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マツダ(7261)は本当に「やばい」のか 〜関税で営業益7割減・期中は赤字でも通期黒字死守、配当5%とPBR0.38倍の割安を3層検証〜

こんにちは、ウマキです。

2026年5月にマツダが発表した本決算は、数字だけを追うとかなり厳しいものでした。売上高こそ4兆9,000億円台を保ちましたが、本業のもうけを示す営業利益は前の年から7割以上も減っています。しかも期の前半には、最終赤字にまで沈んでいました。

ネットを眺めていても、「マツダ やばい」「マツダ 赤字」といった言葉が、いつになく目につきます。決算のニュースを開けば、赤字や大減益といった見出しが並んでいたのですから、不安になった人が多かったのもうなずけます。

理由は、わりとはっきりしています。トランプ関税です。マツダは世界で売るクルマのおよそ3割をアメリカで販売していて、しかもその多くを日本やメキシコから輸出しています。関税の網に、業界のなかでも一番きれいに引っかかってしまう構造なのです。

ただ、ここで一度立ち止まって考えたいことがあります。決算の見出しが赤字や大減益で埋まっていた一方で、マツダの株価はこの1年で3割以上も上がっているからです。会社が本当に「やばい」なら、株価はふつう下がります。ところが現実は、逆に動いてきました。この食い違いこそが、マツダという銘柄をおもしろくしています。

そこでこの記事では、マツダをいくつかの角度から順番に見ていきます。まず、世間で言われる「やばい」がどこまで本当なのかを確かめます。次に、倒産や赤字転落といった最悪のシナリオが現実味を帯びているのかを、財務と今期の計画から点検します。そのうえで、いまの株価で買えるのかどうかまで踏み込んでいきます。

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関税に揺れた1年 ― マツダの株価と業績のいま

まずは、足元の株価と会社の姿をざっと押さえておきます。

マツダ(7261)株価は赤字報道の裏で1年+35%

株価 1,137円(1Y +34.7%) / 時価総額 7,184億円 / PER 8.0倍 / PBR 0.38倍 / 配当利回り 4.8%

マツダは広島に本社を置く自動車メーカーで、世界での販売台数は年間120万台前後です。トヨタの1,000万台、ホンダの約400万台と比べると、規模はひとまわりもふたまわりも小さい中堅どころに位置します。国内では5番手前後、世界では15位あたりという立ち位置です。

それでもマツダには、規模では測れない個性があります。1920年に広島で生まれたこの会社は、世界で唯一ロータリーエンジンを量産し、ル・マン24時間レースを日本車として初めて制した技術の会社でもあります。派手さより走りと質感で勝負する、いわば「小さくてもキラリと光る」路線が、マツダらしさだと言えます。

近年は魂動(こどう)デザインと呼ばれる官能的な造形や、内燃機関を磨き上げるSKYACTIV技術で、独自のブランドを築いてきました。商品の柱は、主力SUVのCX-5を中心に、CX-30やCX-60、北米向けのCX-90、そしてファンの多いロードスター(MX-5)まで幅広く揃っています。

マツダのクルマづくりには、「少ない台数でも、一台あたりの価値を高く売る」という一貫した思想があります。大量生産で価格を下げる王道ではなく、走りとデザインで選んでもらう道です。この戦略が当たれば利益率は高くなりますが、外れれば数の少なさがそのまま弱さになります。規模を追わないという選択は、常に諸刃の剣でした。

こうした個性の一方で、経営の数字はアメリカ市場に大きく依存しています。世界販売の約3割が北米で、しかもその多くを日本やメキシコからの輸出でまかなう構造です。北米が生命線であるがゆえに、そこにかかる関税が、そのまま会社の屋台骨を揺らすことになりました。

皮肉なのは、この北米依存が、これまではマツダの強みだった点です。アメリカでSUVが売れ、円安も追い風になって、数年前まではむしろ絶好調でした。同じ構造が、関税という一点が変わっただけで、いきなり最大の弱点に変わってしまいました。強みと弱みは、環境しだいで裏返るということです。

株価チャートを見ると、この1年はなかなかにジェットコースターでした。2025年の秋には1,000円前後をうろついていた株価が、2026年に入ると業績回復への期待から一気に駆け上がり、3月には1,400円近くまで届いています。

