#19 大好きのトナリ
今日は上司との面談があった。
「この先、どんなキャリアを考えてる?」
そう聞かれたけれど、私は答えられなかった。
昔からこの手の質問が苦手だ。
やりたいこと。
なりたいもの。
将来の目標。
明確に言える人は、どのくらいいるのだろう。
正直、毎日を生きることで精いっぱいだ。
目の前の仕事を1つずつこなしていく。
それじゃダメなんだろうか。
面談の最後、上司は言った。
「まずは、自分が何が好きか考えてみるといいかもね」
***
帰宅後も、その言葉が頭の中をぐるぐる回っていた。
好きなこと。
そう言われても、
仕事につながるようなものなんて思い浮かばない。
「私みたいなモブは、
そこそこ楽しく生きられたらそれで十分なんだけどなぁ…」
ソファに倒れ込むようにそうつぶやいた瞬間、やつが現れた。
「…もぶ?…ももぶぅ?…桃の屁?」
「また変なこと言ってる(笑)」
いや、笑っちゃいけない。
でも笑ってしまう。
「かうぽんってさ、『屁』好きだよね。」
「ふむ」
「否定しないんかい(笑)」
するとかうぽんは
誰もが知る、あのメロディーに乗せて歌い始めた。
「屁~は『平和』のへ~♪」

一瞬、部屋が静まり返る。
「…なにそれーーー!(笑)」
あまりにも くだらなすぎて、
お腹を抱えて笑った。
かうぽんは得意げな顔で、
「屁~は『平和』のへ~♪」
を何度も何度も歌っている。
笑いが少し落ち着いたころ、私は聞いてみた。
「それ、そんなに気に入ったの?」
「ふむ」
「…好きなんだ?」
「だいすき」
その返事が、なんだか少しだけ
うらやましかった。
桃も好き。
アイスも好き。
紙飛行機も好き。
セミの抜け殻も好き。
そして、屁の歌も好き。
好きなものが、ぽんぽん出てくる。
私は「好き」が分からないと思っていたけれど、
もしかしたら、最初から大きなものを探そうとしていただけなのかもしれない。
「なんか私も、そういうの見つけたいな。」
「ふむ」
「時間はかかるかもだけど、かうぽんとなら見つけられそう。」
「まかせろ」

まだ笑いの余韻で、お腹が少し痛い。
ひとりじゃ難しいことも、
誰かと笑いながら歩いていたら、
いつの間にか見つかることもあるのかもしれない。
私の「好き探し」は、
今日から、かうぽんと一緒だ。
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