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ForresterB2B③|Forrester Connected GTM Framework とは ─ 日本のB2B企業に「Phase 3」を埋められる人材はいるのか

※本記事はベネクロサイトで公開した分析記事の note 版です。原文(FAQ・用語解説付き)はこちらからご覧いただけます。

はじめに

前回 note に書いた「GTM Singularity とは何か」では、Forrester が打ち出した問題提起 ─ B2B のGo-to-Market(GTM、市場参入・売り方の全体設計)方程式が機能しなくなる転換点が来ている ─ を整理しました。

この記事の LinkedIn 版に対して、GTM Singularity 概念の提唱者である Forrester の Dave Frankland 氏(Research Director at Forrester) より、コメント欄で endorsement をいただきました。とても嬉しいですね。

そして、その問題提起への「解答」として Forrester が同じサミットで提示したのが、本記事のテーマである Connected GTM Framework です。

本記事では、フレームワークの中身と同時に、「日本のB2B企業がこの枠組みを実装するうえで直面する、最大のボトルネック」 について触れてみます。それは、技術でもツールでもなく、の問題です。

Connected GTM Framework の核心

Connected GTM Framework は、Forrester の VP・Principal Analyst の Katie Fabiszak、Principal Analyst の Rick Bradberry らが登壇した「Disconnected GTM Efforts Will Ruin Your Company(分断された GTM の取り組みが、会社を破滅させる)」セッションで初公開されました。

枠組み自体はシンプルです。GTM を5つのフェーズで設計し、部門横断で意図的に連携させる ─ それだけです。

Phase 1: GTM strategy           → 戦略策定
Phase 2: GTM planning           → 計画策定
Phase 3: execution requirements → 実行要件設計  ★ ボトルネック
Phase 4: GTM execution          → 実行
Phase 5: measurement and        → 測定と最適化
        optimization

Forrester は「家を建てる」比喩で説明していました。

家を建てるとき、私たちは設計図なしに壁から作り始めることはしない。 基礎を整え、構造を設計し、配管・配電を計画し、そして実行する。 GTM も同じであるべきだ。

Forrester の VP・Principal Analyst の Katie Fabiszak、Principal Analyst の Rick Bradberry

各フェーズの詳細はベネクロサイト原文に書いたので、ここでは中核だけを取り上げています。

なぜ Phase 3 が「ボトルネック」なのか

Connected GTM Framework の5フェーズの中で、Forrester が特に強調していたのが Phase 3(execution requirements / 実行要件設計) でした。

ここは、戦略(Phase 1・2)と実行(Phase 4)を繋ぐ橋です。 そして、多くの組織で欠落しがちなポイントでもあります。

戦略は経営層が描く。実行は現場が頑張る。 でも、その間で「戦略を実行可能なオペレーションに落とし込む層」を、誰が担うのか?

Forrester が明確にしたのは、この Phase 3 から Phase 5 までを Revenue Operations leader が筆頭責任者として担う、ということでした。

サミットで Collibra(コリブラ)の CMO Thomas Brence 氏はこう述べていました。

GTM 戦略を策定することは重要だが、本当の連携不全が起きるのは、収益計画の段階だ。 戦略を計画に落とし込む過程で、各機能の解釈がバラバラになる。

Collibra CMO Thomas Brence

そして、Forrester が示したデータが現実を裏付けています。

▶ 自社のアナリティクスを信頼している B2B マーケ意思決定者:36%
▶ 営業オペレーションで同様の意思決定者:43%
▶ プロダクトマーケティングで「GTM 戦略が定期的に伝達されている」と感じる人:50%

これらの数値、Phase 3 の不在が引き起こしている構造的な課題だと思います。

Revenue Operations の「本質」

ここで、Forrester が言う Revenue Operations が日本でどう受け取られているか、私の日頃の体験からはこう感じています。

まず大前提として、Revenue Operations(RevOps)という概念自体が、日本ではまだ広く浸透してい状況。MAやCRMを早くから導入している一部のSaaS企業や外資系企業を中心に、ここ数年でようやく耳にすることが増えてきた、という段階です。

そして日本の多くのB2B企業では、そもそも RevOps に相当する水平機能が組織に存在しません。「営業企画」「営業推進」と呼ばれる部署が部分的に近い役割を持つ場合もありますが、それは営業に閉じた機能であって、マーケとカスタマーサクセスまで含めた水平統合機能としては成立していないことがほとんどです。

Forrester の Framework で位置付けられている RevOps はこうです。

Revenue Operations とは、マーケティング・営業・カスタマーサクセスを横断して、レベニュー創出プロセス全体を運営する水平機能

つまり、Revenue Operations leader は「営業企画」や「営業推進」などではなく、「収益創出プロセスの設計者・運営者・改善者」 になります。

「うちには RevOps はない」と言われる日本のB2B企業がほとんどなのは、語の認知度の問題というよりも、この水平機能そのものが組織に存在していないためです。

日本企業の Phase 3 を、誰が担うのか

ここからが、私が書きたかったテーマでもあります。

Phase 3 を担うのは Revenue Operations leader。 では日本企業で、Revenue Operations leader を担えるのは誰か?

