一日一頁:鹿島茂ほか『この1冊、ここまで読むか! 超深堀り読書のススメ』祥伝社、令和3年。
思想家内田樹さんの出番では、ジャーナリスト・マルクスとしての最高傑作『ルイ・ポナパルトの「ブリュメール18日』が分析テクストとして取り上げられ、「民主的な手順を踏んで達成した独裁制」の現代的意義が深堀りされげいくが、ポピュリズムが第二帝政を生み出したことには、いま歴史から何を学ぶかが問われている。
冒頭の一節(岩波文庫)は「世界史的な大人物や大事件は二度あらわれる。一度目は悲劇として、二度目は茶番として」とあってしまっては、まあ、ならないわな。
鹿島 あとは女好きで宴会好きだったのもナポレオン三世の評判が悪い一因ですね。でも最終的に歴史家が天科にかけると、意外と良い皇帝だったかもしれないという話になる。ことほどさように独裁者の評価というのは難しい。台湾の蔣経国もそうでしょ。お父さんの蔣介石と同じ怖い独裁者かと思ったら、最後は自分で民主化への道を開いて、李登輝を後継の総統に指名する。
内田 世の中はなかなか一筋縄ではいかないものですね。
鹿島 独裁国家はその独裁者のキャラクターによる部分が非常に多い。ほとんどの独裁者はとんでもなく邪悪な人間か、夜野自犬な大馬鹿なんですけど、ときには、評価されてしかるべき聡明な独裁者も現れる。これが歴史の面白いところですね。
内田 いや本当に、ナポレオン三世がけっこう良いリーダーで、第二帝政は意外と成功した統治形態だったというお話は目からウロコでした。
鹿島 民主制から生まれた最初の独裁国家という意味で、第二帝政の分析は現代にも非常に大きな意味を持ちます。その民主制に孕まれる危機的構造の分析を最初にやったのがマルクスなんですけれども、さすがのマルクスもナポレオン三世の変人ぶりには理解が及ばなかったということなんじゃないでしょうか。
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氏家法雄/独立研究者(組織神学/宗教学)。最近、地域再生の仕事にデビューしました。