「一月万冊」清水有高との3年間半 私が見た脱法行為 女性スタッフの自殺 週刊誌の取材に応えられず号泣 カンパ・寄付金の私物化 金銭処理の秘匿 契約書に印鑑・筆跡を偽造
YouTube番組「一月万冊」主催者の清水有高が「出版事業を興す」「烏賀陽著『メルトダウンまでの50年』を刊行する」と同番組中で公言し、多額のカンパや寄付金を集めながら、3年以上刊行しないまま放棄した事実について、私(烏賀陽弘道)は、東京地裁に民事訴訟を起こしました。
訴訟は審理を重ね、いよいよ大詰めである原告・被告の法廷での尋問が2025年9月10日午後2時、東京地裁403号法廷で行われることになりました。清水は出廷に抵抗していたのですが、裁判所が証人として清水が必要であることを認め、出廷を命じる形になりました。「一月万冊」をはじめ、公の場から長らく清水が姿を消していることから、社会的な注目が集まると思われます。この尋問で裁判は結審し、判決を待つ予定です。
この尋問を前に、原告本人である私の「原告本人陳述書」を東京地裁に同年6月25日に提出しました。これを書いているうちに、この陳述書が私が清水有高と接触のあった3年間に何があったのか、経過をまとめた文章になっていることに気づきました。「一体何があったのか、さっぱりわらかない」という方も多いと思いますので、経緯の説明のため、下に「原告本人陳述書」を公開します。
公平を期するために申し上げますが、これは民事裁判での片方の当事者である「原告」烏賀陽の見た、烏賀陽による認識と主張の記述ですので、被告である清水にはそちら側の認識と主張があります。フェアを期する方は、清水側の主張も合わせてご覧になることをお勧めします。
清水側の主張は、ご本人が沈黙しているため、向こう側の公的なアナウンスメントを待つか、尋問法廷を傍聴されるか、東京地裁で裁判書類を閲覧されるのが良いでしょう。
本文中「第一」「第二」は私の裁判所への私の「自己紹介」のような内容です。清水との3年半は「第三」以後に記述してあります。「第十」は訴訟には直接関係がないので省略しました。
(ここまで敬称略。扉写真は2019年9月20日、烏賀陽撮影)
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東京地方裁判所御中
(烏賀陽の署名・捺印)
私は、御庁の原告本人として、次のとおり陳述致します。
第1 原告自身について-報道記者という仕事に誇りを持って打ち込んできたこと
1 私は1963年1月に京都市に生まれ、1986年3月に京都大学経済学部を卒業して、同年4月に朝日新聞社に入社し、報道記者として採用されました。それ以来現在に至るまで、会社員・フリーランスと立場の違いはあっても、38年間一貫して報道記者・写真家としての道を歩んでいます。
2 朝日新聞社員時代は、入社後、三重県津支局、愛知県岡崎支局、名古屋本社社会部などを経て、1991年1月からニュース週刊誌「アエラ」編集部記者として東京本社に勤務しました。「アエラ」編集部にはその後10年間勤務しました。その間、1992年から2年間、朝日新聞社を休職、アメリカ・ニューヨーク市にあるコロンビア大学国際公共政策大学院(the School of International and Public Affairs)に、会社派遣ではなく自費で留学し、国際安全保障学で修士号を取りました。
3 2001年ごろから管理職になるよう会社に命じられたのですが、私は生涯現場の記者でいたいと思っていましたので、2003年5月「早期定年退職制度」を使って朝日新聞社を早期退職しました。私は40歳でしたが、正規の定年退職者です。
4 それ以後21年間、フリーランスの報道記者・写真家として活動しています。それまでの日刊紙や週刊誌といった記事の発表媒体を、インターネットと書籍に移して、報道記者の職業を続けています。幸い活動は順調で「Jポップとはなにか」(岩波新書)「SLAPP訴訟とはなにか」(現代人文社)「フェイクニュースの見分け方」(新潮新書)「報道の脳死」(同)など、これまでに約20冊の著作を出版しています。
5 これまで私は、記者として可能な限り真実に近づき、読者に知らせるよう努力を惜しまず働いてきました。新聞やテレビといった企業マスコミが伝えない事実や、国内・国際社会の問題についての考え方を知らせ、読者を啓蒙できるよう、力を尽くしてきました。それが健全な民主主義社会の維持に不可欠な「知るべきことを知る民衆」を増やすことに、微力ながら貢献できると信じているからです。
第2 福島第一原発事故とその取材について-ライフワークとしての原発事故取材
1 2011年3月11日に東日本大震災が発生し、福島第一原発事故が始まったとき、私は、これが日本で近年になかった巨大クライシスであり、第二次世界大戦の敗戦に匹敵する、長期的に社会に影響を堪え続ける危機であることを確信しました。いったん原子炉の外にばらまかれた放射性物質を完全に回収することは不可能です。土壌や山林が汚染されると環境に破壊的な影響を残します。廃炉には数十年、数百年という気の遠くなるような歳月が必要です。コロンビア大学院で核問題の予備知識があったため、こうした問題の深刻さをただちに理解することができました。
2 それゆえ、発生第一日目から情報収集に動き始め、同年3月末には原発事故被害地に入り、現場の取材を始めました。それ以降、福島に通い続け、現場取材は100回を超えました。東京での東電や経産省、環境省の取材も継続して行っています。今でも、福島第一原発事故の「その後」(被害地の変貌、廃炉の進捗など)を現地に行って定点観測しています。おそらく「フクシマ」は私のライフワークになると思います。
3 強調しておきたいのは、私は自腹で交通費や宿代を払って現地取材をしていることです。出版社などのスポンサーはいません。インターネットの有料記事プラットフォームに載せることで、取材経費を払っています。また読者から浄財の寄付もあります。おかげさまで、それで13年以上、生活を成り立たせています。
