#21 ちょっとだけ誇らしい
平日の夜は、できるだけ楽をしたい。
今日の夕飯は、大好きな冷凍ナポリタン。
レンジの中を覗きながら、
温まるのをぼーっと待っていると、
「かうぽんもたべたい」
「ぬわっ!」
振り返ると、すぐ後ろにかうぽんがいた。
「びっくりした~(汗)」
出たな、食いしん坊。
「分かったよ。半分こね」
「ふむ」
こんなこともあろうかと、
メガ盛りにした私、ナイス。
『ピーピーピー』
温まったナポリタンを半分こして、
二人で席につく。
「いただきます」
「ます」
ぱちんと手を合わせて、
さっそくナポリタンを頬張る。
「どう?おいしい?」
「ふむ」
「これね、ナポリタンって言って、私の好きなやつなの」
「なぽり、うまうま」
どうやら、かうぽんも気に入ったらしい。
二人であっという間に平らげ、
もう一度ぱちんと手を合わせる。
「ごちそうさま」
「さま」
さて、片付けるか。
立ち上がって、ふとかうぽんを見る。
「あ! かうぽん、ナポリタンのシミついてるじゃん」
胸元には、ケチャップの赤いシミがべっとり。
かうぽんは自分の胸元を見下ろした。

それから人差し指(?)を立て、
チッチッチ、と左右に振る。
「なぽりのくんしょう」
「ぶっ!」
何を言い出すかと思えば(笑)

でも本人は、なんだか誇らしげだ。
「なるほどね(笑)。
後片付けしておくから、お風呂入っておいで~」
「ふむ」
お風呂から出てきたかうぽんの胸元から、
ナポリの勲章は きれいさっぱり消えていた。
かうぽんは胸元を見つめて、
ちょっとだけ しょんぼりしていた。
***
翌日の午後。
ランチをお腹いっぱい食べすぎたせいか、
ものすごい睡魔に襲われた。
「…先輩、大丈夫ですか?」
今にも白目をむきそうな私を、
後輩が心配そうに見ている。
「眠すぎてダメだ! コーヒー飲んでくる!!!」
財布を握りしめて自販機へ。
目にも止まらぬ早業でブラックコーヒーを購入し、
その場でグビッと飲み干す。
よし。
これで戦える。
急いで席に戻ると、
後輩がまた声をかけてきた。
「先輩、襟にコーヒー付いちゃってます!
シミになってるかも…」
「えっ」
慌てて襟元を見る。
やってしまった。
一瞬ひるんだ。
でも次の瞬間、
昨日のかうぽんが頭に浮かんだ。
私は人差し指を立てる。
そして、
チッチッチ、と左右に振った。
「これは、コーヒーの勲章だよ」
「…?」
後輩の頭の上には、
たくさんの「?」が浮かんでいた。
そりゃそうだ。
私だって昨日までなら、
同じ顔をしていたと思う。
でも、
今はなんだか嬉しかった。
眠気に負けまいと、
ブラックコーヒーを一気飲みした証。
そう思うと、
襟についた茶色いシミが、
さっきよりほんの少しだけ誇らしく見えた。
このころには眠気はすっかり吹き飛び、
頭の中ではもう
「かうぽん、見て見て~」
と襟元を指さす私と、
「ふむ」
と言いながら、
私のしつこそうな勲章(シミ)に
うらやましそうな視線を送るかうぽんの姿が浮かんでいた。

いいなと思ったら応援しよう!
ご支援ありがとうございます🐄🍀
いただいたチップは、かうぽんのおやつ代として大切に使わせていただきます☺️