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失恋したので、フジロックにいくことにした。#3 父と達郎とわたし

エッセイスト、青 石です。
フジロックまであと1ヵ月。依然として宿無しである。

▼初めましての方、前回までのあらすじはこちらから

#3 プレイリスト

今日はフジロック行きを決めたアーティストについて語らせてほしい。私の人生の節目に寄り添ってくれた人だ。個人的な話になるが、フジロッカー1人1人にストーリーがあるはず。コーヒーやオロポ片手にどうか付き合ってほしい。


🎤山下達郎🎹

朝目覚めると、リビングは音楽で満たされていた

典型的な昭和の家庭で、父は平日家に居なかった。週末だけが唯一家族で過ごす時間。リビングにはレコードプレーヤーと天井まで届く飴色の本棚。二階に子供部屋があったが、薄明るくなってくると一階からの音で空気が震えた。父がお気に入りの交響曲をかけている。階段を降りる時に壁に手をやると、振動がビリビリと伝わってきたものだ。

サンソンを聴くためにドライブする家族

週末だけの家族の日には、イベントをてんこ盛りにつめ込んで遠出した。どこに行くかは知らされない。半日かけてのドライブのお供はラジオだった。

土曜なら福山雅治のSUZUKI Talking F.M.(福山雅治 福のラジオ)からの、松任谷由実 サウンドアドベンチャー(こちらも終わってしまった)。

日曜なら14時からのサンデー・ソングブック|山下達郎を聴きながら走り、17時からのNISSAN あ、安部礼司がかかる頃にはウトウトして帰路につく。そんな子供時代を過ごした。

両親は厳しく20時にはテレビを切られてしまうため、当時流行していたドラマは軒並み見逃している。そんな小学生だったので、唯一の音楽の入り口はサンデー・ソングブックだった。飄々としていて辛口、文句ばっかり言っているクセのあるおじさん。でも歌いだすと文句のつけようがない。そんな達郎に10歳の私は年甲斐もなく魅せられていった。

同じアルバムを三度も買いなおした

父のCDラックにはクラシック・80年代邦楽から最新の洋楽まで揃っていた。だから私が初めて達郎のアルバム「OPUSを買ったのは一人暮らしを始めた新卒の頃である。渋谷のタワレコで買った。音楽を聴くにはまだハードが必要な時代、自室のCDコンポのトレイにそっとアルバムをはめ込んだ瞬間、大人になったなと感じたものだ。

その後転職をし、部屋が手狭になるためほとんどの所持品を手放した。持っていたCDも全てブックオフに持ち込んだ。一度目のアルバムとの別れはこの時だ。

時が経ち、妊娠・出産を経て新居へ引っ越しをした。
コンポはスマホのアプリに変わったけれど、達郎は音にこだわるから各種ストリーミングサービスでは聴くことができない。ここで二度目のOPUSを買いなおした。アルバムはパソコンの中にダウンロードして、今度こそ離れないようにした。

2年前、パートナーからのDVから逃げるため、母子シェルターに住まいを移した。持ち物は貴重品と子どものおもちゃだけ。自分の物は何も持ち出せなかった。また達郎を置いてきてしまった。色々なものを失った喪失感で、しばらく音楽を聴くことができなかった。

去年、三枚目のOPUSを注文した。何度手にしてもうっとりする。気持ちのよいブルーのジャケット、ニヒルに笑う達郎のイラスト、手に持った時の満足感は3枚組というぶ厚さからくるものもある。おかえり。やっと帰って来たね。

ちゃんと購入回数 2回になっている。


手放しても、また拾い上げればいい

10回の引っ越しを経て思うことがある。どんなに大切なものでも飽きてしまう時はあるし、無くすこともある。人は毎日変わっていくものだから、仕方ないのだ。新しい生活に順応していけば、興味関心が変わるのも当然だ。そんな時は「ありがとう。またね。」と言って手放したらいい。

あなたにとって本当に必要な時に、また戻ってくるはず。手放すより悲しい事は、もう必要としていないのに情だけで取っておき押し入れの中の開かずの段ボールに押し込んでおくこと。そんな苦しい思いをさせるなら、もっと大切にしてくれる人の所に渡したらいい。物も、人も循環していくから出会いがある。

とどまるな、流れろ。



アルバム:OPUS ~ALL TIME BEST 1975-2012~ 山下達郎

参考リンク:わたしの好きなラジオ番組たち

サンデー・ソングブック|山下達郎 OFFICIAL SITE
松任谷由実のYuming Chord
福山雅治 福のラジオ
NISSAN あ、安部礼司~beyond the average
桑田佳祐のやさしい夜遊び
エフエムレインボー -TOKYO FM 80.0MHz

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青 石(せい せき)/ 文筆家・校正者・イラストレーター この記事を気に入ってくれたら、よければチップお願いします。一口100円から、何度でもOKです。いただいたお金は記事作成に使わせていただきます。