「とおくへ とどくもの」
ある日、いっぴきの小さなカメといっぴきのキツネが出会いました。
キツネはすばやく走り、いちばん星の下まで ひとっ飛び。
でもカメたちはのろのろ歩き、まだ出発したばかり。
キツネは言いました。
「そんなにおそいと、どこにもたどりつけないよ」
「そんなにおそいと、ボクはもう 未来にいるんだから」
でもカメは何も言わずに、
こつこつ、こつこつ、
小さな足あとを土にのこしていきました。
ある日、風がふき、嵐がきて、
キツネの足あとも、星も、どこかへきえてしまいます。
でもカメたちは、まだまだ歩いていました。
それはまるで、しずかに根をはる木のように。
やがてカメのあとには、草が生え、
花が咲き、道ができ、
こどもたちがその上を 歩きはじめます。
そして、だれかが こうささやいたのです。
「やんちゃは速いかもしれない。おとなしいは遅いかもしれない。
でも、速さは とおくへとどかないんだね。」
そのとき、カメははじめて立ち止まり、
ちいさく微笑んで、また一歩ふみ出しました。
すぐに届くものが、
すっと消えてしまうこともある。
遅くても、
そこに花が咲く道ならば──
いつか誰かと、きっと出会えるよ。
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