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リーダー行動とフォロアーの変化―「もう一人の自分」が自分を育てるとき

―状況対応リーダーシップ®(SL理論®)で読み解く、現場の事例―

本記事は、状況対応リーダーシップ®(SL理論®)事例集「和太鼓」山崎雪子著(2002年、CLS双書)をもとに構成した事例解説です。


はじめに

状況対応リーダーシップ®(SL理論®)は、「上司が部下を導く」場面を想定して語られることが多い理論です。しかし今回ご紹介する事例は、少し毛色が違います。舞台は職場ではなく、趣味で始めた和太鼓の練習。しかも、主人公である小林さんを導く「リーダー」は、実は小林さん自身なのです。

この事例には、もう一人の登場人物が出てきます。便宜的に「コバさん」と呼ばれる人物です。太鼓の先生とは別に、節目節目で小林さんに問いかけ、励まし、時には指摘をする存在。ところが物語の終盤で明かされるのは、コバさんは実在の人物ではなく、小林さんが自分自身に向けて発していた言葉だった、という事実です。つまりこれは、状況対応リーダーシップ®(SL理論®)を自分自身のマネジメントに応用する「状況対応セルフ(S.L.セルフ)」を描いた事例なのです。

リーダーとフォロアーが同一人物であっても、状況対応リーダーシップ®(SL理論®)の基本的な考え方――課題を明確にし、レディネスに合わせたリーダー行動をとる――は変わりません。むしろ、自分が自分にどう働きかけているかを可視化することで、成長のプロセスがより鮮明に見えてきます。


事例の背景

小林さんは、友人に誘われて和太鼓のサークルに応募します。最初は断っていましたが、「身体を動かすから、健康に良いんじゃない?」というコバさんの一言で、「健康のためにトライしてみるか」という軽い気持ちで参加を決めます。「自分に合っていないと思えば、辞めれば良いし」という発言からもわかるように、この時点でのやる気は本物とは言えません。

コバさんが小林さんに期待していたこと――つまり小林さんのレディネスの対象となる課題は、「和太鼓が好きになって、国府太鼓の曲を演奏できるようになること」、当面は「『歩み』の曲がうまく打てるようになること」でした。この課題は、①譜面通りに打つ、②決められた姿勢(型)をとる、③リズムをとる、④基本のバチさばきをする、⑤テンポを合わせる、⑥譜面を見ないで打つ、⑦掛け声を入れる、という7つのサブ課題に分解されています。

課題を小さく分解することで、リーダー行動――ここではコバさんが小林さんに向ける指示的行動――が具体的になり、レディネスの診断もしやすくなる、という点がこの事例の重要な仕掛けです。

練習開始当初:R1のフォロアーへのS1スタイル

練習初日、小林さんは会場に集まった人の数に驚きます。コバさんの「まごまごしていると練習できないよ」という一言で少しやる気になったものの、すぐに練習を休んでしまいます。一方で、先生の指示通りに打ってみると簡単に打てたため、「なんだ簡単じゃない」と気が緩んでしまう場面もありました。

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