4 その取材の成果は、「Business News Japan」などのネット媒体、有料ネット媒体「note」で連載「福島第一原発事故被害地からの報告」など合計200本以上の記事を書いて公表してきました。関連した書籍は「福島第一原発事故 メルトダウンまでの50年」(明石書店)「福島飯舘村の四季」(双葉社・写真集)「ヒロシマからフクシマへ 原発をめぐる不思議な旅」(ビジネス社)など5点以上の書籍として出版しました。2011年からは、原発事故被害者の人々の証言をビデオカメラで記録し、You Tube上で公開、未来の世代への歴史史料として残す「原発事故被害地から 未来への伝言」というプロジェクトに取り組んでいます。
第3 「一月万冊」主催者・清水有高氏からの接触
1 私が「フェイクニュースの見分け方」という本を新潮社から新書として上梓したのは、2017年6月20日のことです。
当時は、ネットやSNSに広まった偽情報に騙される人が多かったため、そうした社会被害を少しでも減らしたいと思い、報道記者としての長い経験から蓄積した「フェイクニュース」(偽情報)を見分ける方法を、一般読者にも知らせたいと願い、書いたものです。おかげさまで、この本はロングセラーとなり、発売後8年を経た2025年にも第6刷の増刷がなされています。
2 「一月万冊の清水有高」と名乗る未知の人物から私にメールが届いたのは、この2017年秋のことでした。「一月万冊」の名前も知りませんでした。その文面には以下のような趣旨が書かれていました。
・自分(清水)は、アニメ・ゲーム・まんが業界の人材紹介・派遣会社「ビ・ハイア」を経営している。
・経営のかたわら、読書を推進し、良書の著者を応援するためのコメンタリー番組「一月万冊」をYouTubeで放送している。
・「フェイクニュースの見分け方」を読み、たいへんいい本だと思ったので番組で紹介したい。
・できれば番組に出演してほしい。
3 YouTubeで「一月万冊」を検索してみると、清水氏本人と、同社の「副社長」という肩書きで「平田優希」という若い女性が並んで対談のように話す番組がいくつか視聴できました。対談というよりは、時々の時事問題について二人が雑談のように話している形式でした。チャンネル登録者は1万人ほどでしたので、小さなチャンネルでした。
4 過去の番組の中には「思考は現実化する」などと題した、いわゆる「自己啓発」系の本を紹介する番組もありました(後に清水氏は『アファーメーション・バイブル』と題する自己啓発本を自著として自費出版しています)。私は「自己啓発」と呼ばれるジャンルの本やセミナー、著者を信用していません。なので、そのへんは怪しげに見えたのですが、とりあえず一度、清水氏の会社を訪ねてみることにしました。報道記者の習性として、本人に会ってみないと、どの程度まで信用してよいのか、わからないからです。
5 東京・表参道の「ビ・ハイア」社は、清水氏の住居らしい一角に連続して応接間があり、そこで面談しました。清水氏の第一印象は「人当たりのいい営業マン」「虚栄心の強い人物」「素性はよくわからない」でした。清水氏は自分が「1ヶ月に1000冊読む読書家」であると豪語していました。
しかし、本の書き手・読み手として、私ははなはだ疑問でした。そんな冊数を読むことは物理的に不可能です。また、書棚にずらりと並んだ蔵書はほとんどが手付かずの新品でした。真の読書家であれば、自分が読書家だと自慢したりはしません。私自身がそうであるように、読書は空気を吸うに等しい日常の当たり前の動作だからです。また、そんなことを言わなくても、会話の中に教養や知性の程度は自ずと表れます。私は、本人と1時間ほど会話しても、清水氏がそれほどの教養や知性の持ち主だとはまったく思いませんでした。
6 私は清水氏の経営する「ビ・ハイア」社の業務や、自己啓発系の活動については関与しない、協力しない、口を出さないことにしました。関わりたくなかったのです。その価値判断は留保し、発言しないことにしました。書き手としての私は、自分の書いた本がより多くの人に知られ、手に届くことが筆者としての責務であると考えています。清水氏がそれに協力するというなら、そこでだけ業務提携すればいい話だからです。ですので、清水氏が主催するYouTube番組「一月万冊」だけで清水氏と関わることにしました。そして1回試しに出演してみることにしました。
7 番組は清水氏と私が横に並んで対談する形でした。私はときおりジョークを交えながら、柔らかく、やさしく、自著の内容が視聴者に伝わるように話しました。
清水氏は、番組の内容や視聴者からの反応を喜び、また出演してほしいと依頼してきました。私は、当時、まだ自分のYouTubeコメンタリー放送を本格的には始めていませんでした。「本の著者」という「読者から縁遠い存在」が、ネット動画を通じて知ってもらう良い機会になり、より多くの読者が私の本を手に取ってくれるなら、それはそれでいいことだと思いましたので、了承しました。それ以来、清水氏は、ほぼ毎週、多いときは週に複数回の出演を依頼してくるようになりました。
8 また「読者イベント」「一月万冊祭」などと称して、都内のホールや書店を借りて、読者を集めたイベントを開催するようになりました。私は聴衆を前に、清水氏と並ぶ形で登壇させられ、対談をすることになりました。人前で話をすることが苦手な私は、あまり気が進まなかったので、取材・執筆という本業の支障にならない範囲で協力しました。
第4 清水氏が烏賀陽の名前を利用して私腹を肥やしたこと
1 そうしたYouTube番組やイベントのたびに、清水氏は「烏賀陽さんの取材・執筆活動の応援のために、カンパを送ってほしい」と呼びかけるようになりました。ところが、その送金先としてテロップや配布資料に記される銀行口座は、常に「東京三菱UFJ銀行 永福支店」の清水氏の個人口座でした。私の取材活動へのカンパなら、私の銀行口座を記せばいいのに、と私は不思議でした。