ところが本決算とその後の見通しが出たあたりで熱が冷め、5月には1,000円割れ寸前まで押し戻されました。そこからまた買い直され、7月時点では1,137円まで戻しています。ならしてみると、1年の上昇率はプラス34.7%です。

関税で利益が吹き飛んだ会社にしては、意外なほど底堅く見えます。この「業績は最悪、でも株価は意外に堅い」というねじれの正体を解いていくのが、この記事の狙いになります。

💡株価は業績の一歩先を歩きます。マツダの株が上がってきたのは、市場が「関税ショックはもう底を打った」と読み始めたサインなのかもしれません。

検証① ― 世間が言う「やばい」は、どこまで本当か

まずは弱気材料から、逃げずに正面から見ていきます。「やばい」と言われるだけの理由は、確かに存在します。

関税で吹き飛んだ、利益の7割

2026年3月期のマツダは、売上高が4兆9,181億円と、前の年から2.0%減にとどまりました。ところが営業利益は515億円で、前の年から72.3%も減っています。当期純利益も350億円と、こちらも69.2%の大幅減益でした。

売上はほとんど減っていないのに、利益だけがごっそり削られているのがポイントです。ふつうの減益とは、明らかに毛色が違います。何か特別な要因が、利益だけを狙い撃ちにしたことがうかがえます。

その犯人が、米国の関税です。トランプ政権は2025年、日本車にかける関税を一時2.5%から27.5%まで引き上げ、その後の日米交渉を経て15%で決着しました。それでも従来の2.5%からすれば大幅な引き上げで、輸出に頼るメーカーには重い負担がのしかかりました。

会社の説明によれば、関税はマツダの営業利益を1,549億円も押し下げています。もし関税がなければ、営業利益は2,000億円を超えていた計算になります。つまりマツダは、本業でしっかり稼ぐ力を持ちながら、稼いだそばから利益の大半を関税で持っていかれた1年だったわけです。

1,549億円という数字は、マツダの規模からすれば途方もない重さです。しかもこれは、マツダが何か失敗したわけでも、クルマが売れなくなったわけでもありません。海の向こうの政策ひとつで、これだけの利益が消えてしまう。そこに、この問題のやりきれなさがあります。

数字の並びだけを見れば、「7割減益」というインパクトは強烈です。ここだけを切り取れば、「マツダはやばい」と言いたくなる気持ちも、正直よくわかります。

期の前半、マツダを苦しめた赤字

しかも、話は減益だけでは終わりません。2026年3月期の途中経過を四半期ごとに追うと、マツダは実際に赤字へ転落していた時期がありました。

  • 第1四半期(4〜6月)は、最終損益が421億円の赤字

  • 上期(4〜9月)でも、452億円の最終赤字

  • 第3四半期までの累計(4〜12月)で、147億円の赤字まで改善

関税が発動した直後の春から夏にかけて、マツダの決算は真っ赤に染まっていました。この時期のニュースを読んで「マツダは大丈夫なのか」と不安になった人は、決して少なくなかったはずです。「やばい」という言葉が飛び交ったのも、ちょうどこのあたりでした。実際、社長の毛籠氏が「この難局を必ず乗り越える」と決意を語る場面もあり、それだけ社内の危機感も強かったことがうかがえます。

ただ、この数字の並びには、見落とせない光も混じっています。上期累計の452億円をピークに、赤字がそこから急速に縮んでいるのです。9カ月累計では147億円まで戻し、下期に向かって傷がふさがっていきました。

そして最終的に、通期では黒字へ着地します。関税という重い逆風のなかで、マツダは下期に必死で立て直しを図り、なんとか黒字で1年を終えました。

下期に効いたのは、売れ筋SUVの値上げをアメリカで浸透させたこと、販売台数が持ち直したこと、そして円安が採算を助けたことです。関税というハンデを背負いながらも、稼ぐ仕組みそのものは壊れていませんでした。この「どん底からの巻き返し」ができる底力こそが、後半の伏線になります。

