「最低限しか働かない人」と「自ら進んで貢献する人」は、なぜ同じ職場で生まれるのか?
こんにちは。リーダーシップ研究アカデミーです。
最近、「静かな退職(Quiet Quitting)」という言葉を耳にしたことはありませんか?
これは、仕事を辞めるわけではないけれど、必要最低限のことしかやらない――そんな働き方を指す言葉です。
一方で、同じ職場には、頼まれてもいないのに率先して動く人もいます。これを組織市民行動(OCB: Organizational Citizenship Behavior)と呼びます。
困っている同僚を自発的に助ける
指示されていない業務改善を提案する
職場の雰囲気をよくするために気を配る
こうした「求められる以上の貢献」をする行動のことです。
なぜ、こんな違いが生まれるのでしょうか?
実は、この二つの行動は「コインの裏表」のような関係にあります。そして、その違いを生み出しているのは「動機の質」なのです。
「借り物の動機」と「本物の動機」
人が行動する理由には、大きく分けて二つの種類があります。
借り物の動機
「給料がもらえるから」
「上司に怒られたくないから」
「評価されたいから」
これらは、外側から与えられる理由で動いている状態です。報酬や評価という「ニンジン」がなければ、動かなくなってしまいます。
本物の動機
「この仕事に意味を感じているから」
「自分が成長できると思うから」
「誰かの役に立てることが嬉しいから」
こちらは、自分の内側から湧き上がる理由で動いている状態です。外からの報酬がなくても、自然と行動したくなります。
静かな退職は「借り物の動機」で動いている状態、組織市民行動(OCB)は「本物の動機」で動いている状態と言えます。
なぜ「頑張れ」では人は動かないのか
多くの職場で、上司が「もっと頑張ってほしい」と思っています。でも、掛け声だけでは人は動きません。
なぜなら、その人がどんな動機で動いているかによって、必要なアプローチが全く違うからです。
たとえば、初めての仕事に取り組んでいる新人に「自由にやっていいよ」と任せても、不安になるだけです。逆に、ベテランに細かく指示を出すと「信頼されていない」と感じてやる気を失います。
ここで役立つのが状況対応リーダーシップ®(SL理論®)という考え方です。
タスクごとに必要なサポートは変わる
状況対応リーダーシップ®・SL理論®の核心は、「人ではなく、タスクごとに判断する」という点です。
同じ人でも、
慣れている仕事なら → 任せる
初めての仕事なら → 丁寧に教える
というように、タスクによってリーダーシップのスタイルを変えるのです。
でも、これだけでは不十分です。なぜなら、表面的な行動は変えられても、動機の質までは変わらないからです。
「存在層」レベルの動機を引き出す
ここで登場するのが自分アジェンダ®という考え方です。
自分アジェンダ®では、人の動機には、4つの層があるととらえています。
行動層 「何をするか」
判断層 「どう判断するか」
感情層 「どう感じるか」
存在層 「自分はどんな存在でありたいか」
多くのマネジメントは、行動層(「ちゃんと報告して」)や判断層(「優先順位を考えて」)にしかアプローチしていません。
でも、本当に持続的なモチベーションが生まれるのは、存在層――「自分はどうありたいか」という一番深いレベルです。
「内包的な自分」という考え方
自分アジェンダ®の核心にあるのが、「内包的な自分」という概念です。
これは、
自分の利益だけでなく
他者や環境への貢献も
自分自身の一部として捉える
という考え方です。
「自己実現」と「社会貢献」を別々のものとして考えるのではなく、「だれかの役に立つこと」が「自分の成長」そのものになる――そんな状態を目指します。
Z世代の価値観が教えてくれること
最近の若い世代(Z世代)は、「社会的な意義」を重視すると言われます。
「自分のためだけに働きたくない」 「意味のある仕事がしたい」
これ、実は最も持続可能なモチベーション構造なのです。
なぜなら、自己実現と社会貢献が統合されているから。借り物の動機ではなく、本物の動機で動いている状態だからです。
実践:どうやって「本物の動機」を引き出すか
では、具体的にどうすればいいのでしょうか?
ステップ1:タスクごとのレディネスを見極める(SL理論®)
この人は、このタスクについてどれくらいできるか?
どれくらいやる気があるか?
必要なサポートは何か?
ステップ2:「借り物チェック」をする(自分アジェンダ®)
その人の動機は、外からの報酬目的か?
それとも、内側からの意味づけか?
存在層レベルでの動機に触れられているか?
ステップ3:対話を通じて「内包的な自分」を育てる
「この仕事は、誰のどんな役に立つと思う?」
「あなた自身は、どんな存在でありたい?」
「その目標と、今の仕事はどうつながる?」
こうした問いかけを通じて、借り物の動機を本物の動機に転換していくのです。
静かな退職もOCBも、構造は同じ
静かな退職と組織市民行動(OCB)は、対極的に見えて、実は同じ構造から生まれています。
その構造とは、動機の質です。
借り物の動機で動いていれば → 静かな退職
本物の動機で動いていれば → OCB(組織市民行動)
状況対応リーダーシップ®(SL理論®)で適切なサポートを提供しながら、自分アジェンダ®で存在層レベルの動機を引き出す。
この二つを組み合わせることで、持続可能で創造的な組織を作ることができます。
人材育成の本質は、「人を動かす」ことではなく、「その人自身が動きたくなる理由を一緒に見つける」ことなのだと思います。
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リーダーシップを難しく考えずに、いつもの行動がリーダーシップ、「だれもがリーダー」学習を提唱しています。わたしたちが長年かけて培ってきた知恵と知識を拡めたいと思っています。