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ブラックコーヒーに寝返った日

 
いつの間に世の中は無糖派閥が出来上がったんだ?

ほんの数年前まで、私はブラックコーヒーが飲めなかった。炭酸水だって、「甘くないのがどうして美味しいんだ?」と思っていた。

今やどちらも大好きだ。むしろ酎ハイなんて無糖じゃないとキツイ。

これ、いつスイッチ入ったんだろうね。気づけば私の舌は、砂糖からの亡命を果たしていたわけ。

子どもの頃はアンパンマン見てたのに、気づいたら深夜のNHKで淡々と落語を聞くようになってた、みたいな変化だよ。わかる?わからんよね。私もわからん。

そもそも「甘くない派」って、なんか急に増えてないか。コンビニの棚もそうだ。レモン酎ハイコーナー、半分以上が「無糖」だよ。

無糖、糖質ゼロ、人工甘味料不使用。もうここまで来たら、次は「存在感ゼロ」ってラベル貼られる日も近いんじゃないかって思う。

でね、この甘くないブーム、単なる味覚の話じゃない気がするんだよ。ブラックコーヒーって、「大人」感があるじゃない。無糖炭酸水も、「私は喉を洗浄してます」みたいな清潔アピールができる。

つまり、無糖ってのは味覚じゃなくて立場なんだよね。

「私、もう甘さに頼らなくてもやっていけますから」っていう、一種のマウント。小学生のとき、急にシャーペン使いだして「鉛筆?あれは赤ちゃん用だろ」って言ってたやつと同じ。

でもさ、私も含めて、この無糖派閥って、どこかで過去の自分を裏切ってる気がするんだ。
「ジュースうめぇ!」って言ってたあの頃の舌を、何も言わず置き去りにしてきたわけでしょ。学生時代のバンド仲間を忘れて、静かに株の話をし始めた同窓会みたいなもんだ。

それがいいか悪いかは置いとくけど、少なくとも言えるのは、味覚の変化って、好みの問題じゃなくて、生き方の更新なんだよね。

甘くない方を選ぶとき、人は「刺激」より「持続」を選んでる。ブラックコーヒーは甘くない。でも、その苦さを受け止める自分は、ちょっとだけ誇らしい。

ってわけで、今日も無糖の炭酸を開ける。しゅわっと立ち上る泡の向こうに、昔の自分が「お前、変わったな」って笑ってる気がするんだよ。

でもまあ、あいつもいつかこっち側に来るって。きっとね。
 
 
[画像協力:さちわ]

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