見出し画像

『片便り文芸部』 明日の準備


 ナルさんの『片想い文芸部』、今回のお題は「花びら」と「片便り文芸部」です。
#片想い文芸部
#片便り文芸部

 ヘッドライン画像は「sato」さんの画像をお借りしました。どうもありがとうございます。


 今回は「片便り文芸部」です。


「明日の準備」


 もう、一年だね。
 ずっと泣いて、たくさん涙ながして、ハルとフユ君にもずいぶん迷惑かけちゃったよ。アキ君が悪いんだからね、急に死んじゃうんだから。みんなに謝ってよ? ねぇ?
 私はね、ずっとグスグスしてたけど、もう大丈夫。一年も経ったんだもん。大丈夫。
 だから、夢でいいから、たまにはまた話したいな。
 またね。

 - ナツ -

~・~・~・~・~

 アキ君が交通事故でいなくなって一年。親友のハルとフユ君に慰められながら、私はこの一年を過ごしてきた。そして、先日の一周忌法要のお墓参りで、私は手紙を供えさせてもらった。それは、私にとっては一つのケジメで、とても大切な儀式だった。

「…それなのに…」

 私は今、一通の手紙を受け取ったところだ。

「なんで、返事が来るのよぉ~!」

~・~・~・~・~

 えーっと、こんにちは?
 アキですよ。ナツさん、元気? っていうか、元気だよね? うん、元気元気。
 なんつーかですね、オレ的には、死んでねーわけですよ。だからいきなりこんな手紙を貰っても、何をこんな冗談書いてくれてんだコイツは…、って感じにしか、思えんのだよね。
 いや、確かに一年前に事故ったよ? でも普通にかすり傷だったじゃん? っていうか、死んでたら、今ナツの恋人やってるオレって何なの?ってやつですよ。
 …つか、コレ、マジ、冗談で、後で思いっきりダマされた~とかいってバカにされるやつじゃねーよな?
 いやホント、頼むよ? そういうのカンベンなんだし。

 - アキ -

~・~・~・~・~

「なんで返事が届いたのかと申しますと、ワタクシが橋渡しをしているからなのでございます。」
 手紙の陰から、なんか、小さいピエロみたいな服着た派手なシルクハットのチョビヒゲオヤジが出てきて、傘をくるくる回しながら恭しくお辞儀をしている。幻聴と幻覚ではない。…たぶん。
「意味わかんないんだけど。」
「ワタクシ、次元の狭間を越えて、あらゆる可能性の世界を行き来しながら郵便配達をやっております。ま、仕事というか、趣味で勝手にやっている事なんですけれども…」
 小さいオッサン…これが噂に聞く、妖精さん、なのだろうか…?
「このたび、偶然ナツ様の手紙を拾わせていただきまして、これは先方に届けなければいけないと思いまして、アキ様の生きている世界に赴きまして、返事を頂戴してまいりました。」
 それが、この手紙なわけですか…。私の一年間の悲しみを返してほしいフザケタ返事ですよ、コレ。
「いや~、アキ様、ナツ様の手紙を全然信用してくださいませんで、返事を書いていただくのに苦労いたしました。」
 字は、確かにアキ君の字だった。見覚えがある。独特な、下手さなんだよ。

「…っていうか、私の恋人って書いてあるんだけど。」
「ええ、しっかり、交際なさっていましたよ? あちらの世界では。」
「なんで!? 私、全然そういう素振り見せてもらった覚えなかったんだけど。」
「鈍感なだけではないのですかな? …あ、いや、あちらでも恋人になったのは事故後、ということでしたからな。なんでも“かすり傷”程度に取り乱しまくってるナツ様を見ていたら、オレって愛されてんだなぁ~と実感したとかなんとか…。」
「なんという“俺様目線”…。」
 でも結果、少し羨ましく思ってしまったりもするよ…。
「ところでナツ様、アキ様から伝言がございます。」
「何よ?」
「“そっちの世界の俺が悲しませちゃってごめんな。でも、笑ってるナツの方が絶対可愛いから! あと、ハルさんとフユにもヨロシク。仲良くやれよ!って言っといて。”」

~・~・~・~・~

 ふと気が付くと、私はアキ君からの手紙を持って、居間でしゃがんでボケーッとしていた。
 …あれっ? 今、小さいオッサンいたよね!? 何冷静に受け入れてたの!? 私!
 慌ててハルに電話しようとして、手紙に目を落とした。この返事が来たって事は、私の手紙をアキ君が読んだって事だ。…パラレル・ワールドのアキ君だけど。
 変な事は書かなかったはずだけど…、でも、恥ずかしすぎる~! ピンピンして元気に私と付き合ってる世界のアキ君が読んだら、とんだ見当はずれの独りよがりだよ~! このフォローはパラレルの私にしてもらおう、そうしよう。恋人になってんならそのくらい当然だよな、私!

 もう一度、手紙に目を落とす。
「こんなんじゃ、一年で爆上がりしたイメージ、台無しだよ!」
 独特な下手さなんだよ。見覚えがある。確かにアキ君の字だった。
 ケジメだったはずなんだけどなぁ。
 …ちょっとだけ、泣いた。

<終わり>


 ひさしぶりに、ハル・ナツ・アキ・フユの4人に登場してもらいました。そしてこの4人が出てくるという事はハチャメチャカオスなストーリーに…ならなかった!

 どうしてこうなった!?

 いや、最初の段階ではメチャクチャやる予定だったんですよ。小さいオッサンもそのつもりで出したんだし。
 …やっぱ、アレですね。ストーリー中にキャラが事故にあうのはメチャクチャ設定に持っていけるけど、1年前に亡くなっていたって形にすると、どうしてもキャラがしんみりしちゃう。

 …まあ、この4人の話は全部パラレル・ワールドなんで、中にはこんな展開もあるのさってやつなのですかね~。
 (次にこの4人を出す時には、ゼッタイにカオスにしてやる…と誓いながら…)


 最後まで目を通していただき、どうもありがとうございました。