「なぜ、この仕事をするのか」|上司がそこに関心を持ってくれた日のこと
もし上司が、あなたの「見えない動機」に気づいてくれたら——
あなたは今、こんなことを感じていませんか。
「仕事はちゃんとやっている。でも、なんか……噛み合っていない」
「上司に質問しても、返ってくるのは指示だけ。私が何を感じているかは関係ないみたいだ」
「評価はされている気がする。でも、認められている気がしない」
この記事は、そんなモヤモヤを抱えながら働いている人に向けて書いています。「もし上司が、あなたの『見えない動機』に関心を持ってくれていたら——」という視点で、職場がどう変わるかを一緒に考えてみたいと思います。
「なぜやるのか」を聞かれたことがありますか?
入社して数年。あなたは「何をするか」は毎日伝えてもらっています。でも「なぜするのか」を聞かれたことは、あったでしょうか。
「このプロジェクト、お願いね」「このフォーマットでまとめといて」「今月の目標はこれ」
仕事は回っています。でも、どこか空洞がある。
それは、あなたの内側にある動機——「なぜ自分はこの仕事をするのか」「この仕事は自分にとって何なのか」——が、一度も触れられていないからかもしれません。
人の意欲には「4つの層」がある
自分アジェンダ®というフレームワークには、こんな考え方があります。人の意欲は、表面から4つの層で成り立っている、というものです。
行動層:実際にやっていること
判断層:「やるべきだ」という規範や価値観
感情層:「やりたい・やりたくない」という感覚
存在層:最も深い、その人の信念・使命感
多くの職場では、上司が見ているのは「行動層」だけです。「やっているか、やっていないか」だけを評価する。
でも本当のことを言うと、人が長く・深く動けるかどうかは、いちばん深い「存在層」に何があるかによって決まります。存在層にあるのが「本物の動機」(内側から湧く信念・使命感)なのか、それとも「借り物の動機」(恐れ・義務感・他者への期待)なのかで、持続性が変わる。燃え尽きやすさが変わる。
「なぜか仕事が続かない気がする」「こんなに頑張っているのに、充実感がない」——そういう感覚の正体は、もしかすると「借り物の動機」で動いていることへの、存在層からのSOSかもしれません。
上司が「存在層」まで見てくれたら——
では、もし上司が存在層にまで関心を持ってくれたら、何が変わるのでしょうか。
たとえば、1on1でこんな問いを投げかけられたとします。
「どんな仕事をしているときが、一番自分らしいと思う?」
この問いは、単なるキャリア相談とは違います。「何ができるか」ではなく「何に動かされているか」を一緒に探ろうとしている問いです。
もしそう聞かれたなら——「うーん……そういえば、あのプロジェクトのとき、誰も頼まれていないのに自分から動いていたな」「あの仕事は数字的には小さかったけど、なぜかすごく充実していた」——そういう記憶が、存在層のヒントです。
上司がそこに関心を持ってくれるだけで、あなたは「見られている」ではなく「理解されている」と感じられる。その違いは、思いのほか大きい。
「なぜやらないのか」ではなく「何が邪魔しているのか」
状況対応リーダーシップ®(SL理論®)という考え方があります。このモデルでは、部下の状態を「能力」と「意欲」の組み合わせで見ます。そして、その状態に応じてリーダーシップスタイルを変える、というのが核心です。
S1(教示的):やり方を丁寧に教える
S2(説得的):やり方を教えながら、理由も伝え、モチベーションを引き出す
S3(参加的):本人の意見を聞きながら、一緒に考える
S4(委任的):基本的に任せる
今の多くの職場では、このスタイルが全員に対して固定されていることがほとんどです。でも、SL理論®の視点から見ると、部下の状態はタスクによって違います。あるタスクでは自信があって動けるけれど、別のタスクでは不安で止まってしまう。
上司がそれをちゃんと見ていてくれたら——「あなたは今、このタスクに対してどんな状態だと思う?」その一言があるだけで、「できないのは自分がダメだから」ではなく「このタスクには、まだ慣れていないんだ」と思えるようになります。自己否定が減る。それだけで、人は動きやすくなります。
自分アジェンダ® × SL理論® が組み合わさると、何が起きるか
自分アジェンダ®とSL理論®が組み合わさると、こういう対話が生まれます。
