三賢者と「ぼくは、」─高騰するコメと腐敗する制度のはざまで
ぼくは、コンビニのおにぎりの棚をじっと見つめていた。
「ツナマヨ、200円か……」
妻は最近米の値段を気にして、お弁当をパンに切り替えている。
三姉妹が「今日パン? また?」と不満そうに言うたび、胸の奥がズシンと重くなる。
スーパーでは「新潟産コシヒカリ 5kg 4,378円」
高い。
けど、ないと困る。
「でも、なぜこんなに?」と訊ける相手もいない。
ある夜、冷めたご飯をひと口噛んだ瞬間、ぼくの目の前に3人の“異邦人”が現れた。
一人目は、雷のような笑顔とともに現れた。
「米に怒ってる君、いいねえ。“怒り”は思考の発電機だ。」
次に現れたのは深い皺に寡黙な誠実を宿す男。
「制度が人を縛るとき、声をあげねばならない。」
最後に厚い資料を抱えた男が低く語る。
「合理的に見える制度ほど、不合理な支配を隠す。」
フランクリン:
「市場が壊れてる。人と人がつながる自由が“制度”によって妨げられている。」
農協を通じた流通、補助金による温存。君たちの仕組みは“守る”よりも“縛る”になってる。
リンカーン:
「君の国の農政は、“沈黙する大多数”に不誠実だ。」
小規模農家は見捨てられ、消費者の声は届かない。
それはもはや民主主義とは呼べない。
ウェーバー:
「形式だけが残り、中身を問わなくなった制度は“正義の空洞”だ。」
生産調整、優遇支援、流通規制。
全てが“かつて合理的だった”だけの化石に過ぎない。
「でも…」
ぼくは、声をしぼり出す。
「急に自由化したら地域の農家は壊れるかもしれない。
農協がなくなれば、インフラだって…」
「結局、声を上げたところで僕たちの生活は変わらない。
だって、ぼくらは何も持っていないただの“買う側”だ。」
そのとき、フランクリンがにっこり笑った。
「君、“買う側”こそが世界を変えるんだよ。」
アメリカの開拓時代、誰も道を知らなかった。
でも、“この先に自由がある”と信じて進んだ。
君が今日“どこで、誰から、何を買うか”を選ぶことで制度は微かに揺れる。
ぼくはスマホを開き、「米 直販」と検索した。
すぐに、小さな農家のページが出てきた。
送料込みで少し高い。でも、農家の名前と顔が載っている。
注文ボタンを押す。
それは、沈黙の制度に風穴をあける音だった。
フランクリンは最後に空を見上げてこう言った。
「空を見て“空っぽ”と嘆くか、“空いている”と笑うか。
君は今日“地図なき未来”に一歩目を刻んだんだ。」
「だから君も、子どもたちに言ってやるといい。
“道はない。でも、いまここに作った”ってね。」
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