三賢者と「ぼくは、」ースケベと理性と、ついでに少しの愛
ぼくは、夜になると空想してしまう。
人にはとても言えないような、そんな「スケベなこと」を。
手を合わせても、煩悩は消えない。
シャワーを浴びても、破廉恥な想いは流れない。
こんなぼくはおかしいのだろうか――
それともただの人間なのだろうか。
そんなある晩窓から変な三人が飛び込んできた。
いや、正確には窓の隙間から哲学が流れ込んできたんだ。
「恥ずかしがるな。
君の中の舞台はまだ始まったばかりだ。」
最初に現れたのはウィリアム・シェイクスピア。
彼は仮面をつけ、胸に羽根ペンを挿している。
「スケベとは欲望の独白だよ。
だが、観客のいない舞台ほど哀れなものはない。」
彼は笑う。
まるでぼくの心の小劇場を見透かしているように。
「嗚呼、私も若いころはな……」
次に椅子ごと現れたのはジャン=ジャック・ルソー。
膝の上に分厚い『告白』を乗せている。
「私は鞭で叩かれる空想に耽った。
あれはただの趣味だ。
羞恥は自然から離れた証拠だ。
破廉恥? それは文明が決めた不自然さのことだよ。」
ルソーの顔はどこかうれしそうだった。
変態の顔ではなく、真剣な顔だ。
「統御されぬ情念は制度の敵である。」
最後に厳めしい声で現れたのはマックス・ヴェーバー。
ネクタイの結び目まで神経質である。
「煩悩は制御の対象だ。
感情は管理されねば社会の歯車を狂わせる。
だが、否定することと整えることは違う。
君はまだ自分の“欲望の官僚制度”を持っていないのだ。」
ぼくは目をそらす。
恥ずかしさよりも、見透かされている感覚に。
「でも……」ぼくは口を開いた。
「もし、この空想が“誰かを傷つけるもの”だとしたら?
それでも“人間らしさ”って言えるんですか?
“欲望に向き合う”って、ただの言い訳じゃないですか?」
三人は黙る。
だがその沈黙は拒絶ではなく、ぼくに“問いを返す時間”だった。
ふと、ぼくはひとつの言葉にたどり着いた。
「空想が止まらないのは、
本当は“何かを知りたい”からかもしれない。」
恥ではなく、知。
抑えたいのではなく、向き合いたい。
ぼくは自分の中の「欲望の取扱説明書」を書きはじめる決意をした。
ぼくにルソーがつぶやく。
「わたしは善くなろうと願った。
だが、その願いすらも、わたしの肉体とともに震えていた。
おのれの弱さを知ることが、自由のはじまりなのだよ。」
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