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インド旅日記

道端バス停と翌朝チャイ屋

ハルドワーニー行きのバスが停まった。

降ろされたのは停留所でも何でもない、ただの道端だった。インドの長距離移動では、これも平常運転だ。スマホの地図で現在地を確認しつつ、友人宅までの道を探す。


インド人の親友(ここではRとする)に連絡を入れると、「今、家にいる。5分で着くから待ってろ」と返事が返ってきた。なるほど、近いらしい。安心して待っていると、颯爽と現れたのは車ではなく原付きバイクだった。


20kgのスーツケースを後部座席に載せ、その上に自分も飛び乗る。タイヤはみるみる凹み、車体はふらつく。とはいえ不安の大半はRの運転ではなく、周囲の交通事情にある。車もトラックもリキシャも、車線など気にせず縦横無尽に入り乱れる。まるで全員が「俺たちが主役だ」と言わんばかりの勢い。7時間のバス移動より、この5分の原付き移動のほうが、まさに生きた心地がした。


ようやく辿り着いた友人宅。玄関を開けると、ロットワイラーが飛び出してきた。最後に会ったのは8ヶ月前だが、完全に自分のことを覚えていた。しっぽを千切れんばかりに振りながら、まっすぐこちらへ突っ込んでくる。

牙も爪も隠しつつ、全身で「覚えてたぞ!」と伝えてくるその勢いに、思わず笑ってしまう。動物の記憶力に感心しつつ、旅の疲れが一気にほどけた。


お土産に持参した日本酒のミニボトル6本セットをRの嫁さんも一緒に味見。味よりも先に「度数が意外と軽いね」と盛り上がる。異国の家で、笑い声と驚きがゆっくり混ざっていく時間だった。





翌朝は、久しぶりに「よく寝た」と言える朝だった。

明け方5時半、辺りはまだ暗く、人の気配もない。旅の興奮が抜けきらず、妙に早起きしてしまう。歯を磨き、一服。空気は少し湿っていて、肌にまとわりつくような温さ。窓の外では鳥が鳴き始めていた。


7時前になり、外に出てみるとようやく町の音が動き出していた。路肩にあるチャイ屋で再度一服。チャイ1杯10ルピーを払って店を出ようとした瞬間、店主が「5ルピーモアだ」と言う。デリーでは陶器で出されたチャイに20ルピー支払わされたこともあったが、田舎に来て5ルピー値上がる理由が見つからない。

小銭がないと伝えると「あっさり引き下がる」。強気の値段交渉か、サービス精神かは分からない。少し多めに注がれていた気もするし、単なる気まぐれかもしれない。インドでは、こういう「よく分からないけど面白い」が一番多い。


朝の光に包まれ、家と街が目覚める。犬もクラクションもチャイの香りも、全部が「ここにいる自分」を実感させる。忘れられない、旅の朝だった。


それからは、なるべく友人R宅でチャイも頂くようになった。ティータイムは1日に2度、食事は軽食も含め4度。胃も脳も休む暇がない。日本では1日に2度の食事で多めに食べ、16時間断食に挑戦していたのだが、ここではその理想が秒で崩壊した。こういう時でも頭をバグらせてくるのはインドだ。




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