2 今思い返せば、この時点で清水氏の悪意に気づくべきでした。しかし、私はYouTube番組「一月万冊」が清水氏の自宅スタジオで収録され、そのカメラなどの機材も清水氏が用意していたため、そうした必要経費を含めて、いくらのカンパがあり、そこから必要経費が引かれ、税金をいくら払い、いくらのカンパが残ったのか、その配分はどうするのか、放送機材など何かを買ったのなら、それは何で、金額はいくらだったのか、などの「収支報告」が定期的に行われるものだと思っていました。
3 私は朝日新聞社に17年間勤めた元会社員です。そのときの経験から、金銭について収支報告をすることは社会常識として当たり前の企業経営だと思っていたからです。一人の社会人・企業経営者として、清水氏は、そうした納税や会計を遵守する法律に合致した経営をしているはずだと、私は考えていました。清水氏は「一部上場企業で社外監査役をやったことがある」などと吹聴していたため(具体的な社名などは今日に至るまで不明)、なおそのように考えました。
4 ところが、今日に至るまで、清水氏はカンパをいくら集め、そこから税金をいくら納め、経費を差し引いていくら残ったのか、などの収支報告を私にしたことは、一度もありません。私は3年間半ほど「一月万冊」に出演したのですが、その間、一度も収支報告を清水氏はしませんでした。信じられないことですが、本当に一度もないのです。それに類する書類をもらったことも、もちろんありません。それどころか、私の確定申告に必要な「支払調書」すら発行されませんでした。つまり、清水氏は「烏賀陽の取材活動への支援カンパ」を装って、読者からお金を集め、そのまますべて自分の財布に入れてしまい、あとは無視、黙りを決め込んだのです。当の私には、何の報告もないのです。これは、私が長年血の滲むような努力を重ねて築き上げた報道記者としての社会的信用を利用して、清水氏が私腹を肥やした「詐欺」であると言わざるを得ません。
5 私は確定申告のたびに支払調書がないことに困り果て、「支払調書を発行して欲しい」と依頼しましたが、清水氏は聞くだけ聞いて、何もしませんでした。やむなく、私は自分の銀行の口座記録を取り寄せ、清水氏からの「出演謝礼」(1回数万円)の入金を足し算して、税務署に申告せざるをえませんでした。
また、私から清水氏に、「カンパの収支報告をしてほしい」と何度か頼んだのですが、そのたびに清水氏は曖昧に言葉を濁して、とうとう最後まで何もしませんでした。
第5 清水氏が私の名前を利用して集めたカンパを税申告せず、勝手に自社の売上に付け替えたこと
1 私がそのカンパで集まった金額の莫大さを知ったのは、偶然でした。
2019年夏、清水氏の会社「ビハイア」に、京橋税務署の査察が入ったのです。清水氏は、なぜか、査察が来たことを私に自分から告げました。私は「一体どういうことなのか」と気を揉んだのですが、清水氏は、同年年末になって「お土産をつけてやったら、(税務署は)おとなしく帰った」と自慢げに話すようになりました。そして、ご丁寧なことに清水氏は、京橋税務署が発行した納税通知書を私にメールで送ってきました(甲第7号証の1~3として証拠提出済み)。
2 それを読んで私は驚愕しました。私が「一月万冊」に出演し始めた2017年から2018年にかけて、カンパ総額が約2300万円もあったことが記されていたからです。2300万円とは、地方なら一戸建て住宅が買える金額です。そんな巨額であるとは、私は想像もしませんでした。しかもさらに驚いたことに、清水氏はそのカンパ、つまり寄付金を税申告していなかったのです。それが税務署にバレてしまい、査察が入ったという経緯を私は知りました。あまつさえ、清水氏はその巨額のカンパを「寄付」ではなく、自分の会社「ビハイア」社の売り上げに勝手につけかえ、贈与税ではなく消費税を納めて税務署を納得させていました(何の商品の売上なのか、私は今日に至るまで知りません)。
3 念の為に強調しますが「一月万冊」は「読書を推進し、良書の著者を応援する」という趣旨の清水氏個人のボランティア活動だと清水氏は繰り返し私に言っていました。私もその理解でした。つまり、その経営する「ビハイア」社の業務(まんが・アニメ・ゲーム業界の人材紹介・派遣)とは何の関係もない、と清水氏は言っていたのです。
4 ところがどうでしょう。私の名前を利用して集めたお金を、清水氏は税申告すらしなかった。これは遵法精神のある人間のすることではありません。さらに、私に何の断りもなく、勝手に自分の会社の利益に付け替えてしまったのです。つまり、清水氏は「自分の会社」という別の財布に、私の名前を利用して集めた読者の善意の寄付を、隠蔽してしまったのです。私の読者の誰が、清水氏の会社の業務(まんが・アニメ・ゲーム業界の人材紹介・派遣)にお金を寄付するでしょうか。これは私と読者に対する極めて重大な裏切りです。
5 また、清水氏が私を対談相手として登壇させた読者イベントで、1000万円以上などという途方も無い高額の「個人コーチング」の宣伝ビラを参加者に配っていたことも、後で知り、愕然としました。これも、清水氏が私の名前を利用して私腹を肥やそうとしたと考える理由の一つです。
第6 清水氏が新規事業の立ち上げを語ってさらに寄付金を募ったこと
1 ここまで述べたような清水氏の違法行為を私が知ることになったのは、2019年暮れから2020年初頭にかけてのことです。
それ以前、初めて清水氏の番組「一月万冊」に出演した2017年秋から2018年、2019年暮れごろまで、私は清水氏から要請があると、取材・執筆に支障のない範囲で、また自分が論拠を持って話せるテーマに限って出演を承諾しました。自分から清水氏の番組に出たいと要望したことは一度もありません。
2 そうした間に、清水氏は、「新しいビジネスモデルの出版社を始めたい」と、私が出演する放送で公言するようになりました。「万冊堂出版」という社名も出しました。「東京・神保町の書店街にあるビルを買い取り、1階を『万冊堂』という書店に、2階はイベントスペースに、3階はオフィスにしたい」と、具体的なプランを放送で言うようになりました。
