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#224 読書記録52『家守綺譚』

ずっと気になっていた梨木香歩『家守綺譚』
漫画版近藤ようこ著)も一緒に購入し、
小説と漫画を行きつ戻りつして、読みました。
贅沢な読書体験でした。

*この記事はアフィリエイトリンクを含みます。

『家守綺譚』
(梨木香歩 著、新潮文庫、2006年)

漫画版。
家守綺譚 上・下』
(近藤ようこ 漫画、新潮社、2025年9月)


目次が美しい。
サルスベリ」で始まり、「葡萄」で終わる。
すべて植物の名前


主人公綿貫征四郎。駆け出しの物書き。
亡くなった親友高堂(こうどう)の実家の家守をしている。

この家がとても風情がある。

 鳥の落とし物から、時折見慣れぬ洋風の草も芽吹くが、元々は和風の庭だ。手入れをしないので、シュロ、クスノキ、キンモクセイ、サツキにサザンカ、タイサンボク、槇も榊も柴、杉も、みんな伸び放題で栄耀栄華を極めている。

『家守綺譚 』(新潮文庫)「サルスベリ」冒頭

家の北側は山。
庭には大きな池があり、その上にせり出すように造られた縁側がある。

漫画版では、小説の描写が、
ていねいていねいに絵で表現されている。

小説が文章で描く世界と、
漫画がで描く世界が、美しく重なりあう。
微塵の違和感もない。
むしろ、お互いが作品世界を広げあっている


※以下、作品内のエピソードをいくつか紹介します。
ネタバレと感じられる部分があるやもしれません。
初見でこの作品を味わいたい方は、ご注意くださいませ。





『家守綺譚 』
日常異界がゆるやかに交わりあう世界。

サルスベリは人間に懸想し、
ヒツジグサは「けけけっ」と鳴く。

河童が池に逗留し、
土手では小鬼がふきのとうを探している。

で行方不明になった友人高堂は、
度々、綿貫のもとを訪れる。


そのほかの登場人物も、異界との境界が曖昧だ。

山寺の和尚は、河童についてくわしい。
綿貫が池でみつけた「緑色の皿のようなもの」を持って、相談に訪れたときの会話。

ー朽木村岩合の滝壺の生まれ。河童じゃ。
ー河童とは、普段そのような姿をしているものですか?
ーそうだ。水から引き上げるとこうなる。水に入れると戻る。

『家守綺譚 』(新潮文庫)「ヒツジグサ」25頁

エエーッ!この部分を読んで動揺しました。
実はワタクシ、妖怪愛好家でして。
河童についても様々な書籍を読んできましたが、
こんな河童の生態は初耳でした!おもしろい!


そして、この和尚
なぜか狸の姿で、しょっちゅう綿貫の前に現れる。
いや、違いました。
狸が和尚に化けて、綿貫の前に現れるのです。

読んでいると、この和尚が狸だか人間だかよくわからなくなり、和尚が言ったセリフも、狸が言ったのか和尚が言ったのか、読了後の記憶が曖昧です。



マムシやムカデを買い取って薬種問屋に売る「長虫屋」は、母方の祖父がカワウソだという。その告白を聞いた綿貫はこう尋ねる。

 長虫屋は自らの出自に何の恥じるところもないらしかった。私は思わず相手をいたわる声になり、
 ーそれで母上はお達者か。
 ー小さい頃、出奔いたしました。そいういう血なのでしょう。
 そうか、と、私は長虫屋の苦難の半生を思い、先日の一件をすっかり水に流してしまった。屈折した生い立ちを持ったやつなのだ。

『家守綺譚 』(新潮文庫)「ネズ」118頁


主人公綿貫異界の者たち(あるいは異界との境にいる者たち)への態度には、終始、慈しみがある。

サルスベリに読み聞かせをしてやり、次々と姿を変える怪しい尼僧(正体は狸)の背中をなでてやり、土手でふきのとうを探す小鬼を助けてやる。

私が一番好きなシーン。

鬼とはいえこんな小さな子どもに、ふきのとうは大きすぎるだろう。ひとつ背中に背負えばひっくりかえるかもしれない。

『家守綺譚 』(新潮文庫)「ふきのとう」149頁

漫画版での、このシーンの作画がとてもかわいい。
萌え。



綿貫が飼うことになった犬のゴローも不思議な存在だ。

サギと河童の喧嘩を仲裁し(仲裁犬として異界の者らの揉め事の対応にあたっているらしい)、風雅を解し、
綿貫の行動に溜息をつく。(近藤ようこさんの描く溜息をつく犬のゴローがかわいい。萌え。)

ゴローは、綿貫にとって彼方(かなた)=異界への案内犬であり、此方(こなた)=日常に繋ぎとめておくための守り犬でもある。



最終章「葡萄」にて、夢の中でゴローを追ううちに、綿貫境界を越え、とうとう異界へと足を踏み入れます。

それでも、最終的に、
あちら側にとどまらず、こちら側に戻ってくる。

それは、ゴローの力ではなく、
彼自身の意志の力で決めたこと。

異界の住人となった高堂
「また来るよ」と去っていったけれど。

今後、高堂が綿貫のもとを再び訪れる日が来るのか・・・。私は、もう来ないのではないかという気がしています。

ああ、小説には続編『冬虫夏草』がありました。
未読です。これから読むのが楽しみです。



最後に、記事を読んでくださったみなさまに、
作中で引用されているゲーテの詩の一節を贈ります。

彼方へ
君と共に行かまし

『家守綺譚 』(新潮文庫)「檸檬」140頁

ぜひ、小説&漫画を携えて、
道中の景色を味わいながら、
彼方への旅路をお楽しみください。


今日も読んでくださって、ありがとうございました。

*Amazonアソシエイトとして、うだよしこは適格販売により収入を得ています。




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