インド旅日記
映画のはじまりは陸橋で
チョークティアに着くと、バス停までママが迎えに来てくれていた。
ママとは先述のカサールデヴィにて5年前のロックダウンの最中、仲良くなったインド人の親友である。
そのママ曰く、3年ぶり、ラムガラ以来の再会との事だった。
実際のところ後に判明したのだが、ラムガラで一緒に遊んでいたのは実は2021年の春頃。つまり4年と半年前で、
最後に会ったのはその1年後、2022年の秋、つまり3年前、自分がケーティカーンにいて、
彼がそこからシェアジープで30分のポクリという村で、
金持ちインド人の“田舎に土地を買って不動産投資に勤しみながら、なんかその土地で出来ないかなぁ”と言う提案に彼が絡んでいた時の事であった。なので3年ぶりというのは間違いではないが、何のことやら、どうにもこんがらがった再会となった。
今回チョークティアを旅先に選んだのも、なんせ彼に会うためだった。
ママの父親の実家がこのチョークティアにあり、現在、彼はそこを拠点にしている。
「ママ」という呼び名に違和感を覚え、おかしいな、誤字かな?と思った人もいるだろう。
そう、ママは男性で、自分より年上のおじさんインド人だ。
「ママ」はヒンディー語で“母方の叔父”を意味する。
つまり彼は友人たちから“叔父さん(母方)”と呼ばれている。ちなみに“祖母”は“ダディ”と呼ばれる。
バス停の近くには、ママと並んで二人のインド人が立っていた。
ピケとゴル。ニックネームである。
彼らはママの古くからの友人で、デリー在住。映画制作の仕事をしている。
今回は自主制作映画のロケ地として、このチョークティア周辺で撮影を行っていた。
つまり自分は、知らぬ間に映画撮影隊の一員として合流することになった。
ママたちはすでに数日前から計画していたらしいが、自分には一切伝えていなかった。
インドではよくあることだ。
再会の挨拶もそこそこに、バス停から徒歩15分ほど、
田んぼ道を抜けた先にある古びた陸橋へ向かう。
時刻はちょうど、夕暮れから夜へ移るマジックアワー。
彼らは通行人のいない瞬間を狙い、iPhone16で撮影を開始する。
カメラを構える位置を何度も変え、角度を確かめ、光の残り具合を読んでいる。
時折、接写のために専用のミクロレンズも取り出した。
風が止むたびに、iPhoneのレンズが光を捉える。
やがて陽は完全に落ち、陸橋は闇に包まれた。
マジックアワーでの撮影は、強制的に幕を閉じた。
再会の記念と、新しい出会いを祝って、
その夜はインド産のダークラム〈オールドモンク〉を分け合った。
久しぶりの再会に浮かれながらも、移動の疲れがどっと押し寄せ、
夕食を終えると、自分はほとんど無言のまま床に就いた。
翌朝、目を覚ますと、外はもう撮影の準備で騒がしかった。
---
