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三賢者と「ぼくは、天皇がどうして“天皇”になったのかを知りたい」

ぼくは、テレビで「天皇陛下の即位の儀式」を見たとき、
なんだかよくわからないけどすごく「特別な人」なんだなと思った。
でも同時にこうも思ったんだ。

「なんで天皇だけ“なる”って決まってるの?
どうしてその人なの?
そもそも天皇っていつからいるの? 王様とは違うの?」

そんな折、ぼくの瞼の中に三人の“時空の賢者”がふわっと現れた。


荻生徂徠(江戸時代の学者)

「まずは歴史のはじまりから順に見ていこう。
天皇とは、“物語”のなかで生まれた役割じゃよ」

レジス・ドブレ(フランスの思想家)

「そしてその“物語”をみんなが信じ続けるには、“伝え方”がとても大事なんだ。祭りや、名前、道具がカギになる」

アーネスト・サトウ(イギリスの外交官)

「ぼくは、幕末から明治にかけて日本を見てきたよ。
“天皇”の存在をよそからの目で教えてあげよう」


1. 神話の時代(はじまりの物語)

紀元前660年ごろ(神武天皇)※ただしこれは神話
徂徠:
「最初の天皇は“神武天皇”。
でもこれは“実際の人”というより“日本の物語”の主人公なんじゃ。
この物語の中で天皇は“天(あま)つ神”の子孫で、国をおさめる人になったんじゃよ」

ポイント:
「天皇」は、神さまの血を引いた“特別なつなぎ役”として物語がつくられた。


2. 奈良・平安時代(本当の天皇たちの時代)

700年~1200年ごろ
ドブレ:
「このころは“都”ができて、天皇が実際に政治をしていた時代だよ。
“律令(りつりょう)”という法律もできて、“天皇のもとでみんなが働く”って形だったんだ」

ポイント:
天皇は“政治のトップ”。でもだんだん貴族(藤原氏)が力を持ちはじめる。


3. 武士の時代(名ばかりの存在に)

1200年~1867年(鎌倉~江戸時代)
サトウ:
「武士たちが力を持つと天皇は政治からはなれる。
でも、名前や儀式はずっと残ったんだ」

徂徠:
「江戸時代には将軍が政治をするが、天皇が“国の正しさ”の象徴として残っていたんじゃ」

ポイント:
天皇は“実際の力”は持たなくても、“伝統の印”として大事にされた。


4. 明治維新(再び政治の中心へ)

1868年~1945年
サトウ:
「明治時代、日本は“近代国家”を目指して“天皇中心の国づくり”にしたんだ。
“天皇が国のトップ”とすることで西洋の国々と並ぼうとしたんだね」

ドブレ:
「ここで“天皇=神の子孫”というイメージが強められて、“国の象徴”として教育された」

ポイント:
“神聖なリーダー”として国民に知られるようになった。


5. 戦争と敗戦(変わる天皇の立場)

1945年(昭和20年)
サトウ:
「戦争に負けて、日本はアメリカと新しい憲法を作った。
そこで天皇は“政治をしない存在”になったんだ」

徂徠:
「でも“象徴”としては残された。
日本人にとって“心のよりどころ”のような役割じゃな」

ポイント:
“天皇=国民の象徴”へ変わった(日本国憲法 第1条)


6. 現代(平成・令和の天皇)

1989年~現在
ドブレ:
「今の天皇は“祈り”や“訪問”などで人と人をつなぐ役割をしている。
政治はしないけど、災害のときに人々に寄り添うような“象徴の仕事”をしているんだ」

ポイント:
目立たないけれど、国民の“心”をつなぐ存在として続いている。


ぼくは、少しだけわかった気がする。
でもやっぱり思う。

「それって“生まれた家”で決まっちゃうことなの?
誰も“なりたい”って言ってないのに、“天皇になる”ってどういう気持ちなんだろう?」


サトウは少し遠くを見ながら、
まるで京都の朝の霧のような静けさでゆっくりと話しはじめた。

「ぼくはね日本に来たとき、最初は正直こう思ったんだよ。
“天皇って何をする人なんだ?”
“なぜこんなに大事にされているんだ?”ってね。
でも、年月が経つにつれて気づいたんだ。
天皇とは国の力を持つ人ではなく、国の記憶を受け継ぐ人なんだと」

ぼくは、黙って聞いていた。

「イギリスにおいて王は統治する。
でも日本の天皇は統治せず、象(かたど)るんだ。
それはまるで風が吹いたあとに残る、砂の模様のようなもの。
その存在は“形”ではなく、“ここに何かがずっとあった”と人びとに知らせる。
天皇という存在は国の心の“場所”なんだよ。
“自分たちはどこから来たのか。
なぜここにいるのか。
” それを語るために、だれかが変わらずそこにいることが必要だったんだと思う」


ぼくは、静かにうなずいた。
「なるほど」とはまだ言えない。
でも、こう思った。

「変わらないってほんとうはむずかしいんだ。
誰もが変わる世の中で変わらずにいてくれる人がいるって、
それはもしかしたらとても勇気のいる役目かもしれない」

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