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「自分だけちょっとwinしている」を、win-winと呼ぶのはやめてほしい

正直に言うと、win-winという言葉を聞くと、嫌な気分になります。
伴走。自走。心理的安全性。エンゲージメント。パーパス。研修業界やビジネスの現場で流通するこの手の言葉に触れるたび、似たようなモヤモヤを感じている人は、案外多いのではないでしょうか。

win-winというのは、双方が納得できる関係を目指す、という響きの良い言葉です。でも実際に使われている場面を見ていると、たいてい「お互いのために」と言いながら、実は自分の取り分だけをそっと確保しようとしている。つまり、本当は「自分だけちょっとwinしている」だけなのに、win-winという言葉でそれを覆い隠しているように見えることが少なくないのです。

ネット上でも、win-winと自分から口にする人には気をつけたほうがいい、という声を見かけます。対等さを掲げる言葉の土台が、実は一方的な関係になっている、という指摘もありました。良い響きの言葉が、力の差を覆い隠す役目を果たしてしまうわけです。

伴走と自走にも、似た構造を感じます。伴走という言葉は、もともと視覚に障害のあるランナーの隣を並走する伴走者から来ていて、相手のペースに合わせ、方向を伝え、状況を説明する、とても誠実な関わり方を指していました。

それが行政の支援策をきっかけに企業支援やマネジメントの分野へ広がり、ここ数年で一気に一般的な言葉になりました。ただ広がるにつれて、中身が置き去りになっている場面も増えているようです。マーケティング業界を中心に「伴走支援」という看板を掲げるサービスが増えた一方、実態は既存のサービスの言い換えや、常駐して業務を代行しているだけのケースも少なくない、という指摘を見かけました。

さらに言えば、「伴走します」と言いながら、最終的なゴールは「自走してもらうこと」、つまり手を離すことに置かれている。支援するはずが、いつの間にか「あとは自分でやってください」への布石になっていることがあります。優しい言葉で始まって、最後は突き放しで終わる。これも、支援する側にとって都合のいい着地点でしかない、と感じてしまいます。

この手の言葉のもうひとつの厄介なところは、数年でびっくりするほど廃れることです。研修業界のトレンドワードは、入れ替わりが早いものが多く、数年前にあれほど連呼されていた言葉が、いつの間にかだれも口にしなくなっている、ということが繰り返されます。今夢中で使われている言葉も、いずれ同じ道をたどるはずです。中身のない言葉ほど、消費されるスピードが速いのだと思います。

心理的安全性やエンゲージメントも、無縁ではありません。本来はとても大事な概念です。ただ、それがスコア化され、ダッシュボードの数字として扱われるようになると、「安心して話せているかどうか」という一番大事な実感が置き去りになってしまうことがあります。コミュニケーションが取れているという表面的な状態だけを追いかけても意味がない、と指摘する記事もありました。数字は良くても、現場の実感が伴っていない。これも、言葉が先行して中身が追いつかない例のひとつです。

なぜこういうことが起きるのでしょうか。ひとつには、言葉が現象よりも先に広まるスピードの速さがあると思います。研修やコンサルティングの世界では、新しい言葉を打ち出すこと自体が価値になりやすい。SNSでも、耳あたりのいい言葉ほど拡散されやすい。その言葉を使うこと自体が「時代に合わせている」というサインになってしまうと、中身を問わずに言葉だけが独り歩きしていきます。

こういう言葉に振り回されないためにできることは、実はそれほど難しくないと思っています。良い響きの言葉に出会ったとき、一度立ち止まって「これはだれにとって良いことなのだろう」「自分だけちょっとwinしていないだろうか」と自分に聞いてみる。それだけで、かなり見え方が変わってきます。

これは、私が普段考えている自分アジェンダ®という枠組みにも通じる話です。自分アジェンダ®では、他人の評価や借り物の言葉に頼らず、自分の内側にある判断軸で物事を選び取る状態を、「内包的な自分」と呼んでいます。良い響きの言葉に無自覚に乗ってしまうのは、その軸が自分の外に置かれてしまっている状態とも言えます。逆に言えば、自分で考える習慣さえあれば、言葉の響きの良さに簡単には流されなくなるはずです。

伴走も、自走も、win-winも、言葉そのものが悪いわけではありません。ただ、その言葉を使う人が、何を目指してその言葉を選んでいるのか。そこに目を向ける習慣を持っておきたいと思います。

#自分アジェンダ #winwin #伴走 #自走 #バズワード #働き方 #自分らしさ

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