清水氏は、「現在の出版業界は、旧態依然として疲弊している。著者への報酬が本の定価の1割しかないのは少なすぎる。本の単価を上げ、著者への報酬割合を上げることで、良質の書き手が書き続けることのできるビジネスモデルが作れるはずだ」と、やはり放送で主張していました。私にも個人的にそうした話を度々しています。
私には半信半疑でした。長年出版・新聞業界で生きてきた人間として、書籍の価格設定や流通がそれほど簡単に改革できるはずがないと知っているからです。
3 しかし、私は清水氏がやる気ならやってみればいいと思いました。日頃、私は若い人材には、難しいことでも挑戦を促し、励ますことにしています。それで少しでもこの社会が進歩していくなら、それは素晴らしいことだと考えているからです。清水氏の場合も「若い企業経営者が、今までにないビジネスモデルを出版業界に持ち込んで、それが成功すれば、衰退する出版産業にとってはよい活力になるかもしれないい。できるかどうか、清水氏の経営手腕のお手並み拝見とさせてもらおう」と考えました。
4 しばらくして、清水氏は、私にその「ビジネスモデル」を、オフィスで面談したおりに話しました。「本1冊の定価は3万円」「著者にはその3割を支払う」などの内容でした。私は首を傾げました。私は、当時既に15冊以上の著作を上梓していましたが、定価は1000~2000円、著者への報酬は定価の1割でどれもだいたい同じです。社会が不況と所得減少に苦しむなか、2000円でも「高い」と批判される書籍なのに、一冊3万円とはあまりに常識はずれです。まるで自己啓発セミナーの情報商材のような価格設定です。そんな高額では、売れる部数そのものが減ります。しかも、清水氏はその本を、一般書店を通さない「直販」(出版社から購入者に郵送する方法)で販売するというのです。私は清水氏の説明を聞きながら内心「これはビジネスとして持続させるのは無理ではないか」と考えました。
5 しかし、いきなり面と向かって「その計画は無理でしょう」というのも礼を失すると思い、質問だけすることにしました。「筆者の報酬が定価の3割という数字は、どうやって算定されたのですか」「印刷代や製本代などの経費はどれぐらいだと見積もっていますか」「清水さんの取り分は定価の何割ぐらいと設定しているのですか」などと尋ねました。すると、清水氏は、みるみる不機嫌になり「なんでそんなことを聞くんだ」と怒り出しました。私は「いえいえ、悪意はまったくありません。新しい出版のビジネスモデルの誕生になるかもしれないので、価格や報酬の計算の根拠を詳しく教えてほしいだけです」と話しました。清水氏は不機嫌なまま「また後日知らせる」と言いましたが、その後も報告はありませんでした。
結局、清水氏は出版事業を最終的には放棄しました。
第7 清水氏は、本の出版を公的に約束し、予約や高額の代金・寄付金を集めながら、放棄したこと
1 清水氏が、私が明石書店から出版していた『福島第一原発 メルトダウンまでの50年』を自社から復刻して、その後に取材して公開していた菅直人総理(事故当時)のインタビューなどを収録した「増補版」を出版したい、とYouTube番組で公言したのは2018年5月22日です。
一度出版した本ですから、本の体裁になったDTPデータは原出版社である明石書店が持っています。私は明石書店に根回しして、DTPデータの譲渡に承諾を取っていました。また、増補部分の菅直人総理インタビューは、既にインターネットで公開していましたので、原稿はそこからコピー&ペーストすれば簡単に作れます。私はそうした書籍原稿の作成方法を、既に清水氏に告げてありました。
2 そうしたことを知っているので、清水氏は、2018年5月22日の放送でも、「原稿はすでにほぼ出来上がっている。あとは校閲をかけるだけ。部分的な修正で、数ヶ月で出版できる」と公言しました。そして間もなく「定価3万円」と放送やイベントで公言して予約を募り、代金の支払いを募集するようになりました。
3 さらに「新しい出版ビジネスを応援してくれるカンパ」を募集し始めました。そのキャンペーンとして、寄付金に200万円、100万円、50万円などの高額なランクを設定し、例えば200万円の寄付者には「編集会議にオブザーバーとして参加できる」「著者との食事会に招待する」などの「特典」を付けると宣伝し始めました。私は「そんな高額を出す人がいるのだろうか」と半信半疑だったのですが、清水氏が出版を放棄したあとになって聞き取りをしてみると、200万円を寄付した人が少なくとも6人いることがわかりました。こうして集めた寄付金をどう処理したのかも、清水氏は著作者である私に一度も報告したことがありません。それどころか、寄付金が全体でいくらなのか、予約数は何冊なのかも、私に知らせたことはありません。今日に至るまで、私は具体的な数字をまったく知りません。私の著作物の名前を騙って集めたお金なのに、すべて清水氏が自分のポケットに入れ、隠蔽してしまったのです。
4 私はこうした高額寄付金にランクがつけられて「特典」が提示されていたことを後になって知りました。驚愕するほかありませんでした。なぜなら「編集会議」など、一度も私は呼ばれていないし、開催されたとも聞いていないからです。また「著者との食事会」なども、呼ばれたことすらありません。実際、寄付者に聞くと、開催されずじまいだったそうです。
これを、本の筆者である私の名前や社会的信用を利用した悪質な詐欺と呼ばずに、何と呼べばいいのでしょう。
5 清水氏は、グズグズと先延ばしにして『メルトダウンまでの50年』を出さないままでした。
