#204 子どもの本の紹介㉟『一郎くんの写真‐日章旗の持ち主をさがして‐』
来年度に学校図書館で購入する本の選書を兼ねて、
主に2025年度に出版された児童書を、
図書館でせっせと借りて読んでいます。
その中から、よき本だと感じた一冊をご紹介します。
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『一郎くんの写真‐日章旗の持ち主をさがして‐』
(木原育子/文、沢野ひとし/絵、福音館書店、2025年7月)
アメリカで見つかった日章旗。
その持ち主を探す過程を綴ったノンフィクション絵本です。
戦争では、多くの軍人さんが戦地にむかいました。日本に残されている家族は親しい人たちの元をおとずれ、日の丸の旗に名前をよせ書きしてもらいました。その、たくさんの人の名前が書かれた日の丸の旗が日章旗です。戦地に旅立つ軍人さんがもって行く、お守りのようなものでした。
その旗には、「一郎君へ」と書いてありました。
著者は新聞記者。
「旗にこめられた思いをさぐるため」、
旗の持ち主である「一郎くん」を探し始めます。
旗に書いてある名前は、全部で59人。
その苗字が静岡県に多くみられるものだったため、
著者は静岡の昔の電話帳などを使って、名前の住所を調べ、会いに出かけます。
でも、寄せ書きをした本人は、もう亡くなっていることも多く、「一郎くん」の手がかりは、なかなかつかめません。
そんな中、「一郎くん」を覚えている人が見つかるのですが・・・。
その人は、日章旗に名前を書いたことを、
悔やんでいました。
「戦争の時代だからとはいえ、大事な友だちにむかって、国のために死ねと背中をおしたんです。死んできなさい、と。それが戦争、それが日章旗です。」
いろいろな人に取材を続け、
著者は、一郎くんの家族を見つけ出します。
「一郎くんが生きた証として、生前の立派な姿の写真を掲載したい」と思った著者ですが、一郎くんが暮らしていた静岡市は大きな空襲を受けており、焼けてしまったのか、写真はみつかりません。
しかし著者はあきらめず、一郎くんのお母さんが戦後、身を寄せていた家をつきとめ、残された写真を手に入れます。
軍服姿の「一郎くん」の写真の裏には、
母親の字で、こう書いてあったそうです。
「中田一郎、たいせつ」
南洋諸島で戦死した一郎くん。22歳でした。
最後に、その「一郎くん」の写真が掲載されています。
アメリカで見つかった日章旗の故郷への帰還。
それは、一人の青年についての記憶をたどる旅でもありました。
丁寧な取材で、次第に輪郭をもっていく
「一郎くん」の存在。
冷静な視点で読み始めた自分の心の中に、悲しみややりきれなさが、次第にくっきりと生じてくるのを感じました。
心で感じながら戦争について知ることができる、
これまでにない角度からの良い絵本です。
福音館書店の「たくさんのふしぎ傑作集」。
雑誌版で出た後、そのすべてがハードカバー版になるわけではありません。
この本の雑誌版は2019年の出版。
今回、ハードカバーが出版されたことに感謝します。
今日も読んでくださって、ありがとうございました。
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