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WITHガチ勢お姉さんの涙が忘れられない。

 こちらは柚樹ログ様主催「アイドルオタクAdvent Calendar 2025」12/5の担当記事になります。


 2025年7月12日。その日映画館は、ナイトクラブと化した――。

 今年6月に全国劇場で公開された『KING OF PRISM-Your Endless Call-み~んなきらめけ!プリズム☆ツアーズ』において、伝説と称されるイベントがまさかの復活を果たした。TRFの名曲を複数カバーし、DJ KOOにインスパイアされたキャラもマジで存在するキンプリシリーズの楽曲を、DJ KOOの生DJプレイと共に楽しめるスペシャルな一時。その名も「帰ってきたDJ Party!!! Performed by DJ KOO」である。

 キンプリ(注:アニメ『KING OF PRISM』を指す)シリーズは過去こうした参加型上映を数々実現させてきたけれど、キンツアの応援上映(60分尺とはいえとんでもなくカロリーを消費する)をやった上で、KOOさんのプレイでおかわりできると聞けば、「行かない」という理由は見当たらない。ライブビューイングの席を見事入手した私は、ペンライトを両手に携え、神の降臨を待ちわびていた。

 と、ここで一つ、お詫びをしなければならない。大げさに“ライブビューイングの席を見事入手した”と書いてはみたものの、私がその日訪れたのは地元のシネコンで、大きな箱ではないにもかかわらず、空席が目立つ有り様だった。実は、当初は都会の劇場の席を確保するべく24時の予約開始に向けてスタンバイしていたのだが、24時直前になって強烈な腹痛に襲われ、トイレから戻る頃には座席はソールドアウト。泣く泣く買った地元の劇場の座席は妥協の産物、と当時思っていたことを、ここに懺悔させてほしい。

 満員ではない客入り。人と人の距離も離れていて、本編の応援上映の盛り上がりも満員続出の劇場には遠く及ばない。たのしいはずなのに、どこか寂しい。キンプリの応援上映をしていて、こんな感情に襲われたのは初めてだ。もしあの時、トイレに籠もっていなければ。たらればが心を覆い尽くし、いつものように声援を送る元気が湧いてこなかった。

 そんなお通夜ムードはしかし、一瞬にして過ぎ去ってしまった。本編が終了し、バルト9の劇場へと中継が繋がる。スクリーンには期待と緊張でいっぱいになった現地の空気感が映し出され、待機中もエリート(注:キンプリシリーズのファンダムの総称)たちのペンラ芸が止まらない。そして、その空気を割くようにして、KOOさんが登壇した。歓声に湧く場内。それは中継先の音声ではなく、間違いなく「今」「ここで」湧き上がった歓声だった。こじんまりとした集団だった我々はいま、「少数精鋭」へと変わった。

 その様子の一部は上掲の動画で確認することができるけれども、本当に夢のような、思い出しただけで元気が湧いてくるような時間だった。KOOさんのプレイに、全力で応えるオーディエンス。映画館にDJテーブルがあるという異様な事態を、プレイヤーと観客のシンクロが上書きしていく。さらに驚愕だったのは、スペシャルゲストとして参加していた及川洸さん(舞台版で黒川冷役を務めた)の圧巻のパフォーマンス。肉体とビジュアルの再現度も含め「あのとき及川洸の体は浮いていたんだ……」と誰もが作中のセリフよろしく、ただただ打ちのめされていた。

 実時間としては、20分から30分程度だっただろうか。その間、同じ劇場に集いしエリートたちは、声を上げ続け、ペンラを振り続け、音楽に身体と心を委ねていた。大好きなアニメの楽曲が、KOOさんという“御本人”のプレイで味わえる。その贅沢な時間を目一杯、私たちは熱狂で応戦し続けていた。

 中でも私が滾ったのが、本編の応援上映でももっとも楽しく、普段なら出せないような黄色い歓声が止まらなくなってしまう、『スーパーダーリン』という曲のプレイだった。三人の男子アイドルユニット「WITH」による2019年の名曲に、今回の映画では3Dライブが新たに製作された。彼らの出身作品である『アイドルタイムプリパラ』をアイカツ!とプリパラのコラボ映画を全力で楽しむために不思議なめぐり合わせにより鑑賞中だった私は、『キンツア』によってさらに“メロつき”を濃くしていた。

 「WHOOOOOOOOO」なのか「キャー」なのか、自分がいったいどんな音を発しているのか未だに判別できないが、このパフォーマンスを観ている時が一番幸せで、自分の中の乙女回路がどうしようもなく喜んでしまう。ユニットでもクール担当、高瀬コヨイくんがサビ前に発する「オレの銀河系……」が好きで好きで、この歌詞が近づく度に緊張が募り、そこからの解放で頭がおかしくなりそうになる。もはや、麻薬のような中毒性だ。ちょうどそのシーンを公式が上げているので、ぜひ皆様にも私のメロつきに付き合ってほしい

 映画本編で一回、DJパーティーで一回。合計2回もスーパーダーリンにメロつけたのだから、ライブビューイングのチケット代は鑑賞料金2回分に相当していないとおかしいのに、なぜだかお金が一本分+αしか払わなくてよかった。これはあり得ないことだ。等価交換の仕組みが狂ってしまっている。そんなことを考えながら、熱狂のパーティーは大成功に終わった。