はじめは、清水氏は他の仕事で忙殺されているのだろうと善意に解釈し、フリーランスの編集者として活動している元河出書房新社のベテラン編集者Tさんを紹介しました。Tさんは過去に私の著作2冊を編集する経験があり、その職業的な力量には信頼を置いていたからです。「編集実務は煩雑だから、フリーの編集者Tさんを雇って彼に任せ、清水さんは最終的な完成原稿のチェックだけすればいい」と具体的に作業方法も清水氏に教えました。さらに、Tさんに連絡を取って「清水という人から連絡があると思うから、よろしくお願いします」と根回しをしておきました。そしてTさんのfacebookアカウントを清水氏に教えて、連絡が取れるようにしました。しかし、後からTさんに尋ねると、清水氏からの連絡は一度もなかったそうです。つまり、清水氏は、最初から、私の本の出版の意思などなく、私の名前や社会的信用を利用し、高額の寄付金を集め、私腹を肥やすことだけが目的だったと結論づけざるを得ません。
第8 清水氏のスタッフの自殺について
1 2019年2月、清水が経営する会社「ビ・ハイア」の30歳代の女性スタッフが、同社のオフィスが入居するビルの外部階段から飛び降りて自死するという事件が起きました。
清水氏の会社には関わらないことを決めていた私も、一人の若い女性が自死を選ぶという重大事に、深刻な懸念と疑念を持ちました。この女性スタッフとは、以前から読者イベントなどで顔見知りでした。自死の原因が家族関係や男女関係などの個人的なことにあるのならともかく、清水氏の経営者としての行動や言動に原因があるなら、清水氏の人間的な資質を疑わねばなりません。
2 私にはひとつ、思い当たることがありました。2018年秋に東京大学で開かれた読者集会で、客席でビデオを撮影中に居眠りをした当該の女性スタッフに清水氏は激怒し、即座に自らのユーチューブ番組に彼女を引っ張り出して「生理中だったので、体調が悪く、眠くなった」と説明を強要したことがあるのです。
インターネットの不特定多数が見る前で、女性にすれば、羞恥の限りであり、できるだけ隠したい、自らの性的な事象を語らせるとは、なんと残酷なことをするのだろうと思いました。目を背けたい思いでした。
3 清水氏の会社経営には関わらないつもりだった私も、人間的良心から看過できず、気の毒に思い、のちに読者イベントの手伝いに来ていたこの女性に、清水氏のいないところで「何か困ったことがあったら、いつでも気軽に連絡してください」と告げ、こっそり名刺を渡したりしました。しかしこの女性からは連絡がないまま、彼女は自死してしまいました。
この女性スタッフの自死と同時に、彼女の自死現場の第一発見者である男性スタッフ2人も行方不明になったことを知りました。自死が起きれば、当然警察は関係者に事情を聞きます。長年の報道記者の経験から「これは尋常ならざることが起きている」と察知した私は、清水氏に「一体何が起きたのか」と尋ねたのですが、清水は曖昧な返答に終始しました。女性スタッフの自死の原因もわからない、という説明しかしませんでした。しかし、そのうちに「彼女の自死は毒親からの虐待が原因」とか「行方不明の男性スタッフは背任行為をしたので刑事告訴する」(刑事告訴は行われたが、その後起訴されず終わった)とか、まったく理解できない言動を口にするようになりました。
4 同年秋、清水氏にある週刊誌の取材の申し込みがありました。清水氏は私にそのインタビュー取材への同席を求めてきました。私は同業者として、取材相手以外の人間がインタビューに介入することが、いかに業務の妨げになるかを知っています。「そんなことはできない」と断ったのですが、清水氏は「どうしても来てくれ」と聞きません。渋々私は「同席するだけで、一切介入しないし、口も出さない」ことを条件に同席することにしました。
5 取材は東京都内の貸しオフィスで行われました。今回の訴訟で清水氏の代理人になっている大渕愛子弁護士も、清水氏の顧問弁護士という肩書きで同席していました。
記者2人から出た質問や指摘する事実の内容に、私は驚愕しました。自死した女性スタッフや、失踪した男性スタッフ2人に、清水氏は「業務上のミスの罰金」と称して、数千万円の負債を負わせていたこと。その返済で自宅の家賃すら払えなくなった3人は、清水氏の会社のオフィスに寝泊まりせざるをえない状況に追い込まれていたこと。清水が深夜午前3時といった時間帯に、3人に「起きてますか」というラインを数分おきに送り続け、眠れない状況にしていたこと。記者たちはそのラインのスクリーンショットなど「証拠」も持参していました。
私は席で絶句しました。これがもし本当なら、極めて悪質なパワーハラスメントです。女性スタッフが自死したのも、こうした過酷な環境(シャワーもないオフィス部屋に、男女が一緒に寝泊まりするなど)に追い込まれたこととなんらかの関係があると見るのが自然です。私は記者たちの質問に清水氏がどう答えるのか、固唾を飲んで見守りました。
しかし、清水氏は無言で項垂れたまま、数分間、無言で何も言いませんでした。やがて口を開いても、意味不明の独り言をブツブツ言うだけでした。そして突然、大声で泣き出しました。私は呆気に取られました。いい歳をした大人の男性が、取材に来た記者2人の質問に答えられず、声を上げて泣いているのです。異常というほかありません。もし記者の指摘するハラスメントの内容が事実ではないのなら「事実ではない」と言葉で否定すればいいだけだからです。
あまりの異常事態に、私は、取材の休憩時間に清水氏を廊下に呼び出しました。そして「事実でないことは事実ではない、と記者さんに言いなさい。そうしないと、相手の言うことを認めたことになりますよ。証拠となる事実を示して反論すれば、記者さんもわかってくれます」と忠告しました。清水氏は「そうする」とだけ答えました。
しかし、再開した質疑応答でも、清水氏は記者の指摘するパワーハラスメントの内容に、なんら否定も反論もできませんでした。両手で顔を覆ったまま「ううー」とか「ああー」など、意味不明の音が口から漏れるだけでした。否定も反論もできない清水氏に、私は「これは清水氏を疑わねばならない」と考えました。報道記者としての経験から、記者が取材してぶつけてくる内容が事実でないなら、相手ははっきりと、具体的な証拠事実を挙げながら、否定することを知っているからです(もちろん、真実であっても取材には否定する相手もいます)。しかし、清水氏は否定も反論もできないのです。言葉も出せず、ただ子供のように泣いているだけなのです。もし私が清水氏を取材する記者だったら「クロ」の心証を固めるに違いありません。
