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日本三國で本を読む

アニメ『日本三國』2026年4月より放送開始。ティザービジュアル&第1弾予告が公開され予告をみてめちゃくちゃ面白そう!!と思った私は原作の漫画を思わず一気読みしてしまいました。本作には様々な兵法書、歴史書・故事、思想書、文学の一節などが多様に引用されたりしているのでこれらの出典などをまとめてみることにしました。

※こちらのまとめはあくまで”自分調べ”であることをご容赦ください。

『日本三國』(にっぽんさんごく)は、松木いっかによる漫画作品(マンガワン連載)。文明崩壊後の近未来日本を舞台に、「大和」「武凰」「聖夷」の3国が覇権を争う中、主人公の三角青輝(みすみあおき)が知略と弁舌を武器に再統一を目指す、SF戦国大河ドラマ。

非常に面白い作品なので、まずはネタバレなく原作をよむことを強くお勧めいたします。ここから先は本編のストーリーに絡むネタバレは避けているつもりですが台詞などが出てきますので敏感な方は閲覧ご注意ください。




三国志について

三国志には「正史」と「演義」があるそうです。
作者曰く、本作は三国志をモデルにしてるとのことですが、私は超にわかなので三国志について本編には関係ありませんが少し整理。

「正史」とは何か

三国志(著:陳寿)は、中国後漢末期から三国時代にかけて群雄割拠していた時代の約100年に亘る興亡史であり、の三国が争覇した三国時代の歴史を述べた歴史書でもある。後に裴松之が注釈を付け、大幅に情報が増えた。正史は「物語」ではなく「歴史記録」であることがポイント

「演義」とは何か

三国志演義(原題:三國志演義)は、明代の作家・羅貫中による中国の長編歴史小説である。

<原作者:松木(まつき)いっか >さんのコメントでは、本作(漫画)を「正史」と捉えるならば、アニメは「演義」の位置付けとなると比喩しています。


『武経七書』『戦争論』『海上権力史論』

『孫氏』を筆頭とする『武経七書』、クラウゼヴィッツ『戦争論』マハン『海上権力史論』。何が疎いんじゃ。昔こんだけの兵法書を論じてた癖に。

第一話 三角青輝の妻が青輝に言った台詞

※アニメではこの具体的な本のタイトル名は省かれた台詞になっていました

『武経七書』

武経七書(ぶけいしちしょ)は、中国における兵法の代表的古典とされる七つの兵法書。孫子、呉子、尉繚子、六韜、三略、司馬法、李衛公問対の7冊を収録。その中でも孫氏の兵法は、私でも知っているくらい有名。

『戦争論』カール・フォン・クラウゼヴィッツ

近代戦争理論の原点で、西洋軍事思想の“聖書”、世界の参謀本部制度に影響を与えた。核心概念は「戦争は政治の延長である」。孫子が“東洋の兵法哲学”なら、戦争論は“国家理性の兵法”。

『海上権力史論』アルフレッド・セイヤー・マハン

海軍戦略の基本理論書、大英帝国・アメリカ・日本帝国に影響、日露戦争期の日本海軍にも大きな影響。主張の核心は、 国家の繁栄は「海上支配」によって決まること、商船・海軍・植民地・港湾の連動が重要であるということ。


『孫子』虚実篇(第六篇)

先んじて戦地にりて敵を待つ者はいつし、
後れて戦地に処りて戦いおもむく者はろうす。
故にく戦う者は人を致すも人に致されず。
く敵をして自ら至ら使むる者は、之れを利すればなり。

第一話 三角青輝が平殿器に言った台詞

先に戦場に到着して敵を待つ側は余裕がある。
遅れて駆けつけて戦う側は疲弊する。

ゆえに、戦いに長けた者は
敵を自分の思う場所に来させるが、
自分が敵に動かされることはない。

敵をこちらに来させることができるのは、
そこに「利益」があるからだ。

「武」が支配する世界で「知」によって天下を狙う三角青輝の開戦の狼煙とも言える瞬間の痺れる名台詞です。


『老子』第六十四章

千里の道のりも、 足下そっかの一歩より始まる

第一話 三角青輝が平殿器の去り際に言った台詞

これは「千里の道も一歩から」というやつで説明不要ですね。

三角青輝は自分の妻を殺した平殿器の去り際に遠くを見据えながらこの台詞を放ちます。

『老子』第十七章

老子曰く、「信足らざれば、ここに信ぜられざること有り」

第二話 三角青輝が阿佐馬芳経に言った台詞

リーダーに誠実さ(信)が足りなければ、民(部下)からも信用されない(不信)という意味。「全ての民に尊敬される存在になりたい」という芳経の志を聞いた三角青輝の進言。


