「やりがい」を求めて転職したのに、また辞めたくなる理由
なぜ、やりがいを感じられないのか?
「この会社なら、やりがいのある仕事ができると思ったのに……」
入社前は魅力的に見えた会社のビジョン。しかし、実際に働き始めてみると、どこか違和感を覚える。最初は「自分の成長のため」「社会貢献のため」と納得していたはずが、次第に「これは本当に自分がやりたいことなのか?」という疑問が湧いてくる。
そして気づく。この「やりがい」は、会社が用意したものであって、自分の内側から湧き上がってきたものではない、と。
「やりがい」が離職を生む、というパラドックス
実は、「やりがい」を強調する組織ほど、従業員が辞めていくという皮肉な現象があります。
2024年、米国経営学会(AOM)の公式メディアが興味深い記事を発表しました。タイトルは「"Meaningful Work" Can Lead to Burnout and Leaving(意味のある仕事が、燃え尽きと離職につながる可能性)」。
この記事で紹介されたJournal of Applied Psychology誌の論文では、「仕事に意味を見出している従業員ほど、燃え尽き症候群に陥りやすく、結果的に離職率が高くなる」という衝撃的な研究結果が報告されています。
なぜ、こんなことが起こるのでしょうか?
「やりがい」には2種類ある — 自分アジェンダ®の視点から
自分アジェンダ®の視点で考えると、やりがいや動機には大きく2つのタイプがあります。
借り物の動機(組織が提示するやりがい)
会社のビジョンや理念
「社会貢献」「顧客満足」といった大義
上司が語る「成長のチャンス」
組織が期待する役割やミッション
内発的動機(自分の中から生まれるやりがい)
本当に自分が大切にしている価値観
自分の存在意義や人生の目的
心から「やりたい」と感じること
自分の成長実感やのびしろを感じられること
問題は、多くの組織が前者を「やりがい」として提示し、従業員がそれを「自分のやりがい」だと誤認してしまうことです。
AOMの記事が指摘するのは、まさにこの点です。組織が用意した「意味のある仕事」に過度に没入した結果、自分自身の内発的動機とのズレに気づかないまま、燃え尽きてしまう。そして最終的には、離職という選択に至るのです。
「借り物の動機」で働き続けた先にあるもの
最初は純粋に「この仕事、意味がある」と思えていました。でも次第に、こんな感覚に襲われます。
頑張っているのに、心が満たされない
成果を出しても、虚しさが残る
「自分は何のために働いているんだろう?」という問いが消えない
会社の期待には応えているはずなのに、成長実感がない
これは、努力が足りないからではありません。 働いている動機が、組織から「借りてきたもの」だからです。
論文が示すように、「意味のある仕事」に献身的に取り組むほど、自分自身の本当の価値観や存在意義との乖離が大きくなり、最終的には燃え尽きてしまうのです。
自分アジェンダ®で考える「本当のやりがい」
自分アジェンダ®では、個人の動機を4つの層に分けて考えます。
〈4つの層〉
行動層 – 日々の行動や習慣
判断層 – 意思決定の基準
感情層 – 感じていること、価値観
存在層 – 自分は何者か、何のために生きるのか
組織が提示する「やりがい」の多くは、行動層や判断層にとどまります。 「この業務をこなせば成長できる」「こう判断すれば評価される」
しかし、本当に持続する動機は、感情層や存在層から生まれます。 「自分は本当は何を大切にしているのか?」 「自分はどんな存在でありたいのか?」
この問いに向き合わないまま、組織の期待に応え続けても、本当の意味での成長実感は得られません。むしろ、組織が用意した「意味のある仕事」に過度に没入することで、自分自身の内発的動機とのズレが拡大し、燃え尽きるリスクが高まるのです。
あなたは「誰のやりがい」で働いていますか?
もし今、こんな感覚があるなら、一度立ち止まって考えてみてください。
今の仕事のやりがいは、会社が用意したものではないか?
上司や組織の期待に応えることが、自分の目的になっていないか?
本当に自分が大切にしている価値観は、何だろうか?
この仕事を通じて、自分はどんな存在になりたいのか?
「やりがい」を組織から与えられるものだと思っている限り、成長は組織の枠内に留まります。 でも、自分の内側にある本当の動機に気づいたとき、仕事との向き合い方は根本的に変わります。
さいごに
組織が「やりがい」を語ること自体が悪いわけではありません。 問題は、それを鵜呑みにして、自分自身の内発的動機と向き合うことを忘れてしまうことです。
AOMの記事が示すように、「意味のある仕事」に献身的に取り組むことは、必ずしも自分の幸福や成長につながるとは限りません。それが組織から「借りてきた意味」である限り、燃え尽きと離職のリスクは常につきまといます。
自分のキャリアは、組織のシナリオではなく、自分自身のアジェンダで進むべきです。
「やりがい」は、与えられるものではなく、自分の中から見つけ出すもの。 そのことに気づいたとき、働き方は変わり始めます。
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リーダーシップを難しく考えずに、いつもの行動がリーダーシップ、「だれもがリーダー」学習を提唱しています。わたしたちが長年かけて培ってきた知恵と知識を拡めたいと思っています。