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都市の水はどこへ行くのか


雨が都市の姿を映し出すとき

この数日、メトロマニラでは大雨が続き、妻とともに自宅で過ごしています。家の中にいても、ニュースや映像を通じて被害の大きさが伝わってきます。道路は水路のようになり、茶色く濁った水が家屋に流れ込み、避難所となった公立学校へ、荷物を抱え、子どもの手を引きながら向かう家族の姿が映し出されています。場所によっては、大人が膝上まで水につかって歩いています。冠水した道路を思いがけず現れた遊び場のようにして、泳いでいる子どもたちの姿を目にすることもあります。

こうした光景からは、困難な状況にも対応しようとする人々のたくましさが伝わってきます。そうせざるを得ないからこそ、人は工夫し、環境に適応します。しかし、街にあふれた水は、見た目以上に危険です。土砂や雨水だけでなく、生活排水、排水路からあふれた汚水、ごみ、油、動物の尿、さらにはセプティックタンクから流れ出した汚物まで混じっている可能性があります。大都市の冠水した道路を流れる水は、雨だけで生まれた一時的な川ではありません。

今回の洪水は広い範囲に及んでいます。2026年8月10日付の報道によると、ケソン市、マリキナ市、パシッグ市、モンテンルパ市をはじめ、メトロマニラ各地で住民が避難しました。パシッグ市では被災した家族のために避難所が開設され、マリキナ市やケソン市でも数百世帯が自宅を離れています。自宅にとどまれる人にとって、外出を控えることは身を守るための予防策です。しかし、低地に暮らす人々にとっては、避難所や食料、医薬品、あるいは職場へ向かうために、冠水した道路を進むしかない場合もあります。

洪水は通常、降雨と排水の問題として語られます。水路がごみで詰まっていなかったか、排水ポンプは正常に稼働していたか、河川の浚渫は行われていたか、治水事業は計画どおり完了していたかといった点が問われます。どれも欠かせない問いですが、都市の水をめぐる仕組みは、それだけでは捉えきれません。すべての住宅や建物の地下から、もう一つの問いが浮かび上がります。トイレを流し、食器を洗い、シャワーを浴び、洗濯をした後、その水はどこへ行くのでしょうか。

晴れた日には、その行き先を意識することはほとんどありません。排水は部屋の外へ流れ去り、日常生活はそのまま続いていきます。しかし、大雨が降ると、普段は目に入らない排水の仕組みが、地上に姿を現します。排水路は満水になり、川の水位は上昇し、セプティックタンクには過剰な負荷がかかります。そして、家の中と道路、水路を隔てていた境目が崩れていきます。洪水によって明らかになるのは、都市が雨水をどう処理しているかだけではありません。住民が毎日の暮らしの中で流している水を、都市がどのように受け止めているかも映し出されるのです。

姿を隠すように造られたインフラ

衛生インフラは、正常に機能しているときほど、その存在を意識されません。蛇口から清潔な水が出て、使い終えた水は排水管へ流れていきます。この二つの出来事の間には、トンネル、ポンプ、処理槽、検査施設、法規制、専門知識を持つ作業員、そして多額の公的支出によって支えられた巨大な設備があります。その大部分は地下に埋められ、施設の内部に収められるか、利用する地域から離れた場所に設置されています。

都市が昔から給水と排水を分けていたわけではありません。19世紀のロンドンでは、水洗トイレの普及によって、汚水溜めや未整備の排水路へ流れ込む排泄物の量が増えていきました。やがてテムズ川は、都市で最も大きな屋外下水道となりました。1858年の「大悪臭」では、あまりの悪臭に、英国議会も下水を遠い場所だけの問題として扱えなくなりました。この危機をきっかけに、ジョゼフ・バザルジェットによる遮集式下水道が建設されました。19世紀最大級の土木事業の一つです。ロンドン科学博物館によるロンドンの衛生史には、成長を続ける都市が川に廃棄物を流し続け、その弊害がついに政治の中枢にまで及んだ経緯が記されています。