💡赤字のニュースは大きく報じられますが、その後の「巻き返し」は地味なので見落とされがちです。マツダの決算は、まさにその典型でした。

なぜマツダは、関税に業界で一番弱かったのか

同じ日本の自動車メーカーでも、関税の痛みは横並びではありません。マツダの傷が特に深くなったのには、はっきりとした理由があります。

マツダは世界で売るクルマの約3割をアメリカで販売しています。ここまではスバルなどと似た比率です。問題はその先にあります。

アメリカで売るクルマの約8割を、日本とメキシコからの輸出でまかなっているのです。つまり、アメリカで売るのに、アメリカでほとんど作っていません。輸入したクルマに関税がかかる以上、現地生産の比率が低いマツダは、関税をまともに全身で受け止めることになりました。

大手のトヨタやホンダは、アメリカ国内に巨大な工場群を持っています。関税がかかる輸入車の割合が相対的に低いため、値上げや生産の振り分けで痛みをある程度は吸収できます。

一方、マツダやスバル、三菱自動車といった中堅は、その吸収する体力が薄いのが実情です。実際、大手7社の減益要因が合計で2兆円を超えると試算されるなか、規模の小さいマツダとスバルでさえ、それぞれ2,000億円台の減益要因を背負うと見込まれました。体の大きさに対して、関税の重りが不釣り合いに重いのです。

対策がないわけではありません。マツダはトヨタと共同で持つアラバマ工場での現地生産を増やしたり、メキシコで作っていた車種をアメリカ向けに振り替えたりと、関税のかからない作り方へ少しずつ舵を切ろうとしています。ただ、生産拠点の組み替えには時間もお金もかかります。効果が本格的に効いてくるまでには、どうしても数年の辛抱が必要になります。

この構図を、実際の株価で見比べてみます。

トヨタ(7203)― 大手には吸収する体力がある

株価 2,899円(1Y +16.1%) / 時価総額 42.3兆円 / PER 11.4倍 / PBR 0.86倍 / 配当利回り 3.5%

トヨタも関税とは無縁ではなく、営業利益ベースで1兆円規模の重しを負っています。それでも株価はこの1年で16%上昇し、下値も堅く推移してきました。

世界販売1,000万台という圧倒的な規模と、北米での分厚い現地生産が、関税の衝撃をやわらげる緩衝材になっています。同じ関税でも、受け止める体力がまるで違うわけです。市場も「トヨタなら耐えられる」と見ています。

SUBARU(7270)― マツダと同じ景色を見る中堅

株価 2,534円(1Y +0.6%) / 時価総額 1.8兆円 / PER 13.7倍 / PBR 0.64倍 / 配当利回り 4.6%

マツダとよく似た立場にいるのがスバルです。アメリカ依存度が高く、現地生産だけではまかないきれない構造も共通しています。

スバルの株価は2025年末に3,500円台まで買われたあと、関税の現実が意識されると2,300円台まで崩れ、この1年ではほぼ横ばいに終わりました。同じ「関税弱者」でも、マツダのように株価が大きく戻せていない点は対照的です。裏を返せば、マツダのプラス34.7%という戻りは、自動車株全体の追い風だけでは説明できず、マツダ固有の期待を映していると読み取れます。

💡「関税に弱い」という弱点は事実です。ただ、その弱点は誰の目にも明らかで、すでに決算にも株価にも織り込まれてきました。本当に怖いのは、まだ誰も気づいていないリスクのほうです。

無理をして守り抜いた、配当という約束

もう一つ、投資家が気にしている論点があります。配当です。

マツダは2026年3月期も、1株あたり年55円の配当を前の年と同じ水準で維持しました。利益が7割も減ったなかで減配に踏み切らなかったのは、株主への姿勢としては立派です。

ただし、その中身をのぞくと少し気になる点も見えてきます。配当性向、つまり稼いだ純利益のうちどれだけを配当に回したかという比率が、なんと98.9%まで跳ね上がったのです。

平たく言えば、この年のマツダは稼いだ利益のほぼ全額を配当として吐き出しました。マツダはコロナ禍の2021年3月期にいったん無配へ沈み、そこから20円、45円、60円と配当を積み上げ、近年は55円前後で株主還元を続けてきた会社です。ふだんの配当性向は20〜30%程度でしたから、今回いかに無理をして約束を守ったかがわかります。

配当利回り約5%という数字は確かに魅力的です。ただそれは、「利益が激減したのに配当を据え置いた」結果でもあります。この配当を来年以降もきちんと払い続けられるのか。ここは後半でしっかり考えます。