上司:「このプロジェクト、最近どう?行動は出てるけど、気持ちはどう?」
あなた:「正直、やるべきだとは思ってますが……なんかモヤっとしています」
上司:「そのモヤっとは、どのあたりから来てる気がする?仕事の内容?関わり方?それとも方向感?」
あなた:「……方向感、かもしれません。このプロジェクト、何のためにやってるのかがよく見えなくて」
上司:「なるほど。そこ、ちゃんと伝えてなかった。一緒に確認しようか」
この会話で起きていることは、単なる「励まし」ではありません。上司は、あなたの「行動層」だけでなく「判断層」「感情層」「存在層」を丁寧に見ている。そしてあなたのタスク別の準備状態に合わせて、スタイルを変えようとしている。これが「双方向のリーダーシップ」です。
部下側からできること——「発信」は甘えじゃない
一つ、大切なことをお伝えしたいと思います。SL理論®は、上司だけが使うモデルではありません。部下からも使えます。自分の準備状態を上司に伝えることは、「弱さの告白」ではなく、「効果的な協働の第一歩」です。
たとえば——
「このタスク、方向性はわかっているのですが、具体的な進め方がまだ不安です。一度確認させていただけますか?」
「この業務、自分でやってみたいと思っています。任せていただけると嬉しいです」
こういう発信が、上司のリーダーシップスタイルを変えるきっかけになります。あなたが「R2(意欲はあるが能力が不安な状態)」だと伝えれば、上司は「S2(説得的)」に切り替えられる。あなたが「R4(能力も意欲も高い状態)」だと示せば、上司は「S4(委任的)」で任せてくれる。
上司を責める前に、自分から発信してみる。そのアクションが、意外なほど職場を変えることがあります。
「3つの価値」で、自分を再発見する
自分アジェンダ®には、もうひとつ大切な考え方があります。「3つの価値」です。
個人的価値:あなた自身の人間的魅力(執念・誠実さ・粘り強さなど)
社会的価値:あなたを取り巻く関係性・チームの雰囲気・環境
事業的価値:目標・やりがい・ビジョンの明確さ
この3つがバランスよく統合されたとき、「等身大の安心感・達成感・充実感」が生まれます。今の自分を振り返ってみてください。3つのうち、どれかが極端に少なくなっていませんか?
「目標は達成している(事業的価値◎)。でも、人間関係がしんどい(社会的価値×)。そして自分らしさを出せていない(個人的価値×)」——この状態では、成果が出ていても充実感は生まれません。それどころか、燃え尽きに向かっていることが多い。
上司がこの「3つの価値」に関心を持ってくれていたら——「最近、チームの雰囲気はどう?」「あなたは今の仕事で、自分らしさを出せていると感じる?」そういう問いが、あなたの状態を可視化してくれます。
「なぜですか?」は、自発性の芽
最後に、一つだけ。あなたが上司に「なぜですか?」と聞いたとき、どんな反応が返ってきましたか?
「いいから、やって」「そういうもんだから」「前からそうなってるから」——もしそうだったとしたら……それは、あなたのせいではありません。
「なぜ?」と問う力は、自発性の芽です。存在層から湧き出る「本物の動機」を持っている人ほど、意味を知りたがります。目的を確認したがります。自分なりに納得したうえで動きたいと思います。それは弱さではなく、強さです。
もし上司がそれを理解してくれていたら——「なぜですか?という発言が出てきたとき、それは自発性の芽だ」と知っていてくれたら——あなたの「なぜ?」は、怒られる理由ではなく、対話のきっかけになるはずです。
「見てもらえている」感覚が、人を動かす
職場を変えるのは、制度でも給料でもないことがあります。「自分の動機を、ちゃんと見てもらえている」という感覚。それだけで、人はかなり動けるようになります。
自分アジェンダ®と状況対応リーダーシップ®(SL理論®)は、そのための「共通言語」です。上司と部下が、お互いの状態を見える化して、対話するための言葉。
あなたの「見えない動機」が、見える場所で働けますように。
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リーダーシップを難しく考えずに、いつもの行動がリーダーシップ、「だれもがリーダー」学習を提唱しています。わたしたちが長年かけて培ってきた知恵と知識を拡めたいと思っています。