同じような経過は、その後、多くの国で繰り返されました。まず都市人口が増加し、水の使用量が伸び、水洗トイレが普及し、舗装された土地が広がります。しかし、下水道の整備は後回しになりがちです。建設には多額の費用がかかり、工事が日常生活や交通に影響するうえ、先送りしてもすぐには問題が見えないからです。上水道の管を敷設すれば、水が届くという分かりやすい恩恵が生まれます。一方、下水管が運び去るのは、人々がなるべく見たくないものです。そのため政府にとっては、使用後の水を受け入れる同じくらい重要な設備を整えるよりも、給水網を広げるほうが進めやすい傾向があります。

雨水排水と下水道は、担う役割も異なります。雨水排水路は、道路や屋根に降った雨を流すための設備です。汚水を扱う下水道には、トイレ、台所、浴室、事業所、公共施設などから出る排水が流れ込みます。下水処理場では、受け入れた汚水から固形物、有機汚濁物質、病原体、そのほかの汚染物質を減らしたうえで、処理水を放流または再利用します。

雨水と汚水を別々の管路で運ぶ都市もあれば、途中まで同じ設備を使う合流式下水道を採用している都市もあります。合流式は通常の状況であれば機能しますが、激しい雨が降ると処理能力を超えることがあります。現在のロンドンも、過去から受け継いだこの問題を抱えています。英国議会が2026年に公表した調査報告書によると、大雨の際には下水が建物内へ逆流するのを防ぐため、雨水と汚水が混じった水を雨水吐き口から河川などへ放流します。19世紀に公衆衛生を大きく改善した土木設備であっても、人口が増え、舗装面積が広がり、降雨の条件が変化すれば、十分に対応できなくなることがあります。

シンガポールは、別の方向性を示しています。大深度トンネル下水道システム(Deep Tunnel Sewerage System)は、広大な地下管路網を通じて下水を集め、重力を利用して集約型の水再生施設へ運びます。シンガポールの水道行政を担う公益事業庁(PUB)は、この設備を下水の収集、処理、再生、放流を担う全長206キロメートルのネットワークと説明しています。同じ地域にある都市の事例として注目に値しますが、その背景には、数十年にわたる一貫した土地利用計画、集中的な行政運営、継続的な投資があります。メトロマニラは、これとは異なる条件のもとで発展してきました。複数の市や行政機関、住宅地、民間開発、地域社会が並存し、都市圏全体に下水道が届くよりも早く市街地が拡大しました。

この違いは、一方の住民が清潔さを理解し、もう一方が理解していないという証拠ではありません。衛生を都市圏全体に行き渡る一つの公共サービスとして整備すれば、何が可能になるのかを示しています。管路、処理施設、各世帯との接続、維持管理、法規制の執行まで、すべてが一つの流れとして機能しなければなりません。どこか一つが欠けていても、晴れた日には気づかれないかもしれません。しかし、汚染された川や不衛生な洪水は、やがて欠けている部分を明らかにします。

日本がよみがえらせた川

生活排水の問題を考えるうえで、日本にはより身近な比較対象があります。現在、日本の都市といえば、きれいな川や信頼性の高い公共インフラを思い浮かべる人が少なくありません。しかし、そのイメージの陰で、ほんの数十年前まで深刻に汚染されていた河川があったことは見過ごされがちです。

奈良県と大阪府を流れる大和川は、その代表的な事例です。1950年代以降、急速な住宅開発によって流域人口が大幅に増加しました。しかし、家庭で使われる水の量が増える一方で、下水道の整備は追いつきませんでした。台所、浴室、洗濯、トイレから流れ出る生活排水によって、大和川とその支流に流れ込む有機物が増加しました。奈良県の推計によると、大和川の汚濁負荷のおよそ70%は生活排水によるものでした。

1970年には、大和川本流の8地点で測定された生物化学的酸素要求量(BOD)の平均値が、1リットル当たり31.6ミリグラムに達しました。BODは、水中の有機物を微生物が分解するときに必要とする酸素の量を示す指標です。数値が高いほど、有機物の分解によって多くの酸素が消費され、魚やそのほかの水生生物が必要とする酸素が不足していることを意味します。大和川は、都市化の進行が生物学的な数値として表れる川になっていました。

大和川の水質回復には、数十年を要しました。下水道網が拡張され、各家庭には下水道への接続が促されました。流域の下水処理施設も建設、改良され、事業所からの排水に対する規制も強化されました。公共下水道の整備が難しい地域では、合併処理浄化槽が導入されました。河川施設の整備や地域住民の取り組みも水質改善に貢献しましたが、最も重要だったのは、生活排水が川へ流れ込む前の段階で処理することでした。

