見出し画像

SF映画はこうであってほしい『プロジェクト・ヘイル・メアリー』感想

SF映画はこうであってほしい。
極限の科学と、逃げ場のない孤独。
人は何を力にして踏ん張るのか。その答えが、この作品にある。

太陽エネルギーが奪われ、数十年後に地球は氷河期に突入する。原因解明に向けて宇宙に送り込まれたグレースは、科学の知識で80億人の命をかけた最後の賭けに挑むが、この危機を救おうとする相棒と出会い、共に愛する故郷を救うため宇宙の超難題に挑む。

PROJECT HAIL MARY

グレース(ライアン・ゴズリング)

博士号を持つ科学者でありながら、今は数学教師をしているグレースは、宇宙飛行士でもヒーローでもなく、「自分には無理だ」と本音をこぼしてしまう人間らしさがある。ただ、科学の話になると気が強く、解明するまで諦めない芯の強さがずば抜けている。

宇宙では危機的状況が何度も起きるが、その都度対処していく。天才科学者とは、ここまでタフでいられるのか。軽やかにジョークを交えながら冷静さを保ち問題を解決していくグレース。極限状況でこそ余裕は武器になる。

地球の計画関係者に記憶を消され塗り替えられ、宇宙に無理やり送り出されたグレースだが、徐々に記憶を取り戻し、人間に裏切られ道具として使われたことへの寂しさと孤独がにじみ出る。

ロッキーに、このプロジェクトが片道切符であることを話す場面。ロッキーから「地球に戻らないとだめだ」と優しく言われた瞬間、グレースは大泣きする。逃げ場のない宇宙船で押し殺していた恐怖と孤独が一気にあふれ出たシーンは、こちらも涙がこぼれてしまう。

ロッキー

惑星エリドのエンジニア。岩のような見た目からグレースにロッキーと名付けられた。性格は、どこかにいそうな親しみやすさがあり、思ったことをすぐに口走る早口なタイプ。

「僕が作った」と言うなど、エンジニアとしてのプライドが高い。地球人が開発した技術にも興味津々で、好奇心旺盛である。技術者気質という感じがとても出ていて、少し鬱陶しいところがリアルだ。

親指を上にあげるサムズアップ。ロッキーは親指らしきものを下に向けるポーズをとる。でも本人はサムズアップをしているつもりで、コミュニケーションをとろうとしている所がかわいい。

友情

性別や年齢、国籍の違いを超えた、地球人と宇宙人の友情が描かれている。グレースとロッキーは、意外にもすんなり相手を受け入れる。怖さよりも、相手を知ろうとする興味が勝っているところは、どこか似た者同士にも見える。次第に見ているこちら側も、グレースとロッキーの外見や住んでいる星の違いを意識しなくなる。

お互いの科学知識を出し合い協力して多くのミッションを解決していく。ミッション解決後にやるグータッチ。グーパンチと言い続けるロッキーだが、それでもいいと思えてしまう愛嬌がある。

終盤は命がけで太陽エネルギーが奪われる問題を解決しようとする。お互いに相手の命を守ろうと緊張が走り、思わず息を詰めて見入ってしまうシーンが続いた。

映像の美しさ

ロッキーの宇宙船、シャープで鋭利な金属と岩のような不思議な質感。無機質でありながら高性能な機能を兼ね備えた素晴らしいデザイン。

そして、宇宙空間の無限の広さや怖さが伝わる映像で、観ている私も腰が引ける怖さを感じた。

地球の広大な敷地にある研究所や、グレースの宇宙船内の操縦席に至るまで徹底的に作り込まれており、止まらないストーリーに引き込まれながら映像にも食い入るように見入ってしまった。

おわりに

ライアン・ゴズリングの演技も素晴らしく、あの柔らかな表情が、極限状態の物語に人間らしい温かみを与えていた。

壮大なスケールのSF映画でありながら、一つひとつの描写から友情や諦めない心が伝わってくる。人と人という枠を越えて、自分が選び取った場所こそが居場所なのだと感じた映画だった。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集