検証② ― それでも「倒産」や「赤字転落」は、また別の話

ここまでが弱気材料の整理です。関税の直撃も、期中の赤字も、無理を重ねた配当も、どれも事実でした。ではマツダは、このまま沈んでいくのでしょうか。ここからは反対側、つまり「意外としぶとい」という側面を見ていきます。

財務は、驚くほど健全

まず、倒産という言葉から一番遠いところにいるのが、実はマツダの財務です。

2026年3月期末のマツダは、手元に1兆2,932億円もの現金を抱えています。有利子負債は8,501億円ですから、借金を全部返してもなお4,430億円の現金が残る計算になります。いわゆるネットキャッシュがプラス、つまり実質的には無借金に近い状態です。

自己資本比率も42.5%と、製造業として何の不安もない水準を保っています。自己資本そのものも1兆9,000億円を超え、前の年よりむしろ増えています。マツダは2010年代の構造改革で稼ぐ力と財務体質を鍛え直しており、その蓄えがいま効いている形です。

利益が7割減った、期中は赤字だった、と聞くと会社が傾いているように感じます。ところがバランスシートを開くと、まったく印象が違います。マツダは、数年分の赤字くらいなら平然と耐えられるだけの手元資金を持っているのです。倒産や債務超過といったシナリオは、少なくとも現時点では現実的な話ではありません。

そもそも関税を除いた本業の実力は、決して弱くありません。関税がなければ営業利益は2,000億円を超えていた計算で、北米では単価も採算も高いSUVが主力です。ブランドを磨いて値上げを通せる力もあります。今回の不振は、稼ぐ力そのものが失われたのではなく、稼いだ利益を関税に持っていかれた結果だという点は、押さえておきたいところです。

💡「赤字=倒産」ではありません。赤字で本当に危ないのは、手元にお金がない会社です。マツダはその正反対で、金庫にはたっぷり現金が眠っています。

同じ「やばい」でも、日産とは別物

同じ自動車業界で「やばい」と検索される会社に、日産があります。ただ、マツダと日産では、同じ言葉でも中身がまるで違います。

日産は最終赤字が数千億円規模にふくらみ、配当も止め、大規模なリストラに踏み込む苦境にあります。一方のマツダは、利益こそ大きく削られたものの、通期では黒字を守り、配当も維持し、手元資金はむしろ潤沢です。

同じ「やばい」でも、経営が本当に傾いているのか、外部要因で一時的に利益がへこんだだけなのか。その差は決定的に大きいと言えます。マツダの場合は、明らかに後者に近いのです。

トヨタという、静かな後ろ盾

もう一つ、マツダの安心材料になっているのがトヨタの存在です。

マツダとトヨタは2017年に資本業務提携を結び、トヨタはマツダ株の5.05%を保有する第2位株主になっています。両社はおよそ500億円ずつを出し合う相互出資で、対等な関係を築きました。米国での完成車生産、EV開発、コネクテッドや先進安全技術、そして商品の相互補完まで、幅広い分野で手を組んでいます。

その象徴が、アメリカ・アラバマ州で折半出資により共同運営する完成車工場です。2021年に稼働したこの工場は、マツダにとって貴重な「アメリカで作れる拠点」でもあります。関税を避けるために現地生産を増やそうとするとき、トヨタと組んだこの工場は大きな武器になります

世界最大の自動車メーカーが背後にいて、生産や技術で手を組んでいるという事実は、マツダの信用力を静かに支えています。単独では体力の薄い中堅が、大手の懐に一部入り込んでいる。この立ち位置は、いざというときの底堅さにつながります。

新型CX-5という、反転の切り札

そして今、マツダが最大の勝負をかけているのが、主力SUVの新型「CX-5」です。

CX-5はマツダの屋台骨で、2026年1月には世界累計での生産・販売が500万台に達しました。世界の販売の相当部分を1車種で背負う、まさに大黒柱です。そのモデルが、2026年5月21日に9年ぶりのフルモデルチェンジを迎えました。

新型は「新世代エモーショナル・デイリーコンフォート」という思想のもとで開発され、扱いやすい新しいハイブリッドも用意されています。旧型からデザインと質感を磨き直し、日常での使い勝手を高めた点が特徴です。価格は330万円から430万円ほどで、日本での受注は発売からわずか1カ月で1万台を突破しました。