2015年までに、大和川のBODは1リットル当たり2.6ミリグラムまで低下しました。汚染が最も深刻だった時期のおよそ9分の1です。川では天然のアユが再び確認され、長く途絶えていた川渡り神事も復活しました。国土交通省大和川河川事務所は、この水質回復の歩みを、国の機関、府県、市町村、住民、事業者が協力した成果として記録しています。

水質の改善は、生活排水を処理するインフラの普及と歩調を合わせて進みました。2015年度までに、大和川流域の下水道普及率は86.9%に達しました。その後も行政機関は、各家庭の下水道への接続、浄化槽の適正な管理、処理施設の安定した運転、水質改善が遅れている支流への重点的な対策を進めました。下水道整備と大和川の水質に関する国土交通省の資料からも、処理施設を一つ建設するだけでは十分でなかったことが分かります。流域全体で生活排水を集め、運び、処理し、小さな水路や支流へ流れ込ませない仕組みが必要でした。

大和川の事例を、そのままメトロマニラに当てはめることはできません。日本とフィリピンでは、行政制度、財政力、土地利用、都市統治のあり方が異なります。しかし、大和川の歩みからは、より根本的な事実が見えてきます。深刻に汚染された都市河川が、永久に汚れたままであるとは限りません。生活排水を各家庭だけの問題として扱うのをやめ、社会全体で支える信頼性の高い公共システムを整えれば、川の状態は変えられるのです。

家の下に埋められたタンク

「セプティックタンク」という言葉は、日本とフィリピンを比較する際に混乱を招くことがあります。両国とも、公共下水道が整備されていない地域では地下の処理設備を利用しています。しかし、現在の日本で使われている浄化槽と、フィリピンの一般的なセプティックタンクでは、処理できる水の範囲も処理能力も異なります。

現在の合併処理浄化槽は、トイレから出る汚水だけでなく、台所、浴室、洗濯などから出る生活雑排水も受け入れます。曝気を含む生物処理によって汚水を浄化し、処理水を放流します。環境省によると、合併処理浄化槽は、放流水のBODを1リットル当たり20ミリグラム以下に抑えることができます。一般家庭から出る生活排水について、公共下水道に近い処理能力を目指した設備です。

一方、一般的なセプティックタンクは、主に汚水を沈殿させ、一部を分解するための槽です。固形物は底に沈み、油脂や比重の軽い物質は表面に浮かびます。槽内では、酸素を使わない嫌気性細菌が有機物の一部を分解します。液体は排出口から槽外へ流れ続け、本来であれば地中浸透設備や別の処理装置へ送られます。フィリピン衛生法典にも、セプティックタンクから出る水は、地下浸透処理設備へ流すか、さらに浄化しなければならないと定められています。つまり、セプティックタンクは処理工程の一段階であり、それだけで処理が完結するわけではありません。

この水の流れを理解すると、タンクが液体で満杯になったように見えないまま、何年も使い続けられる理由が分かります。家庭で使用した水をすべて内部にためる密閉容器ではなく、水が流れ込むと同時に流れ出る設備だからです。一方、汚泥は槽内に残り、少しずつ蓄積します。汚泥の層が厚くなるほど、沈殿に使える空間は狭くなります。その結果、汚水が短時間で通過するようになり、固形物が流出水とともに外へ出ることもあります。タンクの処理能力も次第に低下していきます。

汚泥の引き抜きが数年に一度であることも、セプティックタンクの数に比べてバキュームカーを見かける機会が少ない理由です。適切な汚泥引き抜きの間隔は、数週間ではなく数年単位で考えられます。マニラ・ウォーターは現在、下水道未整備地域で5年から7年ごとの引き抜きを実施しており、2024年には13万3,435基のセプティックタンクから汚泥を回収したと報告しています。マイニラッドも同様に、下水道網の対象外にある住宅の利用者に対し、5年から7年ごとに追加料金なしでタンクの清掃を行っています。作業はバランガイごとに日程を決めて進められ、一つの住宅での作業は短時間で終わる場合があります。そのため、周囲に多くのセプティックタンクがあっても、住民が回収作業を目にする機会は多くありません。

