1984年の恋 その1
1984年、僕は学校を卒業して南青山にある広告制作会社に就職した。なぜ僕が採用されたかはわからない。同期の新入社員は僕を含めて3人だった。1人は男性コピーライターのHさん、もう1人は女性デザイナーのMさん。僕はカンプライター兼イラストレーターとして入社した。いざ勤め始めると実際の仕事は学校で習った事などまるで役に立たない上に、そもそもスキル不足とスピード不足で先輩達にしばらくは迷惑のかけっぱなしだった。今のようにPCとフォントとサブスクの素材とイラストレーターやフォトショップがあればなんとなく「デザインらしいものができた」の時代では無かった。カラーコピーすら無い時代でした。更に全ては手作業なので細々とした雑用もかなりあった。ロットリングのペン先洗い(先輩のを含む)、トレスコープでの紙焼き(版下作成に必須)、トレスコープでの当たり取り、画材屋への買出し(インク、トレーシングペーパー、PMパッド、ペーパーセメント、スプレー糊、デザインナイフの刃)などなど。更にはレンタルポジを探して借りてるなんてのもよく先輩に頼まれた。
そんな右往左往する毎日はあっという間に過ぎて、3ヶ月目ぐらいにMさんが急に出社しなくなった。1日ぐらいなら風邪とか体調不良かなと思うけれど、3日目も休むとなると少し気になって「Mさんに何かあったのですか」と総務のお姉さんに聞いてみた。返ってきた答えはMさんのお母さんが急に亡くなって、妹さんが1人で住む関西の実家に帰郷し、すでに他界しているお父さんの代わりに長女として葬儀の準備やらを進めているらしかった。家庭の事情は以前にMさんから聞いていたのと、いつも寂しそうな顔をしているので少し心配になって、事務所の皆んなが帰った後に総務のパーテーションに貼られたメモに書かれたMさんの実家の電話番号を見て夜遅くに電話をした。すぐMさんが電話に出て僕が電話をした事に驚きながらも「大丈夫、電話してくれてありがとう」とだけ話して電話は切れた。
Mさんは10日ぐらい経ってから出社してきた。新人で仕事の遅い僕らはいつも最後まで事務所に残って働いていた。すぐ近くに浅葉克己デザイン室があったけれど周りからは不夜城と呼ばれるほど一日中明かりが付いていた。残業して終電やタクシー帰りは当たり前でそれも許される時代だった。そんな毎日だから2人で表参道駅まで一緒に帰る事が多くなり、プライベートの悩み事や仕事の事などを話しているうちに自然と彼女の事が好きになった。ある土曜の休日出勤日に2人だけが出社した日があった。昼食も一緒に食べ、帰りも一緒に帰った。僕は思い切って彼女に「好きだから付き合って欲しい」と何気なく言った。躊躇なく丁寧に断られた。「そうだよな」と心の中で思いながら「変なこと言ってごめんね、また来週」と表参道駅で別れて地下鉄に乗り込んだ。
その後は何と無く気まずい日が続いたけれど、そんな事でへこたれる僕でも無く相変わらず働いて終電目指して2人は一緒に帰った。ある金曜日の夜、2人とも終電に間に合わずタクシーで帰る事になった。2人の住んでいる所はバラバラで確か彼女は上野毛、僕は上井草だった。別々のタクシーで帰ると勿体無いとの彼女の提案で2人が同乗して上野毛経由で帰る事になった。出発したタクシーの車内で疲れ切っている僕に彼女は想像もしていない事を言った。「私の家に寄ってコーヒーでも飲んでく…」、こんな時間に、何故?余りの突然の言葉にしどろもどろしながら「迷惑だし、今日は疲れてるからいいよ」と断った。彼女の表情は変わらなかった。
しばらくして彼女は会社を辞めた。イギリスに行って勉強したいと。続く
Realign(忘れられない相手)
あなたは私たちの関係を隠し続ける
そして確かに誰にも見抜けない
あなたの嘘のすべてを
昼の光から逃げるように夜を過ごす
私たちはまた引き寄せられる
太陽の光から身を隠し
そしてまたあなたに戻ってし
あなたは私を抱き寄せ、心が読めると言う
どうしてそんなに私を知っているの?
私の心の中まで
私がそうさせたわけじゃないのに
お願いだから頭から消えて
消えてほしい
誰もあなたの代わりにはなれない
私たちの思い出は消せない
過去は残り続ける
消え去ることはない
こんなこと現実じゃない
そう言い聞かせる
この感情を受け入れて
他に比べるものがないほど強い
どこかへ連れ去って
あなたが消えていくのを見たくない
それを口にされるのも聞きたくない
あなたは一人で夜を過ごせる
それでも何とかやっていける
いつものドラマを抱えながら
どこへ行っても
欲しくないと言うくせに
また同じことを繰り返す
この曲の使用ソフト、プラグインをご紹介しておきます。DAWはAbleton Live12 、各トラックのエフェクトやミックスにはWaves、Eventide、FabFilter、Valhalla DSP、ソフトシンセは、Aturia Stage-73、ZENOLOGY、u-he Repro-1。マスタリングにはiZotopeのOZONE、AI作曲サービスは使っておりません。
ここまで読んでいただきお付き合いいただきありがとうございました。
お時間があればぜひお聴きください。ご感想、アドバイスなどがあればお願いいたします。ではまた次の曲で。
Turquoise Bedroom - Realign
