三賢者と「ぼくは、紙飛行機を遠くへ飛ばしたい」
ぼくの折り紙飛行機はまた落ちた。
斜めに、それもすぐ。
「なにがいけないんだろう。たった3メートルしか飛ばない。」
見上げれば空は抜けるように青いのに、
紙飛行機だけが地面ばかりを見ている。
そこへ、一人の男が声をかけてきた。
「3メートル? 悪くはないが、まだ“ゲームの入り口”だ。」
そう言って現れたのは、
花柄のネクタイ、真っ直ぐな目をした男。
背後には、灰色の男(オッペンハイマー)と、静かに微笑む老学者(オイラー)が座っていた。
彼らは何も言わない。ただ、見守っている。
フォン・ノイマン:「さあ、飛ばすというのは“ただの投げ”ではない。
これは戦略だ。風と重力と紙との冷静で熱い対話なんだ。」
「でも風なんて見えないし、どうすれば遠くに飛ぶのかわかんないよ」
「いい質問だ。
風は“見えない”が“感じられる”。
それをただしく感じるためにまず“計る”ことだ。」
彼は手のひらにメモ帳を出して、書きはじめた。

「君が投げるときの角度と速さ、そして空気の抵抗R。
すべては“関数”だ。そしてすべて君の選択にかかっている」
「…でも、紙がしわしわなんだ。
もう何回も折り直して、ぐちゃぐちゃで」
フォン・ノイマン:
「それは素晴らしい。
改良とは常に“失敗の上に築かれる”からね。
君の飛行機はもう初期設計モデルVer.7.3だ。」
「失敗の回数は計算機で言えば“演算量”と呼ばれる。
多いほど賢くなる。君も飛行機も。」
フォン・ノイマン:
「さあ、改良を終えたならあとはシミュレーションから現実へだ。」
ぼく:
「いけーっ!」
飛んだ。
紙の飛行機は、風に乗って、くるりと旋回しながら──
フォン・ノイマン:
「それが技術と意志の交差点だ。
風は読めない。だが“風を読む自分”は育てられる」
「これが“知性”というやつだ。使いこなせば紙で空を切り裂ける。」
背後のオッペンハイマーがうっすらと目を閉じ、
オイラーが小さく拍手を送っていた。
「さて、次は“曲芸飛行機”を作ってみるかい?」
ぼくは、一枚の紙を新しく取り出した。
誰の設計図も使わずに自分の折り方で、
空を目指す紙をつくりはじめる。
「遠くに飛ばすためじゃない。
ぼくは、自分の風を見つけたい。」
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