第5回官能句会作品集~テーマ「後朝の句」&「禁」
「さっぽろ俳句倶楽部」にて、不定期開催中の「官能句会」。
「俳句」という形式に「官能」というテーマが溶け合うかどうか……冒険の意味合いも込めて、毎回自由に楽しみながら句会をしています。
投句も選評も「妄想」歓迎!普段はあけっぴろげにできない想像のスイッチを入れて、美しい世界に耽溺するのも、この句会の楽しみ方のひとつです。
少し間が空いてしまいましたが、昨年12月に開催した「第5回官能句会」の高点句、注目句を挙げて鑑賞していきます。
後朝の句
起き抜けの敬語が嫌い雪催 勲
うそ寒の出社昨日の服同士 源
雪ぼたる涙に羽が生えたなら 優理子
後朝の髪の解れやしずり雪 祐
後朝のメールを開く冬日向 遊子
東雲に染まる乳房に毛布掛け 空素
水満ちる細胞ダブルケットの朝 ともよ
後朝のつれない首に空っ風 青佳
1句目、同衾し睦み合った甘い夜から一転、朝を迎えた時には敬語で喋る距離感へ逆戻りという寂しさ。身体を離し冷めゆく体温、冷静に戻るこころに「雪催」の季語がのしかかります。さて、二人の関係はこの後いかに?
2句目、勢いに任せての一夜の後の出社。少し早起きして自宅に帰る時間はなかったの?なんて野暮なことは聞かないで。周囲に(とくに上司に)気づかれないようにと身が縮む思いのふたり。「うそ寒」が巧い。
3句目、後朝のセンチメンタルな気分を雪ぼたるにのせて。俳句としては抒情成分多めで、このまま七七に何かを付け加えて和歌にしてもいいかも(という自句自解)。
4句目と5句目は、正面から「後朝」の語を詠み込んだ句。4句目は「髪の解れ」と「しづり雪」のしどけなさが重なり合い美しい。5句目は落ち着いた大人の恋。文ではなくメールという現代性、それをのんびり冬日向でひらき、心が温まるという景。大人。
6句目「東雲」の古語に後朝の香りが漂います。乳房と生々しく読んでも、性的な匂いがなく品が良いのがお手柄。染まっているのは夜明けの光のせいばかりではなく、昨夜の熱気の名残とも。毛布にくるまって、その余韻を楽しんで二度寝へ落ちる幸福。
7句目、水満ちる細胞に命の交歓を終えた満足感がうかがえます。「ダブルケットの朝」で、まどろみ半分の中にとろとろしている幸せ感も伝わります。
8句目は、せつない句。こちらが思うほどにお相手は…というところでしょうか。ベッドの中では優しかったのに去る時はあっけなく。えい、空っ風に吹かれて、少しは思い知れ!という感じかな。
思いを縷々語れない、モノに託す俳句で後朝をどう詠むかという問いに、皆さんそれぞれの「経験値」で見事にお応えくださりました。場面の切り取りと配合する季語の化学反応で、十分後朝の余韻は表現できるのだなぁと感じました。
「禁」の一字詠み込み
凍蝶や禁書を解くやうに抱く シルマ☆
君といふ白鳥とゐる禁猟区 夜汽車
その嘘は禁じ手寒椿落ちる はな
吹雪く夜の軟禁しあう舌と舌 八日きりん
禁足の凍湖とならん人ふたり 鯊夢
目瞑れば18禁の細雪 和弘
禁じられた恋カップ麺の聖夜 美髯

1句目、「禁書を解くやうに抱く」の措辞に滲むミステリアスな雰囲気が魅力。触れてはいけない、でも触れてしまう。憧れが現実に変わり、大切に大切に相手を扱う指先が見えて来るよう。上五「や」で切るか「の」で繋ぐか、その違いについて意見が出たりするなど、話題となった句でもあります。どちらの選択肢もアリですが、「や」で大きく切ることにより、凍蝶の残像が濃く残り、飛躍の余白に詩の深さが生まれるように感じます。
2句目もまた、ミステリアスな状況設定。「禁猟区」という言葉に、どこか官能の昂ぶりが宿ります。捕らえたいのに捕えてはならない。側でその美しい白鳥のような肢体を眺めるだけ。
3句目は訳アリなイメージ。男女の色事に大小はあれど「嘘」はつきものとはいえ「禁じ手」の嘘とは穏やかではありません。その嘘を言われたら一気に夢から覚めてしまうのでしょう。寒椿が落ちるように。
4句目は、エロス全開の句。「軟禁しあう舌と舌」の湿度と粘度を、吹雪と融合させることによって、ドラマに昇華させています。
5句目は、なかなか意味深な句で、難解といえば難解。「禁足の凍湖」の緊迫した美しさ。他者が足を踏み入れられない、隔離された二人の世界がそこに広がるということか。
6句目、「細雪」は谷崎潤一郎の小説(を元にした映画)をイメージ。カギカッコ付ではないので、「細雪」という季語そのものが18禁であるように読めるところが面白い。
7句目は、二物衝撃の面白さ。「禁じられた恋」の切実さに「カップ麺の聖夜」のへろへろ感。秋元不死男句のように「ワンタン」ではなくカップ麺を啜っているのが現代的。
「禁」は、わりと官能に傾けやすい一字と思っての出題でしたが、上質なエロス、俳味を加えてのアレンジなど、それぞれの技の光る句がたくさんありました。
~~~~~~~~~~~
さっぽろ俳句倶楽部はどなたでも参加自由ですので、気になる方はこちらからお問合せどうぞ。官能句会は半年に1回程度、普段は「ふつうの句会」です(笑)次回の夏雲システム活用の通常句会は令和年7年1月22日に兼題発表の予定です。(X @yurikoseto でも告知しています)
過去の官能句会の作品や鑑賞をご覧になりたい方は、こちらへどうぞ。
いいなと思ったら応援しよう!
ご協力ありがとうございます!
いただいたサポートは、「俳句の種まき活動」に活用させていただきます。
各地へ俳縁が広がっていきますように♡