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気づいたら、隣の国が別速度でゲームを作っていた

“試行回数”で負ける時代

いまの中国・韓国から出てくる突出したゲームが、クオリティもそうだが成長レベルがものすごく高い。キャラクターの見せ方、UI、モーション、演出、音楽、グローバル展開、どれを見ても、以前のような不安感やとっつきにくさはほぼなくなった。(もちろん、外から見た日本製のゲームもものすごい!)

ただ、私が最近もっと怖いと思っているのは、そこではない。一番は、作る速度、見せる速度、試す速度、直す速度。このあたりが、いつの間にか別次元にになっている気がしている。

まさに、気づいたら、隣の国が別の速度でゲームを作っていたという話。いま怖いのは、単純なクオリティ差ではなく、試行回数の差。これをものすごく感じている。

中国は世界規模でテストを光速で行う

先日、中国の大手パブリッシャーの方と話をさせていただく機会があった。

そこで聞いて、かなり印象に残っていることがある。彼らは、とにかく試作品のテストスピードが速い。長くても3ヶ月で動くものを作り、複数案をテストして、ダメなら壊す。可能性があるものは、1年以内に形にすることを目指す。そういう速度感で動いているという。

しかも、ただ早く作って終わりではない。序盤の入り方、継続率、遊び続けたくなる導線、広告で見せた時の反応、ユーザーがどこで離れるか。そういう複数のポイントを見ながら、納得いかないものはやり直す。私が聞いた範囲では、開発速度だけでなく、判断する速度もかなり速い。

もちろん、すべての会社がそうだと言うつもりはない。私が聞いた範囲の話だし、大規模な資本と潤沢な開発リソースがなければ、同じことは簡単にはできない。

ただ、その話を聞いて、私はかなり腑に落ちた。

昨今の大陸ゲームが、リリースタイミングで全世界に向けて大規模広告を打ち、複数プラットフォームで一気に展開してくるのは、単にお金があるからだけではない。事前にテストを重ね、ある程度の勝ち筋を見込んでいるから、踏み込めるのだと思う。

日本のやり方(経験則)

逆に、うまくいくかどうかわからない。リリースしてから様子を見よう。反応が良ければ広告を打とう。そういう考え方では、もうかなり悠長なのかもしれない。

私自身、関わってきたプロジェクトを思い返すと、正直、そういう開発をたくさんしてきた。いつもカツカツで、ギリギリだった。余裕を見ていたつもりでも、やっぱり開発は遅れる。導入部分を丁寧に作り込む時間が足りない。レベルデザインの調整に手が回らない。初動で一番大事なところを、最後に慌てて整える。

今思うと、反省すべき開発手法ばかりだった気もする。

だからこそ、いまの中国発タイトルを見ていると、完成品だけではなく、その前段の試行回数を見なければいけないと思う。

これは会社だけの話ではない。個人制作、note、X、企画、仕事もほとんど同じだ。考えている時間が長すぎると、出す前に古くなる。構想だけが大きくなっていく。失敗したらどうしようと考える。ちゃんと整ってから出そうとする。もう少し資料を集めてからにしようとする。その間に、別の人は出している。出して、反応を見て、直している。

もちろん、雑に出せばいいという話ではない。

未完成のものを乱暴に出して、ユーザーや読者の信頼を失うのは違う。低品質でもいい、という話ではない。問題は低品質そのものではなく、無責任さだと思っている。

ただ、責任を持つことと、出すのが遅いことは同じではない。責任を持って、小さく出す。責任を持って、反応を見る。責任を持って、直す。これが必要になる。

備考:
今2025年6月ぐらいから、ByteDanceのTikTok Shopのプロジェクトに片足を突っ込んでいるんだけど、ByteDanceはとにかくテスト、調整、リリースまでが鬼の速さで展開され、しかも毎週各種トレンドレポートをオンラインセミナーで誰にでもシェアできる体制を整えている。
ゲームと異なる分野とは言え、とにかく全力でプロダクトやサービスを成功させるという熱量を全員から感じる。


高精度の運営型サービスを全世界展開できる力量

『NTE: Neverness to Everness』は、2026年4月29日に正式リリースされた。公式情報では、PC、Android、iOS、PlayStation 5、Macに対応し、クロスプラットフォーム対応のタイトルとして展開されている。

前にNTEの記事を書いた時にも感じたが、こういうタイトルを見ていると、もう「スマホゲームだから」「基本無料だから」「中国ゲームだから」といった雑な分類では語れなくなっている。

都市型オープンワールド。アニメ調。PC/スマホ/コンソール横断。グローバル前提。リリース前から映像を見せ、事前登録を集め、SNSで期待値を作り、ローンチ後もイベントや報酬で動きを作っていく。