しかし、さらに深刻なのは、決められた間隔で汚泥を引き抜いていないタンクが数多く存在することです。フィリピンの低所得世帯における衛生環境を扱った世界銀行支援の調査では、セプティックタンクは一般に3年から5年ごとの汚泥引き抜きを想定して設計されていると説明されています。同時に、実際の構造には大きなばらつきがあることも確認されました。調査対象となったタンクの中には、底部が密閉されていないもの、壁が不十分なもの、適切な排出口が設けられていないものもありました。別の業界調査では、自宅にセプティックタンクを持つ回答者の約半数が、過去5年間に一度も、あるいはこれまで一度も汚泥を引き抜いたことがないと答えています。

このようなタンクから汚水があふれていなくても、問題なく処理できているとは限りません。目に見える異常がないのは、汚水が漏れ出しているためかもしれません。液体が周囲の土壌や地下水に入り込んだり、雨水排水路や近くの小川へ流れ込んだりしている可能性があります。トイレの流れが悪くなり、悪臭が発生し、汚水が逆流してから、初めて民間業者を呼ぶ所有者もいます。また、タンクが車庫の進入路や住宅の増築部分、そのほかの構造物の下に造られ、適切な点検口がない場合には、汚泥の引き抜き自体が難しくなります。

安全な衛生環境を確保するには、住宅から汚泥を取り除くだけでは足りません。バキュームカーは、回収した汚泥をセプティックタンク汚泥処理施設まで運ぶ必要があります。処理施設では病原体を除去し、残った固形物も適切に処理しなければなりません。最終的な処分まで監視することも必要です。汚泥を回収しても、その後に運河や未処理の廃棄場所へ捨てるのであれば、汚染を別の場所へ移しただけにすぎません。

したがって、バキュームカーをめったに見かけないという事実だけでは、セプティックタンクが適切に管理されているかどうかは判断できません。正当な理由で回収間隔が長い場合もあれば、何年にもわたって放置されている場合もあります。重要なのは、タンクが水密構造になっているか、点検や清掃ができる場所にあるか、世帯規模に合った容量を備えているか、定期的に汚泥が引き抜かれているか、そして流出水が安全な処理先へ送られているかという点です。

一つの大都市圏に併存する複数の衛生システム

メトロマニラは一つの都市であるかのように語られますが、生活排水は地区によって異なる仕組みで処理されています。計画的に開発されたビジネス地区、古い分譲住宅地、人口密度の高い一般住宅地、河川や排水路沿いの非正規居住地区を比べると、その違いが見えてきます。

公共下水道は、今も都市圏全体を網羅するにはほど遠い状況です。マニラ・ウォーターによると、2024年時点で東部地区の下水道普及率は33%でした。同社は2047年までに88%へ引き上げ、残る地域にはセプティックタンクの汚泥引き抜きなどの衛生サービスを提供する計画です。マイニラッドも、西部地区の下水道普及率が2026年第1四半期に36.9%まで上昇したと報告しています。

こうした数字は、注意して読む必要があります。「生活排水処理の普及率」や「下水道・衛生サービスの普及率」には、下水管へ接続している世帯だけでなく、セプティックタンクの清掃サービスを利用できる世帯も含まれる場合があります。両者を合計した割合が高くても、同じ割合の生活排水が下水管を通って処理施設へ運ばれているわけではありません。メトロマニラの多くの地域では、各敷地の地下に設置されたタンクに汚水を流し、数年ごとに汚泥を引き抜く方式が続いています。タンクから流れ出る液体をどこへ送るのかという問題も残されています。

大規模なコンドミニアムでは、一般住宅用のセプティックタンクに頼ることはできません。一棟の高層住宅に数百戸、場合によっては数千戸が入り、各住戸からトイレ、台所、シャワー、洗濯などの排水が発生するからです。こうした開発では、一般に二つの方式のいずれかが採用されます。地区の下水道に接続し、中央下水処理場へ汚水を送る方式と、建物や開発地区専用の汚水処理施設(STP)を運営する方式です。

