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三賢者と「ぼくは、」ーモテない

鏡に映る“ぼく”は今日も敗北感でいっぱいだった。

服も整えたし、髪もセットした。
気の利いたセリフも、勇気も、それなりにあった。

なのに、あの子は隣の“イケメン”を見て笑っていた。

――やっぱり、顔か。

恋は顔面偏差値で決まるんだ。
誰かに選ばれるには、まず見た目で落第しちゃダメなんだ。
そんな声が、頭の中でずっとループしてる。


バス停でぼんやりガラスに映る自分を見ていると、
その背後に6つの人影が浮かび上がった。

それぞれ、どこか懐かしくて、変わっていて――
でも、なぜか確信めいた顔をしていた。

彼らはぼくに語りかけた。


シモーヌ・ド・ボーヴォワール
「あなた、“誰かに選ばれること”ばかり気にしているわね。
それじゃ、いつまでも“待つだけの人”になってしまうわよ」

フリーダ・カーロ
「事故で顔に傷を負った。でもそれは、わたしにとって"愛のキャンバス"になったわ」

与謝野晶子
「恋はね、“燃えるような情熱”がなければ始まらないの。
顔なんかより、あなたの心は今熱く燃えてる?」


ソクラテス
「私はアテナイ一の不細工だった。
だが問うことによって、人を魅了した。
魂の美を育てるのが、本当の愛の始まりだ」

モリエール
「私は笑われる道化だ。
だけどね、笑わせることで人の心をつかむことができるんだ」

チャールズ・ダーウィン
「愛も美も、進化のひとつの表現さ。
でも――真理を追う情熱こそ、人間を最も美しくするのだよ」


「たしかに、言ってることはわかる。
でも現実にはやっぱり顔がイケてるやつがモテてるじゃないか。
内面だの魂だの言ったって、
一瞬で目に入るのは“顔”なんだよ。」

ぼくは反論する。悔しいからじゃない。
ほんとうに、現実がそう見えるからだ。

賢者たちはそんな“ぼく”の葛藤を見届けて――
静かに、円になって議論を始めた。


シモーヌ vs モリエール
「演じることでしか愛されないなら、それは幻よ」
「幻でも、舞台に立つ者にしか見えない景色がある」

フリーダ vs ソクラテス
「痛みを見せる勇気が、愛の始まり」
「痛みの意味を問うことが、愛を深める」

📚 晶子 vs ダーウィン
「恋は、炎。燃やすのは理屈じゃない」
「燃焼のプロセスにも、進化の理があるんだよ」

・・・・・・・・。
6人の言葉が交錯する。
答えは出ない。
だけど、問いの重みだけがぼくの胸に残った。


その夜、鏡を見つめ直してこう呟いた。

「イケメンにはなれないけど、
“ぼく”のままでだれかを本気で想えたらいいのかな」

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