これ自体は、いまの大型タイトルでは珍しい話ではない。

ただ、重要なのは、こうした動きが一部の例外ではなくなってきたことだと思う。

Sensor Towerの2025年日本ゲーム市場レポートを見ると、日本は2025年もモバイルIAP収益で110億ドル規模の市場であり、アジアでは中国iOS市場に次ぐ規模だとされている。一方で、ダウンロード数は6億2,800万程度にとどまり、成熟市場としての色が濃くなっている。

つまり、遊ばれていないわけではない。ダウンロードはある。しかし、収益環境は以前ほど楽ではない。

さらに同レポートでは、日本国内パブリッシャーは依然として強い一方で、非国内パブリッシャーの競争力も増しているとされている。4Xストラテジー系の『ラストウォー:サバイバル』や『ホワイトアウト・サバイバル』、RPG系の『崩壊:スターレイル』『原神』などが、日本の高課金ユーザーを獲得している例として挙げられている。

日本市場はまだ強い。だが、日本の会社だけの庭ではなくなっている。

そりゃ、日本のパブリッシャーが日本ユーザーだけを相手にして、単体プラットフォームでガチャのビジネスモデルゲームを作っても売り上げが上がらず、如実に運営するたびに数字が落ちるのは火を見るより明らかである。

国内ユーザーの感性を知っていることだけでは、もう十分ではない。海外の会社も、日本のユーザーに刺さる絵、テンポ、UI、ガチャ、イベント運営、SNSの見せ方を、かなりの精度で試しに来ている。

しかも海外の運営型ゲームは、リリース時がピークではなく、運営するたびに数字が増えているものがあるのも恐ろしい。これは一重に運営会社側の覚悟とコミットの現れであるとも思っている。

2025年の日本市場を見ても、速度の圧がある

2025年下半期の日本モバイルゲーム市場でも、この流れは続いている。

Sensor Towerの日本語レポートでは、2025年下半期の日本モバイルゲーム収益トップは『ラストウォー:サバイバル』だったとされている。ダウンロード数では『ブロックブラスト』が月平均80万以上でトップ、収益成長量では『SDガンダム ジージェネレーション エターナル』が目立った。

ここで重要なのは、日本市場が弱いという話ではない。むしろ日本のIPも、国内パブリッシャーも、依然として強い。

ただ、競争相手の種類が明らかに増えている。

国内IP、海外パブリッシャー、4Xストラテジー、カジュアルパズル、アニメ調RPG、PC/コンソール横断タイトル。日本のユーザーの可処分時間を取りに来る相手が、以前よりずっと多い。

ゲームを作る。リリースする。複数市場で見せる。広告で接触回数を増やす。イベントで動かす。アップデートで戻す。ユーザーが反応したところに、さらにリソースを入れる。

この一連の速度が、かなり速い。

かつての日本のゲーム会社は、ゲームの完成度で勝負していた。もちろん今もそうだ。だが、現在の競争は、完成度だけでなく、見せる速度と直す速度の勝負になっている。

ここで遅れると、完成度が高くても、見つけてもらう前に市場の話題が移ってしまう。

作品が増えすぎて、待ってくれる市場ではなくなった

今更話すことではないし、みんなもご存知の通り、これは中国ゲームだけの話ではない。Steamでは、2025年に1万9,000本以上の新作ゲームがリリースされたと報じられているし、2025年のリリース本数は2024年を上回り、過去最多を更新したとされている。

さらに、2025年リリース作品のうち、レビューが10件未満のものがかなり多いことも報じられている。つまり、作品は出ている。しかし、多くは見つけられていない。

もちろん、この数字には小規模な作品も大量に含まれる。すべてが商業的に大きく売れるタイトルではない。それでも、ユーザーから見れば、選択肢は毎日増えている。つまり、いまは「良いものを作れば、いつか見つけてもらえる」時代ではない。これもみんなすでにご存知の通り、

良いものを作ることは前提だ。だが、それだけでは足りない。

見せる。試す。反応を見る。直す。もう一度見せる。入口を変える。説明を変える。タイトルを変える。サムネを変える。ストアページを変える。初動で何が伝わっていないのかを見る。

こういう小さな試行を何回できるかが、かなり重要になっている。

ここで日本の開発現場は、どうしても重くなりやすい。

企画を通す。予算を取る。社内調整する。IPホルダーに確認する。法務を見る。宣伝と足並みを揃える。失敗しないように確認する。炎上しないように確認する。社内の誰かが不安に思わないように確認する。