 中継が終了し、明かりが点く館内。自然と大きな拍手が湧き上がり、各々の健闘を称えるように「IIZE」のコールが最後の花火となって、空間を埋め尽くした。誰もが満足げで、後ろから聞こえてきた「来週もやってほしい!」という言葉にはワイトもそう思った。夢のような時間から離れがたくて、誰もが劇場を去る足取りは重たかったように感じる。

 そんな折、二つ席を空けて同じ列に座っていたお姉さんと目が合ったので、自然と「お疲れ様でした」と口に出てしまった。自分が成人男性である以上、怖がらせてはいけないと思い、普段なら話しかけるようなことは絶対にしない。けれども今日くらいは、イベントの熱を共有できる誰かと言葉を交わしたかった。そして意外にも、お姉さんの口から出た言葉は、「ありがとうございました」だった。

 聞けば、お姉さんは『アイドルタイムプリパラ』の頃からずっとWITH推しで、『キンツア』をきっかけにWITHのことを広く知ってもらえることが嬉しくて、自分もできる限り劇場に通い詰めているという。当時のグッズを誇らしげに見せてくれたお姉さんのありがとうは、「一緒にWITHで湧いてくれてありがとうございました」の意だったらしく、それを受けて、なんだか自分も嬉しくなってしまった。

 WITHが初登場した『アイドルタイムプリパラ』は2017年放送。つまり、『キンツア』までの8年の間、彼女はWITHを推し続けたことになる。その間他のジャンルに移ったこともあったかもしれないが、8年の間ずっとその背中を追い続けて、そして今年になって突然、新規ライブシーンや『BOY MEETS GIRL』のカバーといった極大の供給が降ってきた。それはいったい、どれほどの深い感動だったのだろう。

 一般的に、「推す」ことは尊く、良い事だとされている。とはいえ、「推し続ける」のはそう簡単ではないし、どれだけ想いやお金、時間を費やしたとしても、それが「報われる」保証はどこにもない。好きだという想いに火をくべ続ける難しさは、趣味を持っていれば一度は経験したことがあるはず。

 DJパーティーでたまたま同じ列に座ったお姉さんはきっと、今幸せの絶頂にあるのではないか。そして自分は、その一端を垣間見て、幸せをお裾分けしてもらったのだと、そう受け止めている。好きで居続けると、それがもっと大きな愛になって返ってくる……かもしれない。決して、報われることだけがゴールではないこともわかっている。けれど、実るかもわからない可能性を夢見て、愛の強く太く保ち続けること。私はそれを、「希望」と呼びたい。そんなことを、お姉さんの涙を思い出して、格好つけてみたりした。


あとがき

 というわけで、映画館での一期一会エピソードを、こうして文章にすることができました。柚樹ログ様のアドベントカレンダーは例年だと「ハロプロ」に特化していたと記憶しているのですが、今年は間口を広げていただいたおかげで、自分も末席に加えていただけることができました。改めて、感謝申し上げます。

 前日のご担当は、こざさんによる数奇な?沼落ちの記録でした。前年のアドカレ参加記事にして、今年の前作にあたるこちらも拝読いたしましたが、「見せ算出のさや香担」というまったく新しい概念に驚きました。そこからメロに発展することあるんだ。

 とにかく、ハマったら現場に行く!というバイタリティがなせる文章のスタミナが羨ましい。推しを語る際の、冷静さと狂喜が緩急を紡ぐテキストは、対象を知らずとも読んでいて楽しいものです。ここまで広がった輪が来年にはどうなってしまうのか、つい気になってしまいます。

 おじさんなので、こういった楽曲は調べないと聴けない(映画『金髪』を観よう!)ので、ありがたくおすすめを摂取させていただきました。ライブの湧きが確約されている『アイドルライフエクストラパック』がお気に入りかも。

 あと、日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』で目黒蓮さんに出会ってしまったので、こちらも私にとってはスターターパックでした。これ言われたいもんな、耳元で。

・ミスっても恋のせいにできるし(weibo 2021/06/19)

目黒蓮さんの発言をまとめたらハロ曲できる説

 主催様からもコメントを頂戴しました。ありがとうございます!柚樹ログ様は以前超特急なキンプリ沼落ちブログを書かれており、その存在が今回のアドカレ参加へのモチベーションになったことをここで告白いたします。

 本当、スーパーダーリンって中毒性がとんでもないんですよね。気づけば聴いてるし、自然と身体がメロついてる。そんな楽曲も関係性もキンツア発では全然なくって、数年前から“在った”のに“気づいていなかった”という、WITHにとって飛躍の一年になったことを、年末にしみじみ思います。

 翌日をご担当いただいたのは、かのこさんによるこちらの記事。ライブビューイング仲間です。

 体調面の不安と相談しながらの現場、苦しまれた過去が伝わってきます。見知らぬ土地での慣れない環境は、思ったほか消耗する。お身体の都合があればなおさら、チケットを取るには勇気がいったはず。だからこそ、その勇気が報われ感動が全てを凌駕したこと、ジャンルは違えど嬉しく思います。

 せっかくなので、掲載されている『盛れ!ミ・アモーレ』のMVも拝見いたしました。直近で歌と踊りが豪華絢爛すぎる映画を観ていたこともあり、優雅でセクシーな踊りにはつい見惚れてしまいます。ところで、メガネを着用された女性が気になるのですが、調べたら広大で深い沼が横たわっている気配がしたので、今は調べません。今は、ね……。

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