清水氏は取材終了後「たいしたことはなかった」と虚勢を張っていましたが、私は取材を受ける側の有様として清水氏の対応は最悪だと思いましたので、正直に「最悪のシナリオを想定しておいた方がよい」と忠告しました。私の予想通り、週刊誌には「清水のパワハラが女性スタッフの自死の原因である」という趣旨の記事が、具体的な事実を論拠として示しながら載りました。
そして、週刊誌が出るとほぼ同時に、自死した女性スタッフのご両親と、失踪した男性スタッフ2人が、清水氏をパワーハラスメントで東京地裁に民事提訴しました(東京地裁で係争中)。そして東京地裁の司法記者クラブで記者会見を開きました。その内容が民放のワイドショーなどに「パワハラ」として流され、世論は激昂しました。ネットではバッシングが渦巻き、清水氏はYouTube番組「一月万冊」をしばらく休止することになりました。
6 清水氏はこうした女性スタッフの自死や世論のバッシングで「鬱になった」と称していますが、私は疑わしいと考えています。なぜなら、私は番組休止中も、清水氏と連絡を絶やさず、たびたび会っているからです。それは、清水氏が出版を約束している「メルトダウンまでの50年」の刊行に向けての作業を進めているか、監視しなくてはならないからです。世間には「鬱」と称しているわりには清水氏は活動的で、バッシングに反論する動画を収録したり、神保町に本を買いに出かけたり、バーに出掛けて趣味のパイプや葉巻を楽しみ、カメラ撮影に興じていました。私はたびたびその現場に同席していましたので、清水氏の様子を見て「これはうつと言っても、深刻な心の病ではなく『心労』程度のことではないか」と考えるようになりました。
というのは、私自身、会社員時代末期の2002年ごろからひどい鬱にかかり、回復に5年ほどかかった経験があるからです。そうした自分の経験では、本当の鬱になった場合、朝ベッドから起き上がることすらできなくなります。外出はおろか、食事すら意欲を失い、部屋から出ることすら億劫になります。それに比べると清水氏は活動的で、とても自分と同じ「鬱」とは思えませんでした。
ですから、清水が「鬱」と自称している間も、私は何度か「ゲラをそろそろ出してほしい」などと「メルトダウンまでの50年」の編集作業を進めるよう督促しましたが、清水は曖昧な答えに終始し、無視しました。
しかし、それは、そもそも、おかしな話です。私は清水氏とは「自分の本を出す出版社」として付き合っているのです。代表者が病気になったからと言って、出版社が約束した本を出さないことなど、出版業界ではありえません。よしんば清水氏が病気だったとしても、私がたびたび清水氏に勧めたように、フリーランスの編集者を雇い、本を編集する実務作業はそちらに任せ、清水氏は最終的な原稿の仕上がりをチェックすればよいだけです。しかし、清水氏は、せっかく私が根回しして了解をとったフリーランス編集者Tさんに、最後まで連絡すらしませんでした。以降は、清水氏は約束した「メルトダウンまでの50年」の編集作業の遅滞の言い訳に「鬱だから」「訴訟対応で忙しいから」などと口にするようになりました。
しかし、出版社が、訴訟対応を理由に出版を遅らせることなど、出版業界ではありえないことです。
私は、そんな馬鹿げた言い訳を使われてはたまらないと思い、自分がかつて巻き込まれたSLAPP訴訟である「オリコン裁判」で弁護団長を務めてくれた人権派の飯田正剛弁護士を紹介し、清水氏の弁護を依頼しました。オリコン裁判で一審で負けた私を、東京高裁で逆転勝ちさせてくれたことで、飯田弁護士が優秀な弁護士であることをよく知っていたからです。つまり「万全の体勢で裁判に臨んで、出版を急いでくれ」という願意です。その証拠に、飯田弁護士は、清水が元スタッフ3人から訴えられた民事訴訟で、今も弁護団長を務めています。
私にすれば、清水氏は約束した本を刊行しないで私の名前を利用して私腹を肥やしたのみならず、自分が提訴されて窮地に陥ったときに弁護士まで紹介してもらったのに、刊行しなかった理由があたかも私にあるかのような錯誤を述べているのですから、なんと言う恩知らずな人間かとしか思えません
第9 清水氏が出版を約束した本は商品として存在しなかったこと
1 これは、次項で説明するように、私が一月万冊を追い出されたあとになって判明したことです。
私は、念のため『メルトダウンまでの50年』の元出版社である明石書店に「清水氏が御社からDTPデータを入手したのはいつか」と問い合わせました。 驚いたことに、その回答は「2021年1月」でした。これにはさすがの私も、全身の力が抜けるほどがっくりきました。
2 前述したように、清水氏が『メルトダウンまでの50年』について、「原稿はすべて揃っている。あと数ヶ月で出版できる」と「一月万冊」で放送したのは、2018年5月22日でした。ところが真実は、清水は出版に必要な原稿を入手などしていなかったのです。なんと2年近くも、予約や代金を集めながら、肝心の商品である『メルトダウンまでの50年』一月万冊版は、原材料の原稿すら「2020年1月」まで、存在すらしなかったのです。
つまり、存在しない商品について、清水氏は、予約金やカンパを集めていたことになります。これは悪質極まる詐欺だと言わざるを得ません。
第10 省略
第11 清水氏が烏賀陽の印鑑と筆跡を偽造したこと
1 『メルトダウンまでの50年』とは別に、私は、2019年10月に『世界標準の戦争と平和』という国際安全保障を初心者に平易に解説した本を扶桑社から上梓しています。この本は出版直後から非常に好評で、売れ行きも好調でした。出版直後から、清水氏は「この本もうちから出したい」と私に言い寄るようになりました。