ボニファシオ・グローバル・シティ(BGC)は、最初の方式の一例です。新規開発事業の環境関連文書には、建物から出る汚水を下水管へ流し、BGCの中央下水処理場へ送ると記載されています。この下水道網に接続するコンドミニアムにも、ポンプ、貯留槽、油脂の流入を抑える設備、建物内の配管管理などが必要です。ただし、中心となる生物処理は敷地外の処理場で行われます。

一方、建物専用の汚水処理施設を備えるコンドミニアムもあります。処理設備は、地下階、低層部、駐車場階、設備区画などに設置されるのが一般的です。汚水はスクリーン処理と流量調整を経て、生物処理へ送られます。空気を送り込むことで微生物の働きを促し、有機物を分解させます。固形物は沈殿またはろ過によって分離され、処理水は消毒されます。処理水の一部は、トイレの洗浄水、植栽への散水、そのほか飲用を目的としない用途に再利用される場合があります。余分な汚泥は引き抜かれ、別の施設へ運んで処理されます。

建物専用の汚水処理施設は、大型のセプティックタンクではなく、小規模な下水処理場です。稼働には電力、送風機、ポンプ、専門の運転担当者、水質検査、交換部品が必要であり、コンドミニアムの管理費で運営予算を確保しなければなりません。ロビーが美しく管理されていても、数階下にある汚水処理施設の状態までは分かりません。適切な処理を続けるには、居住者の目に触れることがほとんどない場所で、日々の運転と保守管理を確実に行う必要があります。

こうした設備を規制する法制度もあります。2004年フィリピン水質浄化法第8条は、コンドミニアム、分譲住宅地、ホテル、商業施設、病院、公共建築物、一般世帯に対し、独自の処理設備を使用している場合を除き、利用可能な下水道へ既存の汚水管を接続するよう求めています。規制対象となる処理水を放流する施設は、放流許可も取得しなければなりません。環境天然資源省(DENR)の基準では、BOD、浮遊物質、糞便性大腸菌群などの数値が定められています。

しかし、法制度が整っているだけで、適切な処理が保証されるわけではありません。汚水処理施設の能力が建物の規模に対して不足している場合や、想定以上の負荷がかかっている場合もあります。運転管理が不十分だったり、電気料金を抑えるために一時的に停止されたりする可能性もあります。ポンプは故障し、曝気装置は劣化します。建物の承認時に想定された人数を、実際の居住者や利用者が上回ることもあります。処理設備が設置されていることと、必要な基準を満たす処理が常に行われていることは別の問題です。

管理体制の整った大規模施設を離れると、生活排水の処理方法はさらに細分化されます。古い分譲住宅地では、数十年前に造られたセプティックタンクを今も使用している場合があります。台所、浴室、洗濯などから出る生活雑排水が、道路脇の排水路へ直接流されることもあります。人口密度の高い低所得地域では、複数世帯でトイレやタンクを共有している場合があり、標準的な設備を設置する空間すらない住宅もあります。通路が狭いため、バキュームカーが敷地まで入れない地域もあります。河川沿いの居住地区では、地下水位が高く、洪水も繰り返されるため、一般的な地中浸透設備が十分に機能しないことがあります。

生活排水が直接小川へ流れ込む場所では、こうした地域が河川汚染の一因になっていることは確かです。しかし、都市圏全体の汚染責任を低所得地域だけに負わせるべきではありません。正式に建てられた戸建て住宅、集合住宅、レストラン、オフィス、商業施設からも、不完全な処理経路を通じて生活排水が流れ出ています。世界銀行の事業文書に引用された環境天然資源省の過去の推計では、パシッグ川の汚濁負荷の約60%が生活排水によるものとされています。生活排水という区分には、社会階層や自治体の境界を越えて、都市圏全体から出る汚水が含まれます。

川のすぐそばにある住宅から流れ出る汚水は、目に見えます。一方、離れた分譲住宅地から出る汚水は、配管、排水路、エステロ、支流を通り、やがて同じ川へ到達します。パシッグ川が受け入れているのは、川岸に暮らす人々の排水だけではありません。都市圏全体が日々の生活や活動を通じて生み出す排出物が、そこへ流れ込んでいるのです。