『論語』顏淵篇

聖夷の軍師 閉伊弥々吉は輪島総師の人心掌握の行動に対して語った台詞

民、信なくば立たず

第七話 閉伊弥々吉の台詞

民の信頼がなければ国家はなり立たない。 

これは孔子による政治哲学、倫理思想である。


『兵法三十六計』第三十四計 苦肉計

『兵法三十六計』は、中国古代の兵法思想をまとめたとされる戦略・戦術の格言集

これは明らかに聖夷の偽計。「兵法三十六計」第三十四計にあたる契約、「苦肉の計」でしょう。

第七話?龍門 光英辺境将軍の台詞

苦肉計
人不自害,受害必真。
假真真假,間以得行。

(人は自らを傷つけない。
ゆえに自ら傷つくなら、それは真実に見える。
真を装い、偽を隠すことで計は成功する。)

原典(第三十四計)

自分に損害や苦痛を与えることで、相手に「本物だ」と信じ込ませる策。いわば、自己犠牲を利用した心理戦。※三國志で有名な「赤壁の戦い」で黄蓋が自ら鞭打たれ、曹操に寝返ったふりをして火攻めを成功させた、これが典型的な苦肉の計。

『兵法三十六計』第三十四計 離間計

外敵からは「苦肉の計」、内敵からは「離間の計」ですか~~~
いや~~ほんま大変っすねぇ、龍門さんも。

第七話?賀来の龍門への台詞

敵已明,友未定。
引友殺敵,不自出力。
以《損》推演

敵はすでに明確だが、味方はまだ固まっていない。ならば、敵の内部にいる者を利用し、敵を内部から崩させよ。自分は直接力を出すな。『易経』の「損」の理によってこれを行う。

原典(第三十四計)離間計

敵同士に疑念を生じさせ、内部分裂を引き起こす策。※三国志で有名なのは、周瑜が曹操軍の蔡瑁・張允を疑わせ処刑させた話。これが典型的な離間計。

『老子』第八章

事は能を善しとし、
動は時を善しとす。

第何話?三角青輝の台詞

物事を成すには「能力」が重要であり、
行動するには「時機」が重要である。

いくら正しくても能力がなければ実行できないし、能力が合ってもタイミングを誤れば失敗する。成功には「実力×タイミング」が大事だということ。

『老子』第8章にある「上善は水の如し」に続く教えで、仕事や行動において最も理想的な在り方を説いたものです。

『三宝絵詞』雪山童子

「天下に蛙の子は多かれど、蛙と成るはまれなり」

何話?賀来が青輝に託した台詞

こちらも作中での名台詞ですが、この台詞の後には「薪に臥して天を諭すべし。これ即ち雌雄を決する鍵と成る」と青輝へ指示を諭しています。

こちらは中国古典での類似の言い回しは見つけられませんでしたが、仏教説話集『三宝絵詞』の雪山童子という物語に似た言い回しがでてきます。

「魚の子は多かれど、魚となるは少し。 菴羅あんらの花は繁けれども、果実を結ぶは稀なり。人もまた 如是かくのごとし。心をおこす者は多かれど、仏に成るは稀なり。」

三宝絵詞

魚は一度に大量の卵を産みますが、成魚になれるのはごく一部です。菴羅( マンゴーのこと)は枝いっぱいに花を咲かせるが、実際に熟した果実になるのはわずか。仏道において「悟りたい」と志す人は多いが、脱落せずに最後まで修行を全うし、仏(成仏)になれる人は極めて稀であるという意味。
この比喩のオリジナルは遡るとインドの仏典『 大般涅槃経だいはつねはんぎょう』にあるとされています。

三国志の文献や逸話の中で、このニュアンス(=数多くいる中で、真に一角の人物になる者はごく僅かである)に精神性が近いものは、曹操の 煮酒論英雄じしゅろんえいゆうまたは諸葛亮の『 後出師の表こうすいしのひょう』かもしれません。
前者は「卵(志望者)は無数にいても、孵化して大成する者はごく僅かである」という選別の話で、後者は、志は高くとも、志半ばで力尽き、完成に至る者は稀であるという道程の困難さ(無常観)が一致しています。


『史記』越王勾践の逸話

「薪に臥して、天を諭すべし。これ即ち、雌雄を決する鍵と成る」

何話?賀来が青輝に託した台詞

元ネタは「臥薪嘗胆(がしんしょうたん)」。敗北の屈辱を忘れず、復讐を誓うという故事。越王勾践が呉に敗れた後、苦難に耐え続けて国を立て直した話です。

ただし原典では、天を諭すという表現はありません。


『横山三国志』

こちらは古典ではなく1971年の連載開始から現在に至るまで、幅広い年齢層に長きにわたって愛されてきた、横山光輝氏の漫画『三国志』

日本時代末期の中国史漫画、『三国志』の名台詞を用いて言うなら、
待てあわてるな、これは龍門の罠だ

閉伊弥々吉の台詞

「待てあわてるな、これは孔明の罠だ」というのが原作の台詞。こちらの台詞はミーム化し、現代でも様々な場面で使われている。日本三國の世界の中でも横山三国志が存在していることが面白い。


