見出し画像

㊲ 小さな歓声「ぉお!」でアイスの天ぷらが月2倍売れた老舗そば店。

【イントロです】
老舗そば店の脇役メニュー
「アイスの天ぷら」を大胆リニューアル。
器・食べ方・断面図イラストまで
丁寧に見直した結果、
小さな歓声が連鎖し注文数は月2倍に。
過去の成功に安住せず
“一工夫”を重ねる店主の流儀と、
良い流れをつかむ感性の大切さを教わった。

【本文です】
「師走といえば年越しそば」。そんな季節がやってきた。
大正十年創業のこの店でも、終日そんな会話が聞こえてくる。

ここからは「アイスの天ぷら」、
そう、脇役メニューのリニューアルについて話そう。
主役のそばの話じゃなくて、ごめんなさいね。

ポイントは5つ。

① 器

丸い小皿から、濃色で重厚感のある四角い陶器に刷新。
きなり色に揚がったアイスを中央にのせれば、見栄えがよく、
ちょっと高級に見える。

② ナイフとフォーク

これまでは厨房で四つ切りにしてから給仕していたが、
揚げたてを自ら切る“どきどき感”を味わってもらうため、
ナイフとフォークを添えることにした。

③ かりんとうとムース

アイスの下に蕎麦かりんとうを敷き、別皿には醤油ムースを添えた。
パリパリとふんわり――質感の変化を楽しめる仕立てだ。

④ 断面図

写真メニューをイラストに変更。
カットした断面図に、ひとこと解説を添えた。

⑤ 値上げ戦術

思い切って1.5倍に値上げした。
その理由はズバリ、「自信があったから」。

①~⑤の効果はすぐに現れた。
断面図に惹かれたのか、早々に注文が増え始めた。

実物がテーブルに届くと、まず小さく「ぉ!」と声が上がる。
ナイフを入れた瞬間、その声は「ぉお!」と大きくなる。
続いて「なに、この泡?」と、醤油ムースに驚く声が漏れる。
この小さな歓声が、周囲のテーブルにも注文を波及させていく。

そば屋では、カレー南蛮の香りが次の注文を呼ぶことが多いが、
甘味の場合は“声”がその役を担った。

集計すると、アイスの天ぷらの注文数は月あたりで2倍に伸びていた。
実はこの直前、店主はパフェの注文数も5倍に伸ばしている。
こちらも写真を断面図入りのイラストに交換し、丁寧な解説を添えた、
既存の甘味メニュー刷新の第一号だった。

しかし今回はその成功体験をそのまま踏襲せず、
器や食べ方まで踏み込んで工夫を加えたところが、店主の真骨頂だ。

うまくいくコツは、
「良い流れが来たら、間を空けず動くこと」。
そして前の成功をそっくり真似るのではなく、
「必ず一工夫を加えること」だという。

「良い流れが来たら…」
この言葉を聞いて、アスリートのインタビューを思い出した。
それを感じ取ることができるのも、プロの条件なのかもしれない、と。

Blicon note 20251223

たとえば、この断面。
描くの大変だけど、
それを見たら食べたくなるんだよね。
手書きって、
どうしてこんなに魅かれるんだろう?

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集