水の流れが逆転するとき

雨が長く降り続くと、複数の排水方式が混在する都市の弱点は、さらに大きな危険へと変わります。地面は水を吸収できないほど飽和し、河川の水位が上がり、排水口が放流先の水面より低くなります。水は重力だけでは流れ出せなくなり、ポンプには通常を超える負荷がかかります。停電が発生すれば、最後に残された排水機能まで失われる可能性があります。

道路では、満水になった排水路から開口部やマンホールを通じて水があふれ出します。雨水と汚水の経路が合流または接続している場所では、両方が混じった水が流出することもあります。敷地内では、外から加わる水圧によってトイレの流れが悪くなり、床の排水口から水が逆流する場合があります。逆止弁、水密性のある接続部、正常に稼働するポンプがなければ、通常とは反対の方向へ水が流れ始めます。

セプティックタンクにも、過剰な水の流入による負荷がかかります。洪水や上昇した地下水が、ふた、亀裂、不完全な壁などからタンク内へ入り込む可能性があります。水量が増えると、汚水がタンク内にとどまる時間が短くなり、底にたまった汚泥がかき回されることもあります。タンクから流出した汚水は、すでに冠水している周囲へ広がります。地中浸透設備も水で飽和し、それ以上の液体を受け入れられなくなります。晴れた日には限られた範囲ながら処理できていた設備でも、深刻な洪水の際には、ほとんど処理機能を果たせなくなる場合があります。

冠水した道路の水に何が含まれているかを、見た目だけで判断することはできません。汚染物質の濃度は場所によって異なり、水の移動に伴って変化します。そのため、公衆衛生上は、洪水の水を汚染されているものとして扱います。米国疾病予防管理センター(CDC)は、洪水の水には、人や動物の排泄物、感染症を引き起こす病原体、家庭や工場から出る化学物質、がれき、流されてきた動物などが含まれる可能性があり、感電の危険もあると警告しています。

フィリピンでは、洪水の後にレプトスピラ症への注意が特に呼びかけられます。レプトスピラ症は、下水だけを原因とする病気ではありません。感染した動物、特にネズミなどの尿に含まれる細菌が、水や泥を汚染することで広がります。細菌は、傷口、水に長く浸かってふやけた皮膚、目、鼻、口などから体内へ入る可能性があります。洪水の中で泳ぐと水に触れる範囲と時間が増え、水を飲み込んだり、粘膜が汚染水に触れたりする可能性も高まります。

フィリピン保健省(DOH)は、2026年8月の洪水を受け、公立病院にレプトスピラ症専用窓口を設置し、医師の管理下で行う予防投薬に必要な医薬品を確保するよう指示しました。保健省は、水を介して広がる感染症、混雑した避難所での呼吸器疾患、停滞した水が蚊の繁殖場所となることで増加するデング熱についても警戒を呼びかけています。保健省が今回示した注意事項では、冠水した場所を歩いたり泳いだりすることを避け、どうしても水に入る必要がある場合は長靴を使用し、水に触れた後は石けんと清潔な水ですぐに洗うよう勧めています。汚染水に長時間触れた場合には、医療機関で診察を受けることも重要です。予防目的の抗菌薬を、処方なしに服用してはいけません。

危険にさらされる度合いは、誰にとっても同じではありません。設備の整ったコンドミニアムの上層階に暮らす家族は、ポンプや建物の管理担当者が階下の水に対応している間、室内にとどまることができます。一方、小川のそばにある平屋に暮らす家族は、水がベッドに達する前に避難しなければなりません。避難所、薬局、職場が冠水した道路の向こう側にあれば、住民は水の中を進むほかない場合もあります。長靴が役立つのは、必要な人が実際に所有し、早めに警告を受け、安全に避難できる場所がある場合に限られます。

洪水の中で泳ぐ子どもたちの姿は、フィリピン人の明るさやたくましさを示す光景として紹介されることがあります。しかし、同じ光景は、危険にさらされる度合いの不平等を示すものとも読めます。子どもたちが排水網を造ったわけではありません。処理施設の場所を決めたわけでも、建築計画を承認したわけでも、下水管をどこまで延ばすかを決めたわけでもありません。それでも子どもたちは、そうした決定の積み重ねによって生じた水の中で過ごすことになります。

