或る晩のとんでもない人たちとの出会い
(……どこだ、ここは?)
酔いすぎた。まただ。大阪・梅田の東通り商店街の外れ。8人入れば満席になるいい感じの料理屋でともだちと飲んでいました。
日本酒を飲み始めたあたりまでは覚えている。のだけれど、そこからの記憶がない。ああ、またやってしまった。
まず、気がついた場所。ここがどこか、さっぱりとわからない。
隣りに気まずくなるような人が寝ているわけではないんです。そうじゃなくて“どこだ?ここは?”なところに来てしまっているんです。
なんだか昭和より古そうな建物がならぶ路地。人通りはない。うわ、こっわ。
飲みすぎたせいで吐きそうになりながらも、灯りがともった店があったので入ってみる。飲み屋でしょうね。そんな状況で店に入るなんて、私のやばい酩酊状態を察してくださいな。
はい。店に入っても店員さんはガン無視です。というかコスプレ居酒屋? 古臭い服だ。大正風居酒屋かしら。客は一組だけしかない。
フラフラでしんどいから適当な席に座ると、横の男性二人組の会話が聞こえてくる。あんまり記憶に自信がないから、細部は適当です。
「……アキさん、ダメだって。人妻に手を出すと犯罪なんだから」
「そういうリュウさんもモテるじゃん。またちょっかいかけてんでしょ? まぁ、それよりどうなのよ、執筆は?」
お、執筆だって? こりゃ文筆家さんだ。お酒が残る頭で聞き耳をたてます。
「無理。長編は私には無理。先生は誉めてくださったんだけどね、書けない」
「まぁ、そんな時期もあるもんだよ。リュウさん、今はあれだよ、闇のなかってことで」
「闇?」
「そうそう。闇があれば光もあるもんだ」
「……アキさん、“光のない闇もある”んだよ」
「なんだよ、リュウさん。また闇堕ち中なの?」
「またとはなんですか。アキさん、“ぼんやりとした不安”だよ」
え、これ、このフレーズ。……うそ、まさか。
「芥川“龍”之介とあろうものが、なにをいうんですか」
「それはそうと、人妻はいけませんよ、北原白“秋”先生」
(……ゃくさん。お客さん、お客さんっ!」
ハッと気がつくと梅田駅のベンチで駅員さんに起こされました。あれ? 酔い潰れて寝てた? ここ、どこだ?
夢か現か。文豪は女癖が悪いし、書くのに悩んでいる。ヤスでした。
サロン開始から966日
830字※2分05秒で読めます
[写真協力:さちわ]
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能登清文さん
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