#10 シェアハピ
今日の私は、とても気分が良かった。
なぜなら、桃をもらったからだ。
しかも、ただの桃じゃない。
良い香りがして、
みずみずしくて、
見るからに美味しそうな高級な桃。
会社で一切れ食べたのだけど、
それはもう、とんでもなく美味しかった。
私があまりにも幸せそうな顔をしていたようで、
余っていた一個を
先輩がこっそり譲ってくれた。
桃がある。
それだけで、
午後の仕事も少し頑張れた。
帰宅すると、
部屋には誰もいない。
よし。
桃は独り占めだ。
冷蔵庫に桃を入れ、
急いでお風呂に入る。
準備は万端。
冷えた桃を取り出し、
丁寧に皮をむいて切り分けた。
その時だった。
じーーーーーーーっ。
背中に視線を感じる。
振り返ると、
白黒の小さいのが立っていた。
しかも少しよだれを垂らしている。

「…かうぽんも好き」
そんな顔で見られたら、
無視できない。
「…一緒に食べる?」
「ふむ」
食い気味で返事が来た。
さようなら、独り占め。
そう思いながら桃を器に盛り、
フォークを取りに行く。
そして戻ってくると――
かうぽんは既に食べていた。
「あーーーーー!!先に食べたな!!」
するとかうぽんは、
「桃、おいしい♡」
と言って、
見たことがないくらい満面の笑みを浮かべた。
なんだその顔。
ちょっと笑ってしまった。
仕方ないので私も席に座り、
桃をひと口食べる。
「わぁ~~~♡」
甘い。
おいしい。
とてもおいしい。
そしてなぜか、
かうぽんは得意げだった。
「かうぽん、私に感謝するんだぞ」
するとかうぽんは胸を張って言った。
「しぇあはぴ」

「だからそれは私が言うやつね」
「ふむ」
思わず笑った。
二人で食べた桃は、
会社で食べた時よりも、
少しだけおいしかった。
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