本来であれば、中間管理職こそが、その役回りを担えるはずなんですよね。経営層と現場の間に立つ立場として、戦略を実行に翻訳する役割として。

ただし、実際の現場を見ていると、各事業部の管理職がそれぞれの最適解でバラバラに動いていることが多い。結果、Phase 3 を埋めるどころか、Phase 3 不在を加速させる存在になっていることも少なくありません。

さらに、Revenue Operations leader としてその橋を機能させるには、

  • 経営の視点(unit economics、収益構造の理解)

  • 営業の現場感覚(quota の重み、商談の機微)

  • マーケの戦略(demand gen と brand の違い)

  • カスタマーサクセスの顧客理解(NRR、解約予兆)

これらを全部わかっているジェネラリストである必要があります。

それだけのキャリアを経験してきた人材が、はたして自社にいるのか?

先進国アメリカではどうやって、そのキャリアを積むのか

アメリカではこういうキャリアを、どうやって積むんだろう?

整理してみると、米国では3つの構造的な仕掛けがありました。

① 転職前提の雇用慣行

B2B SaaS 業界では平均勤続年数 2〜3年が一般的で、10年で 3〜5社経験は珍しくない。 必然的に複数機能を経験する人材が量産される。

② ロールの専門名称が業界標準として確立

「Sales Operations Manager」「Marketing Operations Director」「Revenue Operations Lead」など、職務名そのものが業界として標準化されています。

米国 LinkedIn では「Revenue Operations」関連職の求人が常時数千件単位で募集されているのに対し、日本では限定的。

つまり、仕事として確立されているからこそ、人材も育つ構造です。

③ B2B SaaS 業界の存在

Salesforce、HubSpot、Snowflake、MongoDB、Stripe、Notion ─ 米国の B2B SaaS 業界そのものが、GTM を機能横断で設計しないと成立しないビジネスモデル(CAC、LTV、NRR で経営判断する世界)を採用しています。

つまり、業界そのものが RevOps を必須機能として要求している。 だから、RevOps Leader の育成インフラが業界全体で整っています。

では日本はどうか

3つの米国の構造を、日本の現実と並べてみると 

① 転職文化は変わりつつあるが、まだ少数派

最近は転職率が上がってきているとはいえ、まだ「同じ会社で長期キャリア」が多数派。 だから「複数機能を経験した人材」が自然発生しにくい。

② 主産業は製造業 ─ B2B SaaS 的な思想が根付いていない

日本の主たる産業である製造業には、そもそも B2B SaaS 的な思想 ─ 収益創出を機能横断で設計するという発想 ─ が根付いていません。

製造業の B2B では、いまも「営業が顧客を訪問し、技術が製品仕様を説明する」モデルが中心です。それは悪いことではないし、B2Bプロダクトは複雑性、専門性、高価格帯ということもありクロージングは営業が中心であることは間違いない が、Connected GTM が前提とする「マーケ・営業・CSが一つの収益プロセスとして連携する」という発想とは構造が異なります。

③ そもそもマーケティング部門が独立して存在しない

これが、私が現場で一番強く感じることです。

多くの日本のB2B企業ではそもそも「マーケティング部」という独立した部署が限定的で、あったとしても実態は「販促」「展示会担当」「広報」止まり。

戦略レイヤーまで担うマーケティング部門が組織図にない以上、「マーケの戦略」も「営業の現場感覚」も「CS の顧客理解」も全部わかっているジェネラリストが育つ土壌そのものが欠けている、と私は見ています。

それでも、日本のB2B企業はどうするのか

それだけのキャリアを経験してきた人材が、はたして自社にいるのか。 いないとすれば、どこから連れてくるのか、どう育てるのか。

正直、ここが日本企業にとって一番のボトルネックなのではないか、と私は感じています。

現実的な選択肢はこのようなものが思い浮かびます。

選択肢1:外資系経験者を中途採用

最も即効性がある。Salesforce、Adobe、HubSpot、Marketo、Snowflake、Tableau 等(メジャーブランドの例ですが)の日本法人で5〜10年経験した人材を中途採用する。

ただし、「ジェネラリスト × 経営対話力」を持つ人材は極めて少なく、市場価値も高い。

選択肢2:MBA 取得者を選別採用

戦略 + 財務 + マーケを履修した MBA 取得者を、ジュニア RevOps として採用→数年で育成。

選択肢3:内部育成(最も時間がかかる)

