JKと黒い物体達
田中が高校生の時の話。
夜中に喉が乾いたからリビングに行った。いつもと同じリビングなのになんとなーく雰囲気が違って窓のカーテンをあけたら一切景色がなくて絵の具で塗られたように真っ暗だった。
怖くなった田中は慌てて別室で寝ている母の元へ行った。
しかし、いつもなら寝ているはずの母がいなく、布団だけが敷かれていた。
やばい、やばい、やばい。と急いで自分の布団に戻って身を隠した。
しばらくしてもう一度、母のところへ行ってみよう。と勇気を出して布団から出た。
不思議なことに夜中だったはずなのに、朝日が昇っていてリビングからは母が朝ご飯をつくっている音がした。
なんとも不思議な感覚に陥ったけどきっと夢でも見たのだろう。と言い聞かせてリビングへ行き朝ごはんを食べその日をいつも通りすごした。
そしてまた夜がきていつものように眠った。
そしてまた夜中に喉が渇いてリビングへ行った。
そしてまた昨日と同じ違和感に包まれた。
昨日と同じで窓の外は暗く母の寝室には布団だけが敷かれていた。TVもつかない。枕元に置いてあった携帯は何故か無い。あぁ、また夢でも見ているのか。そう思って少しでも恐怖心を和らげるほかなかった。夢なら大丈夫。そうだ、外へ行ってみよう。玄関へ行き靴を履き扉をあけた。
エレベーターに乗り1階へ降りた。1階に降りても外は真っ暗だった。マンションの外へ出ようとしたが扉があかず出られなかった。恐怖心MAXになった田中は部屋へ戻ろうとエレベーターのボタンを押した。
エレベーターを待っていると黒い物体がぞろぞろとどこからともなくやってきた。明らかに人ではないその姿を見て直感的に逃げなくちゃ。と思い急いでエレベーターに乗り部屋へ戻り昨日と同じように自分の布団に包まった。
(夢から覚めろ夢から覚めろ)そう、強く願って目を瞑った。
しばらくして目を開け布団から出て窓の外を見ると朝日が昇っていた。夢から覚めたことへの安心を感じながらリビングへ行き朝食を食べ、いつも通りの日を過ごした。
夜がきた。
またあの夢を見るかも…。と思うと流石に嫌になって徹夜を決意するも睡魔に耐えられず寝てしまった。
そしてまた夜中に目が覚めた。目が覚めた時点で違和感に気づいた。3日目ともなると(またか)と少し慣れた様子でリビングへ行き、念のため窓の外と母の寝室を確認した。昨日と同じだった。
怖いはずなのに昨日の黒い物体が気になった。ドキドキと大きい音を鳴らしながらエレベーターで1階へ降りた。
1階へ着くと複数の黒い物体はエレベーターホールから少し離れたエントランスでうごめいていた。
しばらくその様子を観察していたら黒い物体達は田中の存在に気付き速い速度で迫ってきた。
慌てて逃げた。エレベーターを待ってる余裕はなく階段で駆け上がった。18階まで駆け上がった。必死に駆け上がった。後ろを振り返ると黒い物体達の姿は見えなくなっていた。
胸の鼓動が落ち着かないまま、田中はいつものように部屋へ戻り自分の布団に包まり目を閉じて(夢から覚めろ夢から覚めろ)昨日と同じように強く念じた。
しばらくして布団から出ると…お決まりのシチュエーションだ。
そしてまた夜がきて、寝て、夜中に目が覚めて同じシチュエーション。外は暗い。母はいない。違和感だらけの空間。
4日目ともなると田中も疲れ切っていて、いつまでこの夢は続くんだろう…。と不安になった。
もしかしたらあの黒い物体達をやっつければ良いのでは?そしたらこの夢をもう見なくなるのでは?そんな考えが浮かんだ。
意を決した田中はリビングから包丁を持ち出し右手にしっかりと握り玄関をゆっくり出てた。
エレベーターを待っていると、階段の方からザッザッザッという音が聞こえてきた。その音はどんどん大きくなってきた。
黒い物体達だった。
黒い物体達は田中を見つけるや否や何とも言えない速さで追いかけてきた。
(やっつけなきゃ)その一心で田中はその場に立ち止まり迫り来る黒い物体に包丁を向けた。
そして黒い物体の1つに包丁を刺すことができた。
黒い物体達は弾けて一瞬で消えてしまった。
疲労と安堵感と達成感と…色んな感情が入り混じりながらいつものように部屋へ戻り布団に包まった。
昨日までは(夢から覚めろ)って強く念じていたけど、今日は(もう大丈夫)そんな思いでいっぱいになりそのまま眠りについてしまった。
アラームが鳴り目が覚めた。久しぶりにゆっくり寝た感じがした。朝日は昇っていた。TVはつく。枕元に携帯もあった。リビングからは母が朝食の準備をしてる音が聞こえる。
いつも通りの雰囲気を感じたと同時に右手に違和感を覚えた。
固くて重くて嫌な感触だ。そしてすぐに気付いたのだ。あの時、黒い物体を刺した時の感触だということを。
大人になって今でもその感触は覚えている。
きっとあれは夢なんかではなく、パラレルワールド的な何かだったのかもしれない。そんな風に思う。