2 しかし、本を出版したばかりですから、無理です。出版業界の慣行として、出版から2年を経ないと、元出版社は重版するか、そのまま絶版するかを判断しません。私はそれを清水氏に説明しました。すると、清水氏は「原稿を譲渡してもらうとするといくらぐらいになるのか、扶桑社と話をしてくる」と言いました。私は相談ぐらいならいいだろうと思い、それは任せました。
3 私は、2020年6月29日に、扶桑社で担当であった田中亨氏に対して。別件で、私の新しい書籍「福島原発事故からの10年の現実」の企画内容をメールで送つて、扶桑社から出馬可能かどうかを問い合わせたことがありました。
これに対して、田中氏から、「社内で出てきた話は、清水さんが昨年10月に発刊されたばかりの本の版権を買い上げたいと仰ってきたということ、それに対して烏賀陽さんが了解されていることは、弊社を信頼されていないからだということです。弊社に信頼を置かれていない著者の方の本を出版するのはいかが異なものかという話になり、企画が通らなかったということです。」という回答がありました(甲第11号証、甲第12号証)。
4 その後、2020年12月24日に、清水氏から、Facebookのメッセンジャーで連絡がありました。その際に、清水氏からは、「覚書についてはもらってある。清水、烏賀陽、扶桑社3社の連盟覚書」という発言がありました(乙第1号証)。
これに対して、私は、「本契約をする際には、私の自宅に覚書が送ってくるんですか」と質問したら、清水氏はこれを肯定する答えをしていました。その際に、覚書のデータが送信されていたようですが、スマートフォンの画面ではあまりにも小さい上、まさか、私の印鑑を偽造して捺印していることなど夢想だとしなかっため、その画像をきちんと確認しておらず、意味が分かりませんでした。もちろん、その際に、清水氏から「烏賀陽さんに代わって印鑑を押しておいた」という話も一切ありませんでした。
5 その後、2021年6月20日に、扶桑社の田中氏にメールを出して、「今回、わけあって清水有高氏主催の『一月万冊』から『世界標準の戦争と平和』の版権を引き上げることにしました。」、「清水氏は貴社から『世界標準の戦争と平和』の版権を買い取ったと主張しているのですが、実は私はその原稿を確認していません。こちらには送付されていません。また、返還してほしいとの求めには清水氏は応じていません。」と述べ、①「世界標準」の原稿は清水氏に引き渡されましたか。②もし引き渡されたなら、いつ、どのような形でしょうか。③清水氏はそれに対価をいくら支払いましたでしょうか、④もし、引き渡された原稿のデータをまだお持ちでしたら、小生が頂戴することは可能でしょうかとの4点を質問しました(甲第14号証)。このような質問をしたのは、この時点で、自分自身が書籍「世界標準の戦争と平和」の版権についての覚書に署名押印していなかったことから、その版権が扶桑社から清水氏に譲渡されたことについて懐疑的だったからです。
これに対して、田中氏からは、同年6月21日の回答で、2020年12月末にDTPデータを引き渡したこと、その対価として192,819円(消費税込)を支払ったなどと回答されました(甲第13号証)。
それで、覚書が正式に交わされていることを認識することになり、扶桑社から過去に送付されてきた書類の中に、その覚書が送られてきているのではないかと考えて、毎月扶桑社から送付される印税等の書類の中から探して、同年⒍月21日から1週間後に、甲第16号証の覚書が送られて来ているのを見付けました。
6 私はそれを一読して、腰を抜かすほど驚きました。扶桑社と清水氏の間の原稿譲渡の覚書に、何と、同席もしていない私の印鑑が捺印され、私の住所が手書きで書かれていたのです(烏賀陽の氏名はパソコンで印字)。しかも、その印鑑は私が契約書作成に常用する実印(印鑑登録してあるもの)とは似ても似つかぬ三文判で、筆跡は私のものではありませんでした。
そもそも、私は扶桑社が原稿を譲渡するには時期が早すぎることを知っていますので、そんな契約に合意するはずがありません。清水氏は著作者である私が原稿の譲渡に同意していると偽装するために、私の名前を記名し、印鑑を偽造し、勝手に覚書に住所を手書きで記入したのです。
7 これには呆れたを通り越して、激しい怒りを感じました。清水氏の偽造のせいで、私が精魂込めて書いた「世界標準の戦争と平和」は絶版にされ、書店から回収されました。つまり読者に届かなくなったのです。筆者として、これほど憤怒に値する仕打ちはありません。
8 私はその事実を知った後、ただちに、覚書の原本と、私の印鑑、印鑑証明書を持参して、警視庁月島警察署(地元警察)に被害届を出しました。これは民事ではなく、刑法の有印私文書偽造罪に該当する厳然たる犯罪であると考えます。
第12 清水氏が連絡を拒絶したこと
1 2020年に入るころには、清水氏が出版を放送で公言してから3年近くが経過していました。その間、本の刊行に必要な具体的な作業はまったく行われませんでした。私に点検用のゲラが送られてくることすらありませんでした。つまり、出版に向けての作業は何ら進んでいなかったのです。
2 さすがの私も、清水氏に出版の意図が本当にあるのかどうか、疑うようになっていました。そして「出版する意思があるなら、原稿はすでに揃っているはずだから、そろそろいい加減に出してほしい。このままでは読者に申し訳が立たない」と依頼しました。清水氏は「3月11日は原発事故が始まってから9年の日だから、その日に合わせて出そう」と返答してきました。しかし、その日が近づくと、清水氏はそれも一方的にキャンセルしました。理由の説明すらありませんでした。私は「これは出版を騙った詐欺なのではないか」と考え始めました。
3 そんな中、2020年の東京都知事選挙が近づいてきました(告示日:2020年6月18日、投票日:同年7月5日)。3月か4月のある日、何気なしにTwitter(現在のX)を見ていると、知事選に立候補を表明している宇都宮健児氏(弁護士)を「一月万冊」にゲストで出演させ、その話を放送するとあったのです。私が気づいたのは、その日の夕方のことで、放送開始は当日午後7時とありました。事前に私には何の相談もありませんでした。