しかも受注の65%が最上位グレードに集中しています。単価の高いクルマがよく売れているという事実は、収益面でも心強い材料です。安いグレードで数だけ売れるより、はるかに利益への貢献が大きくなります。

この「高いグレードでも選ばれる」という事実は、マツダのブランド力を物語っています。規模ではトヨタに遠く及ばなくても、走りと質感を評価する固定ファンが世界中にいます。安売りに頼らず、指名買いで利益を積める。これは、体の小さいマツダが生き残るうえで、意外と大きな武器になります。

北米はマツダにとって最大の稼ぎ場であり、しかもSUVが主役の市場です。CX-5はその中心にあるモデルですから、新型が北米の顧客に受け入れられるかどうかは、会社全体の浮沈に直結します。関税で現地の価格が上がりやすいなかでも、商品力で選ばれ続けられるかが問われます。

北米にも同じタイミングで投入され、関税の逆風のなかでも販売を押し上げる役割を期待されています。新型CX-5がどれだけ売れるかは、そのままマツダの今後を左右します。ここが空振りに終われば計画は崩れますし、逆に想定どおり売れれば、業績は一気に景色を変えます。

今期は、営業利益が2.9倍になる計画

その新型CX-5を起爆剤に、マツダは2027年3月期の見通しをかなり強気に描いています。

  • 売上高は5兆5,000億円と、過去最高を計画

  • 営業利益は1,500億円で、前の年の約2.9倍

  • 当期純利益は900億円で、こちらも約2.6倍

  • グローバル販売台数は132万4,000台と、10万台超の上積み

関税の影響が和らぐことに加え、生産拠点の最適化やコスト削減、そして新型CX-5の投入で、一気に増益へ振り戻すというシナリオです。数字だけ見れば、赤字寸前だった会社が翌年に過去最高の売上を狙うのですから、ずいぶんと大胆な計画に映ります。

もっとも、この計画は関税率が15%でとどまり、為替も一定の円安が続くという前提の上に立っています。前提が動けば、数字も大きく振れます。過去最高という強気の絵は、あくまで環境が味方したときの姿だと捉えておくのが冷静でしょう。この計画をどこまで信じてよいのかは、最後の章で正面から考えます。

電動化投資は、身の丈に合わせて絞り込み

もう一点、地味ですが重要な方針転換があります。EV戦略の見直しです。

マツダは2026年5月、2030年までの電動化への投資額を、それまでの1.5兆円から1.2兆円へと3,000億円削りました。あわせて、2030年のEV販売目標も世界販売の約4割(40万台)から、15%程度(20〜25万台)へと引き下げています。自社開発EVの投入も2年ほど後ろ倒しにしました。

背景にあるのは、アメリカでEVの需要が想定より伸び悩んでいる現実です。無理にEVへ全力投球するより、まずは新しいハイブリッドや、発電用ロータリーエンジンを積んだ独自のプラグインハイブリッドで足元を固める。そういう現実路線に舵を切りました。

マツダには、発電用ロータリーエンジンを積んだプラグインハイブリッド「MX-30 ロータリーEV」のような独自の一手もあります。かつてのスポーツエンジンを、EV時代に発電機として蘇らせた発想です。大手と同じ土俵で消耗戦を演じるのではなく、小さな会社らしい尖った技術で差別化を狙う。そこにマツダの生き残り方が透けて見えます。

毛籠(もろ)勝弘社長は、これを「単なる削減ではなく、戦略に基づいて最適化した」と説明しています。身の丈に合わない投資で体力を削るより、まず足元の関税と本業の立て直しに集中する。小さな会社なりの、地に足のついた判断だと言えます。

💡EVに全力投球しないことを弱気と見るか、身の丈を知った堅実さと見るか。判断は分かれますが、体力の薄い中堅にとって「投資を絞る勇気」は、決してマイナスばかりではありません。

検証③ ― で、マツダの株はいまの値段で買えるのか

ここまでで、「やばい」と言われる理由が本物であること、それでも倒産や赤字転落とは距離があること、その両方を見てきました。残るのは、投資家にとって一番知りたい問いです。いまの株価で、マツダは買えるのか。ここからは、数字とシナリオに踏み込んで考えていきます。

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