「営業企画」「営業推進」「DX 推進」のリーダーに、マーケと CS のローテーション経験を積ませる。5〜10年単位の取り組み。

選択肢4:外部パートナーと契約(フラクショナル CRO)

米国では Fractional CRO(業務委託型の CRO/RevOps Leader)が確立されつつあります。日本でも今後出てくる可能性が高い形態です。

おわりに ─ Connected GTM は「人材戦略」と一体である

改めて。

Connected GTM Framework は、ツールでもプロセスでもなく、人材戦略と一体で考えるべき経営課題だということ。

Phase 3 を担える人材を、組織のどこに置き、どう育てるか。 これが定まらない限り、Connected GTM はいくら設計しても「絵に描いた餅」で終わってしまう。

逆に言えば、この人材を確保・育成できる経営判断ができる日本のB2B企業は、米国の試行錯誤を10年遅れで追いかける必要はなく、一気に世界の最前線に並ぶポテンシャルを持っている、ということでもあります。

GTM Singularity 時代において、日本のB2B企業が選べる第3の道 ─ Connected GTM を、日本の組織文化に合わせて翻案し、現場で実装する道筋を、本シリーズの後続記事で引き続き解説していきます。


よくある質問(FAQ)

Q1. Connected GTM Framework は、どこで初めて公開されましたか?

A. 2026年4月の Forrester B2B Summit North America にて、VP・Principal Analyst の Katie Fabiszak、Principal Analyst の Rick Bradberry らが登壇したセッションで初公開されました。

Q2. Connected GTM Framework と GTM Singularity の関係は?

A. GTM Singularity が「問題提起」Connected GTM Framework が「実装方法」 という関係です。GTM Singularity が示した5つの構造的圧力(マクロ経済の不確実性/リモート勤務/購買グループ肥大化/買い手の自己完結化/販売サイクル長期化)に、組織として向き合うための設計図が Connected GTM Framework です。

Q3. 5つのフェーズの中で、最も重要なのはどのフェーズですか?

A. Phase 3(execution requirements / 実行要件設計) です。多くの組織がこのフェーズをスキップした結果、戦略と実行の間に断絶が生まれ、GTM が機能しなくなっています。Phase 3 は Connected GTM Framework のボトルネックであり、Revenue Operations の介入が最も効くフェーズでもあります。

Q4. Revenue Operations を担う組織はどんな組織ですか?

A. Revenue Operations は、マーケティング・営業・カスタマーサクセスを横断して、レベニュー創出プロセス全体の設計・運営・最適化を担う水平機能です。日本でよく見られる「営業企画」「営業推進」「情報システム部門」とは異なり、部門横断で水平に統合された機能を持ちます。Connected GTM Framework では、Phase 3〜Phase 5 の筆頭責任者として位置付けられています。

Q5. なぜ日本では Revenue Operations leader 人材が少ないのですか?

A. 構造的に3つの要因があると考えています。(1) 終身雇用残存により複数機能を経験するキャリアパスが少ない、(2) 主産業の製造業に B2B SaaS 的な機能横断の発想が根付いていない、(3) そもそもマーケティング部門が独立していないか、存在しても「販促」レベルに留まっており、戦略レイヤーまで担えるジェネラリストが育つ土壌が欠けている、という3点です。

Q6. 中小規模の B2B 企業でも、Connected GTM Framework は適用できますか?

A. はい。むしろ中小規模の企業の方が、部門間の壁が薄く、Connected な状態を作りやすい場合もあります。重要なのは、5つのフェーズすべてを大規模に運営することではなく、Phase 3(戦略を実行可能なオペレーションに落とし込む層)を明示的に組織内に作ることです。中小企業でも、Revenue Operations 機能を1名から始められます。

Q7. Connected GTM Framework の導入は、どのくらいの期間で進めるべきですか?

A. 状況によりますが、典型的には 3〜6ヶ月で診断+Phase 3 の確立、12ヶ月でクロスファンクショナル・ケイデンスの定着、18ヶ月で Phase 5 の運営化 が現実的なロードマップです。トップマネジメントの強力なコミットメントがあれば、より短期間での移行も可能です。


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著者プロフィール

内村 裕香 / 株式会社ベネクロ 代表取締役

  • BtoBマーケティング・RevOps コンサルタント

  • Adobe Marketer of the Year 2020 受賞

  • Forrester B2B Summit North America 2026 Certified(Activating the Modern GTM)

  • MOps / RevOps 専門領域 10年超

世界最前線の B2B マーケティングの知見を、単なる翻訳に留めず、日本企業の実情に合わせて翻案し、組織で実際に実行できる状態に落とし込むことを使命としています。

▶ Webサイト:benecro.co.jp
▶ ナレッジセンター:benecro.co.jp/resources
▶ LinkedIn:Yuuka Uchimura

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