私がバイトしていた店は。
まだあるけど。
気まずくて顔を出せていない。

Bさんの旦那さんの店は。
知らないし。
Bさんの顔もうっすらとしか。
覚えていない。

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