『兵法三十六計』第三十二計 空城計

兵法三十六計、第三十二計にあたる「空城の計」。

輪島 桜虎の台詞

空城計
虚者虚之,疑中生疑。

(虚のものはさらに虚にせよ。
疑いの中にさらに疑いを生じさせよ。)

原典(第三十二計)

守備が空虚なときは、あえて堂々として見せよ。敵に「これは罠ではないか?」と思わせることで退かせる策。※諸葛亮が城門を開け放ち、琴を弾きながら司馬懿を退かせた話が三国志演義で有名


『孫子』謀攻篇(第三篇)

国を全うするを上と為し、国を破るは之れに次ぐ。
軍を全うするを上と為し、軍を破るは之れに次ぐ。
戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり。

第十九話 三角青輝の帝への台詞

国を無傷で従わせるのが最上であり、国を破壊するのはその次である。軍を保ったまま屈服させるのが最上であり、軍を打ち破るのはその次である。百戦百勝することが最高なのではない。戦わずして敵を屈服させることこそ、最高の勝利である。


『金史』

『金史』は、中国の正史の一つであり、女真族が建てた金朝(1115年–1234年)の歴史を記録した書物である。

疑わば用いるなかれ。用いては疑うなかれ。

今井陶誉の台詞

疑っている者は用いるな。用いるなら、疑うな。
信頼できないなら任用するな任せたなら全面的に信じよ。中途半端な疑念は組織を壊す。これは兵法というよりは組織論・人事論。


『兵法三十六計』第三十五計 連環計

此度用いる計略は「兵法三十六計」第三十五計にあたる計略、連環の計

第二十七話 青輝の台詞

連環計
将多兵衆,不可以敵,使其自累,以殺其勢。
在師中吉,承天寵也。

原典

敵が強大で正面からは対抗できないときは、
敵を互いに絡ませ、縛り合わせ、
自ら身動きが取れなくなるようにせよ。
そうすれば勢いを削げる。

赤壁の戦いで曹操が船を鎖で繋いだ話(これは逆に“連環を利用された側”の例)が連環計三国志での有名な例とされる説もあるが、『日本三國』では物理的な拘束もするが心理的な連環も指している。

劉備の江南平定の際に、劉備軍師・諸葛亮が敵将の大斧の使い手・邢道栄を敢えて挑発し、突撃させて捕縛したのに、速攻縄解いて本営に帰還させた一連の流れに加え、劉備配下・関羽が敵将の黄忠の武勇を認めて見逃したため、黄忠が自身の長官に内通を疑われて処刑されそうになった有名な話をミックスさせた計略じゃ。

第二十九話 青輝による計略の説明台詞


『荀子』王制篇

荀子曰く、”君主は舟、民は水なり。水は即ち舟を載せ、水は即ち舟を覆す”

第話46話 青輝の台詞

君者、舟也、庶人者、水也。水則載舟、水則覆舟。

原文

この言葉は、権力者が自分の力だけで地位を維持しているのではなく、民の支持が必須であるという、現代にも通じる政治・リーダーシップの根幹を突いた格言です。


『三子教訓状』毛利元就

毛利元就が書き残した『遺誡(ゆいかい)』(一般的に『三子教訓状』として知られる手紙の中に書かれている格言

毛利元就曰く、”はかりごと多きは勝ち、少なきは負け候” 今は時の流れを臥して見よ。

第話47話 毛利元翠の台詞

この言葉は、『孫子の兵法(始計篇)』にある「算多きは勝ち、算少なきは勝たず」と同じような意味。


以上、自分が読んだ第49話までのまとめになります。
現代社会にも応用できるような格言がたくさんありましたね。


さいごに

私は三国志にわかというより実は苦手意識すら合ったんです。面白そうと思う反面、正史と演義など曖昧でややこしいというイメージもあり、自ら深く知ろうとしたことはありませんでした。

しかし、この漫画の面白さがその壁をぶち壊してくれました。

難しいと思っていた世界が今は少しだけ近くなりました。
私のnoteが、みなさんの何かを開くきっかけになれば幸いです。

原作は現在連載中ですので引用まとめは今後も随時更新予定です。よろしければフォロー、いいね、よろしくお願いします。

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