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修学旅行の夜のようなモーニング

愛知県小牧市に、最高にお腹いっぱいになれるモーニングがある。

初めに言っておくと、僕は全くグルメ通ではない。

主な情報源はPSゴールド(中京テレビでおなじみのグルメ番組。高田純二が好き勝手やってる。)くらいであり、お得情報などは全く持ち合わせていない。
でもたった1回行ったモーニングが印象的だったので、noteにでも書きたいと思う。

「ウエダくん、仕事終わりモーニング行く?」

ガッチャンガッチャンという機械音以外は聞こえない無機質な工場に、急に血の通った声がした。全く交流のない新任の係長の声だった。

「仕事が終わってからモーニング」とは決して何かが狂っているわけではない。時間は朝4時。新卒のころ僕は食品工場で夜勤リーダーをしており、毎日夢うつつの状態でパソコンと睨めっこしていた。

その係長とはほぼ話した事がなく、「32歳男性・既婚」以外の情報は知らなかった。
故になぜ僕?なぜモーニング??というのが正直な感想だったが、「人脈」というワードに大層な憧れを持っていた当時の僕は二つ返事で行く事にした。

空っぽのチャイルドシートの横で揺られること30分。
「お子さん何歳なんですか?」などと毒にも薬にもならない話をしているうちに、目的地の看板が見えてきた。

公式サイトより

「マンガ喫茶ビードリーム」

モーニングとは、小洒落たレトロ喫茶店で時間を気にせずゆで卵などを食べるものだと想像していた。
その理論でいうと、今のところ「時間を気にしない」しか合っていない。

店内に入ると、僕らを囲うかのようにそびえる本棚と、色とりどりの漫画の背表紙たち。
「喫茶店」でも「ネットカフェ」でもない、「漫画喫茶」としか言いようがない場所だった。

(モ、モーニングはどこ…?)

と思っていたら、片隅にちゃんとあった。

公式サイトより
公式サイトより
公式サイトより。
フィルムカメラのような暗さの写真たち。

僕の知ってるモーニングと違うんだが。
コーヒー飲み放題、ご飯も食べ放題、サラダもおでんも食べ放題。
なぜか「唐揚げは4つまで」というわんぱく小僧泣かせの謎ルールがあるのだが、どうやらモーニングには間違いないらしい。

さらに漫画も読み放題で80分800円。
「モーニングとは?」という禅問答が巡り巡るが、常連の係長の顔を見ると、悪いところではない事が読み取れた。

「ここメッチャいいんだよ〜」

クールな印象の係長が、すごく居心地良さそうに話しかけてきた。
夜勤をした事がある人なら分かると思うが、「夜勤ハイ」という現象がある。夜勤終わりはシラフなのに異常にハイテンションになれるのだ。
普通に考えればただの寝不足。しかしこのハイのおかげで話は大いに盛り上がった。

・係長は、実はグループ会社社長の息子だった
・20代は物販で個人事業をしてきたが、子どもを養うために父の会社に入社した
・父のコネが嫌だったため素性を隠して入社。叩き上げでやっと係長になった
・僕の出世欲が強いことを聞き、波長が合うのではと誘った

noteに書きたくなるようなエピソードが訥々と語られ、クールに見えていた係長は気づけばおもしろお兄さんになっていた。

まるで修学旅行の夜のように語っているとあっという間に80分は過ぎ去った。唐揚げ1個でご飯1杯かっ込んでいたので、無論お腹もいっぱいである。

この1年後、僕は会社を退職する。
相変わらず係長とはあまり交流がなかったが、今となっては僕も当時の係長くらいの歳。
なんとなく当時の係長の気持ちも分かるような気がする。あれは係長なりのアイスブレイクだったのだろう。

ちなみに上記の「マンガ喫茶ビードリーム」は今では「ニュードリーム」という名前に変わっているらしい。

「夢のようになれ」と言っていた店が「新しい夢」を冠しているのは、なんとも趣深いなと思う。

つづく。


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