洪水は、環境問題を人の身体が直接触れる問題へと変えます。河川の汚染は、壁に囲まれた住宅で暮らし、車で移動する人にとって、日常から離れた問題に見えるかもしれません。しかし、汚染された水が道路や住宅へ入り込めば、川はもはや遠く離れた場所にあるものではありません。都市そのものが、その水の中に立つことになるのです。

川の浄化は岸辺から遠く離れた場所で始まる

メトロマニラには、さらに大きな下水処理能力が必要です。しかし、処理場まで届かない汚水を、処理場で浄化することはできません。下水を集める管路を住宅地の中まで延ばし、建物や各世帯を接続する必要があります。ポンプには非常用電源が欠かせません。下水道未整備地域のセプティックタンクは、水密構造と適切な点検口を備え、決められた間隔で汚泥を引き抜ける状態にしなければなりません。回収された汚泥は、別の非正規な投棄場所ではなく、正常に稼働している処理施設へ運ぶ必要があります。

一つの技術だけで、都市圏全体に対応することはできません。人口密度が高く、計画的に開発された地区には、集中型の下水道網と大規模な処理場を整備できます。コンドミニアムが集まる地域では、地区単位の処理システムや、適切な規制のもとで運営される民間の汚水処理施設を利用できます。下水道の早期整備が難しい既成市街地には、共同型または分散型の処理設備が必要になるかもしれません。人口密度の低い地域では、引き続きセプティックタンクを利用できます。ただし、私有地の地下に造られたまま忘れ去られる槽ではなく、管理された一連の衛生サービスに組み込まれていなければなりません。

非正規居住地区には、現地の物理的、社会的な条件に合わせた対策が必要です。設置場所とバキュームカーの進入路を必要とする標準的なタンクを、どちらも確保できない地域に導入することはできません。住宅や土地をめぐる問題への対応を進める間にも、共同トイレ、省スペース型の処理設備、定期回収拠点、安全に利用できる設備、地域住民による運営などを段階的に導入できる可能性があります。ある川岸から住民を移転させても、移転先に安全な衛生設備を用意しなければ、生活上の困難と水質汚染を別の場所へ移すだけです。

雨水排水と下水道の区別も、これまで以上に明確に守る必要があります。技術的に完全な分離が可能な場所では、生活排水の処理に必要な能力を雨水によって消費させるべきではありません。メトロマニラで合流式や遮集管を利用する方式を継続する地域では、現地の降雨量に対応できる設備を設計し、雨季の前に保守点検を行い、越流水が発生した際には状況を監視する必要があります。雨水と汚水が同じ水路を流れる以上、洪水対策と衛生対策を行政上の別々の課題として扱い続けることはできません。

日本の大和川は、発生源からの汚染を長期にわたって抑えることで、何を実現できるかを示しています。シンガポールは、使用後の水を都市圏全体で収集し、再生すべき資源として扱うことの意義を示しています。どちらの事例も、メトロマニラの歴史、財政、人口密度、統治制度、社会的不平等を考慮せず、そのまま導入することはできません。しかし、両者からは、川の再生にどれほど長い取り組みが必要かが分かります。選挙の周期を越えてインフラ整備を継続し、建設と同じように維持管理を重視し、各家庭の接続部から最終的な放流先まで責任を持つことで、川の水質は改善していきます。

外で降り続いている雨も、やがてやみます。道路は乾き、避難した人々は自宅へ戻り、生活排水は再び日常の視界から消えていきます。しかし、日常が戻ったからといって、問題まで消えたと考えるべきではありません。排水路は、その後もどこかへつながっています。住宅の地下にあるタンクには、引き続き汚水が流れ込みます。人々の目に触れない場所で、処理施設は稼働を続けます。あるいは、正常に稼働しないまま放置されます。そして、パシッグ川は、そのすべての結果を受け入れ続けます。

都市が誰の健康を大切にしているかは、すべての人の足元にどのような設備を造るかに表れます。安全な衛生環境は、一部の地区だけに与えられる恩恵ではありません。また、川岸から目に見えるごみを取り除くだけでは、河川の再生は実現しません。すべての家庭から出る生活排水の行き先を、社会全体の課題として引き受けるところから始まります。洪水は、普段は見えない生活排水の経路を目の前に現します。水が引いたあとに残されるのは、その流れを変えるという決断です。

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