もちろん、全部大事だ。大きな会社ほど、勝手に出すわけにはいかない。関係者が多いほど、確認事項も増える。そこを雑にすれば事故る。ただ、確認している間に、市場も、ユーザーの関心も、競合も動く。ここが、かなりしんどい。

日本は「失敗しないための開発」になりすぎたのかもしれない

日本のゲーム開発には、今でも強みがあると思っている。表現のこだわり、手触り、空気感、UIの細かさ、キャラクターへの愛着。日本の開発現場でしか出にくいものは確かにある。ただ、その強さが、逆に弱さになることもある。

最初から完成度を求めすぎる。失敗しない形に整えすぎる。社内で説明できる形にしすぎる。誰にも怒られない企画に寄せすぎる。

そうすると、出す前に時間がかかる。時間がかかると、試行回数が減る。試行回数が減ると、当たりを引く確率も減る。

これは、かなり怖い。

ゲーム開発は、最終的には不確実性との戦いだ。作る前から、完全に売れるかどうかはわからない。面白いと思って作っても、ユーザーに届かないことはある。逆に、現場では小さく見えていたものが、市場では大きく刺さることもある。

だから本来は、試す回数が必要になる。

だが、大きな会社ほど、試す前の説明コストが重くなる。失敗の責任が大きくなる。過去の成功体験が重くなる。すると、挑戦というより、減点されない企画が通りやすくなる。

その間に、別の場所では、試して、直して、また出している。ここに速度差が生まれる。

仕事が減っているのに、作るものは増えている

もうひとつ、いまのゲーム業界で気になる現象がある。仕事は減っているように見えるのに、作られるものは増えている。

GDCの2025年調査では、3,000人超のゲーム開発者のうち11%が過去12か月でレイオフされ、41%が何らかの形でレイオフの影響を受けたとされている。理由としては、組織再編、収益低下、市場変化などが挙げられている。

一方で、Steamの新作本数は増えている。AIや開発ツールの進化で、小さなチームや個人でも、形にできるものは増えている。

つまり、会社の仕事は減っているのに、作品は増えている。ここが今の時代のややこしさだとも思える。「ゲームを作れる人」は増える。だが、「ゲームで仕事を作れる人」は別の話になる。

作れるだけでは、見つけてもらえない。見つけてもらえても、選ばれない。選ばれても、継続しない。そこまで考えないといけない。

これは会社でも、個人でも同じだと思う。

これから強いのは、完成度だけでなく更新速度を持つ人

私は、これからのゲーム業界で強いのは、完成度の高いものを一発で出せる人だけではないと思っている。

むしろ、出した後に直せる人。反応を見て、何が伝わっていないかを理解できる人。ユーザーの言葉をそのまま鵜呑みにせず、裏にある不満や期待を読める人。次の見せ方に変換できる人。

そういう人の価値が上がる。

これは企画者でも、プロデューサーでも、マーケ担当でも、クリエイターでも同じだと思う。

作る速度だけではない。見る速度。直す速度。説明を変える速度。次の仮説を立てる速度。このあたりが、これからかなり重要になる。

日本のゲーム業界が怖がるべきなのは、中国ゲームのクオリティだけではない。

本当に怖いのは、試行回数で負けることだ。

失敗しないように作っている間に、相手は何度も失敗して、何度も直して、何度も見せているかもしれない。

そして気づいた時には、完成度ではなく、速度の差で置いていかれている。

まとめ

日本のゲーム業界には、まだ強みがある。細部を詰める力もある。キャラクターや世界観への愛もある。長く記憶に残る作品を作る力もある。そこは簡単に失われるものではない。

ただ、それだけで勝てる時代ではなくなっている。市場は速い。作品は増える。ユーザーの関心は移る。海外勢は、日本のユーザーを見ている。

だから、これから必要なのは、もっと大きく作ることだけではない。もっと早く見せること。もっと小さく試すこと。もっと早く直すこと。そして、出した後に学ぶこと。

ゲーム会社も、個人クリエイターも、noteを書く人も、たぶん同じだと思う。

気づいたら、隣の国だけが別の速度でゲームを作っていた。そう感じた時に、自分たちも同じ速度で巨大なものを作る必要はない。ただ、自分の速度を見直す必要はある。

考えている間に古くなるものが増えた時代に、出して、見て、直せる人が強くなる。私は、いまのゲーム業界を見ていて、かなりそう感じている。


そんな感じで、世界は驚きのスピードで動いている。引き続き、私も負けない熱量をクリエイティブにして世界に届けられるように努力します。


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今後も同じテーマを追いながら、自分の発信や作品、仕事の作り方を設計し直したい人は、メンバーシップのほうが得だと思います。

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参照ソース

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