4 私はびっくりして清水氏に電話をかけました。それまで「一月万冊」が選挙の立候補者を出演させたことはありませんでした。その意味では、政治的には中立だったのです。しかし、特定の立候補者を出演させ、その主張を放送すれば、その候補にだけマスメディアの伝播力を提供したことになり、政治的中立生は崩れます。当時「一月万冊」はチャンネル登録者が10万人を超えるマスメディアに成長していました。
5 私がこの宇都宮健児の出演に驚いたことには理由があります。前述の著作「フェイクニュースの見分け方」の中で、私はマスメディアが守らなくてはいけない大原則として「中立性」を明記していたからです。清水氏は同著を「千回は繰り返し読んだ」と番組中でも個人的にも豪語していました。ならば、宇都宮氏の出演がマスメディアの中立原則違反であることが、なぜわからないのだろうかと、私にはまったく理解できませんでした。
6 私は、清水氏に電話すると、清水氏は「いま映画館で映画を見ていたんだ」とすこぶる不機嫌な調子で言いました。私は次のように伝えました。「清水さん。『一月万冊』はあなたが主催するマスメディアだから、最終的にはあなたが判断すればいい。その前提で聞いてほしい。僕は宇都宮健児さんを出すことはやめたほうがいいと思う。これまでせっかく守ってきた一月万冊の政治的中立性が崩れてしまいます。一人候補者を出して、中立性を守ろうとすると、結局は候補者を全員出さなくてはならなくなり、ものすごく煩雑なことになります。そんな面倒くさいことをするくらいなら、選挙候補者は誰も出さないのが賢明ではないでしょうか。これは出演者の一人として、どうしても言っておかざるをえないのです」と。
これに対する清水氏の反応は意外なものでした。激昂したのです。「政治的中立なんか守って、朝日新聞が社会を変えたのか」「激怒した」「傷ついた」と意味不明の言葉を叫び、電話を一方的に切ってしまいました。私は唖然と途方に暮れるしかありませんでした。結局、宇都宮健児氏出演の「一月万冊」は予定通り放送されたようです。
7 その夜から、清水氏とはまったく連絡が取れなくなりました。電話をしても出ないし、留守番電話に「連絡をください」とメッセージを残しても、返信はなし。メールやフェイスブックメッセンジャーを送っても、すべて無視され、返事はありませんでした。私は、一月万冊の今後の方針(これからも政治家を出すのか、政治的中立性を捨てるのか、など)について、清水氏の言い分を聞かなくてはならないと思っていたので、途方に暮れました。清水氏が連絡を拒絶しているのですから、私の一月万冊への出演も突然断ち切られました。
それまで週1~2回出演していた「一月万冊」から私が突然姿を消したので、しばらくすると、心配した視聴者の方々がメールやツイッター、フェイスブックなどで「烏賀陽さん、どうして出ないの」「病気なのですか」などのメッセージを送ってくるようになりました。
8 中でも、私にとって死活的に重要だったのは、清水氏が2018年5月22日に出版を番組中で公知した『メルトダウンまでの50年』が出ないままだったことです。つまり、いよいよ清水氏は本を出さないまま、寄付金だけを集めて、私を追い出そうとしている。3年近く辛抱した私も、これは本格的に詐欺であり、寄付金や代金を集めたまま本を出さないという脱法行為をうやむやにするつもりだと考えざるを得ませんでした。
9 そこで、やむなく、ツイッター上で、上記のような清水氏との間で起きたこと、連絡を清水氏が拒絶していること、それゆえ出演も途絶えていることなどを、感情を交えずに事実だけ淡々と伝えました(乙第6号証)。私が突然「一月万冊」から姿を消したことの説明は、本来は主催者である清水氏がするべきことです。
10 その際に、私が特に注意したのは、文面が清水氏への誹謗中傷にならないことです。なぜなら、清水氏の態度や行動から判断して、清水氏が私に極めて敵対的な感情を抱いていることがわかっていたからです。清水氏は、顧問弁護士である大渕愛子弁護士を使って、対立する相手や、自分に不都合な言動や行動をした読者に、理不尽な訴訟を起こしたり、恫喝的な内容証明書を送りつけたりしていました。私が発信した内容をネタに、名誉毀損訴訟などの嫌がらせをかけてくる可能性があることは、十分に予想できました。ですから、誹謗中傷になる表現は注意深く避けたつもりです。
第13 終わりに
1 ここまで述べてきたように、清水氏は幾重にも嘘を公言し、違法・脱法行為を繰り返しながら、寄付金や本の予約代金を集めて、私腹を肥やしています。その総額は想像すらつきません。清水氏ひとりしか知らないのです。
2 一人の法律を守って生きる市民として、また、社会のよりよい姿を目指して仕事をする報道記者として、清水氏のしてきたことはとても看過できるものではありません。
3 また、私の記者としての長年の著作や仕事の価値を認めてくださり、善意で寄付を清水氏に送った読者のみなさんに、非常に申し訳ない気持ちでいっぱいです。そんな人たちに、ただ経済的損害と不愉快な気持ちだけを残してしまったからです。清水氏のような人間とかかわるべきではなかった、と身の不明を深く恥じています。
4 さらに深刻なのは、清水氏が今なお「一月万冊」の放送を平然と続けていることです。そしてカンパを呼びかけています。今やチャンネル登録者は40万人を超えます。こうしたインターネットという新しいマスメディアを使った「出版詐欺」「寄付金詐欺」が、これ以上被害者を出すことを何としても止めなければなりません。清水氏は、明白に社会に害をなしています。
5 裁判所におかれましては、こうした社会に害が広がることを防ぐためにも、どうかご英断をされますよう、切にお願いを申し上げます。
以上
(2025年6月25日記す)
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