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【273】本の話「小公女」2025.2.15

1「小公女: A LITTLE PRINCESS」福音館古典童話シリーズ41 高楼方子 訳

 先日、図書館に行ったときに、ふと児童書のコーナーを見て来たら、「小公女」が並んでいて、完訳という言葉が気になったので手に取ると、ハードカバーで厚さ3cm400頁のずっしりとした重さが心地よい立派な装丁の本なのでした。

 僕は「小公女」を小学校低学年の頃に読み、同じバーネットさんの作の「小公子」よりもこちらの方が面白いと思ったことを覚えています。
 そのストーリーもすごく印象深く記憶していましたが、多分その時読んだものは子供向けの抄訳だったと思うのです。
 それで完訳版を改めて読んでみたいなと思い、借りてきたのでした。

 けれど他にも読む本があったので、しばらく放りっぱなしにしていたのですが、昨夜12時頃、もう寝なきゃと思って布団に入った時、ふと傍らに置いてあったその本を手に取ったのが運の尽きで、読み始めたら、もう吸い込まれたように入り込んでしまって止められなくなり、セーラの変転する運命を、先へ先へと、3時頃までかかって最後まで一気読みしてしまったのでした。
 ネタバレを防ぐためストーリーについては語りませんが、高楼方子さんの翻訳も素晴らしくて、記憶していた以上に面白い本でした。

 僕は見ていませんが、TVアニメで知っている方も多いと思いますが、それで終わらずに、やはり原作は読む価値があると思います。 

2 「小学生全集」の話

 私が「小公女」を最初に読んだのは小学校低学年の頃、「小学生全集」の中ででした。

 この「小学生全集」というのは、昭和初期の戦前に小説家、劇作家、ジャーナリスト、実業家でもあって、文藝春秋社を興し、芥川賞、直木賞、菊池寛賞の創設にも携わった菊池寛が、芥川龍之介の助けを得ながら編集したもので、
「自分は文学者であるから、此の全集の中に、世界の少年少女文学の傑作は悉く集めることにした。『クオレ』『少公子』『ジャングル・ブック』『家なき子』『ピイタア・パン』などは、面白いこと無類で、これをよむとよまないで、子供の性格や情操に差違が生じはしないかと思はれるほど、強い感銘を与へるものだと思ふ。『アレビアン・ナイツ』『イソップ』「アンデルセン』『ロビンソン・クルーソー』はいづれも童話の聖書であるから、これをのぞくことは出来ない。」(昭和2年5月 菊地寛)
 というように厳選された世界の名作少年少女文学の他に科学読み物なども加えて、初級用32冊、上級用48冊、合計80巻にも登る大全集としたもので、それを、菊判三百頁(ページ)で、三十五銭という『破天荒の廉価』で売り出したのでした。昭和2年の35銭というのは今のお金で230円程度のようですから確かに安い。
 その中には、上に掲げたものの他にも『小公子』と並んで『小公女』、『家なき子』と並んで『家なき娘』があり、『フランダースの犬』『アルセーヌ・ルパン:奇巌城等』『青い鳥』『ギリシャ神話』『源平盛衰記』『太閤記』等々の名作が含まれていました。

 僕が育った家には、明治、大正、戦前、戦後の昭和の本が本棚に溢れてそこら中に自由に積み上げられており、この小学生全集も8割くらいはそろって並んでいました。
 僕は、この小学生全集を手当たり次第に読み耽って、そうした文学や科学や歴史などに親しむことができ、それは今思っても幸せな体験でした。

 外国文学はほとんどが菊池寛自身の翻訳で、いずれも完訳ではなく抄訳だったと思いますが、どれもうまくまとめてあって、戦前の本は皆そうでしたが、漢字にはルビが振ってあるので、子供でも楽しく読むことができました。

 こうした外国の少年少女向け文学を大々的に紹介するというのは日本初の画期的な試みで、その果たした役割は大きなものがあったようです。

小学生全集の中の1冊『小公女』

 小学生全集の『小公女」は、そうです、確かにこんな表紙でした。懐かしいです。
 この菊池寛訳の『小公女』は青空文庫で読むことができます。

フランセス・ホッヂソン・バァネット Frances Hodgeson Burnett 菊池寛訳 小公女 A LITTLE PRINCESS

 少し読んでみましたが、福音館版と比較しても、しっかりと訳されているのに驚きました。けれど流石に時代に合わせた古めかしい表現になっているところも多く、今のひとが読むならば、やはり新しい翻訳の方が良いですね。

 小公女、子供を本好きにさせる本だと思います、お薦めです。

 

 

 


 

 


 

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