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夏の夜に響く非常ベルに真夜中の避難訓練を思い出す

やあ、こんにちは。最近、あまりに気温が上がり過ぎたせいか、ある夜、近くのマンションの非常ベルが、けたたましく響き渡った。念のため、窓を開けて周囲を確認したが、煙の匂いはしない。多分、熱感知の火災報知器がおかしくなってしまったんだろう。

かなり時間をおいてから消防車のサイレンが近付いてくる音がした。これでうまく終わるといいなと思ったが、非常ベルは一度止まりはしたものの、しばらくすると再び鳴り出した。鳴り止まないタイプの故障のようだ。止めても鳴り出すを繰り返しているのを聞きながら、暑いのに夜遅くまで大変だなと思った。

それはそうと火災報知器は本当にすごい音量だ。あまりにうるさくて誤報でも家に留まれないくらい音量がある。社会人になりたての頃に住んでいたマンションは、換気扇を回さずガスコンロに着火すると火災報知器が作動してしまう欠陥があった。だいたい年に一度は誰かがやらかして、夏の真夜中に火災報知器が鳴り響くことになる。

さすがに最初はびっくりした。この夜中にパジャマで避難するべきか。ドアを半開きにして顔を出し、廊下をうかがって逡巡していていたら、同じ階のドアがパッと開いた。出てきた同い年くらいの女の子と目が合う。

私が余程困った顔をしていたのだろう。「逃げましょう」と明るく声かけして彼女は階段を下りていった。私は慌てて一度部屋に戻り、携帯電話と鍵と財布を握って、階段を下りた。外に出るとマンションの住人たちがずらっとガードレールに腰掛けて途方に暮れていた。

その後、だいぶん経ってから消防車がやってきた。火災報知器が止まり、火事や異常がないことが確認された後、住人たちはそれぞれ静かに部屋に戻っていった。そして、翌年も真夜中に火災報知器は鳴り響くのであった。

毎年、階数は違えど誤報は1号室で起こった。どうやら火災報知器の設置位置に何らかの不備がありそうだと察せられた。ある年は不在の部屋で鳴ったようで現場確認に少し時間がかかった。幸い穏やかで物静かな住人たちだったため、特に騒ぐでも不平を言うでもなく、爆音で鳴り響くマンションをぼんやり見上げながら収束を待った。

一人暮らし用のマンションで、普段は住人に会うこともほとんどなかった。そんな人たちが年に一度だけ真夜中に適当な格好で困惑しながら顔を合わせる。私はそれを密かに真夜中の避難訓練と呼んでいた。火災報知器が鳴り響くと、ふとそのことを思い出す。

実際に火災になったら、姿勢を低くして口を覆って早急に逃げなきゃいけないんだけど、のんびり構えてしまいそうで、ちょっと困る。まあ慌て過ぎるよりは、いいのかもしれないね。さて、それじゃあ、そろそろ失礼するよ。

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