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鑑賞者の前で形を変えることばたち:パク・チャン・セヨ「Floating Nuances」(Gallery KTO 新宿)レポ

昨日2025年11月24日、Gallery KTO 新宿で開催中の、韓国を拠点に活躍されているコンセプチュアル・アーティストである、パク・チャン・セヨ氏による個展「Floating Nuances」を見に行った。パク氏とも会場で会話することができ、大変勉強になったのでレポの形で残しておく。

「アートは名詞から動詞になった。私は、副詞や形容詞、さらには接続詞のアートを作ってゆきたい」。当日パク氏との会話の中でこの言葉が最も印象に残った。今振り返ってみても、今回の個展で展示された「from your memory」シリーズについて、最も本質的な言葉だったと感じる。

パク氏の経歴や背景、汲んできた文脈はGallery KTOの解説をご覧になっていただきたい。

ここでは単に、今回展示された「from your memory」が表層的にどのようなアート作品かについて触れるに留める。アルミフレームを組んで張ったキャンバスに、カラースプレーで「雲」のような画面を構成する。そこに、ステンシルでさまざまなトーンでのフランス語の単語が乗せられている、というものである。

“雲”は自然界の色彩が重なるように表現され、時間帯や観測者との距離――雲の中にいるのか、同じ高さにいるのか、あるいは地面から眺めているのか――を自在に想像させる。
“単語”は多くが雲の性質(不確実性・普遍性・儚さ)を示すものや、内省・夢などに関わる哲学的な語で、金・銀といった自然にはない色調が選ばれている。濃淡も操作され、はっきり見えるものもあれば、ほとんど消え入りそうなものもある。その結果、文字は断片化され、観測者が見る角度によって強調される箇所が変わる。絵と向き合うたびに異なるイメージや意味が立ち上がるように作られている。

ここであらためて、パク氏の言葉にあった「形容詞のアート」「副詞のアート」、そして「接続詞のアート」とは何か問おう。名詞や動詞がそれ自体で意味を持つのに対し、形容詞や副詞は名詞・動詞を修飾することでイメージを確定させる性質を持つ。接続詞は単独では像を結ばないが、文と文をつなぐことで文脈を活かし、新たな豊かさを生み出す。
すなわち、これらのアートは他者との関係性を媒介し、作者と観測者の思考が混ざり合う地点から新しい意味が生成されるもの、ということなのだろう。

ちょうど、刻々と形を変える雲に、われわれがつい意味を読み取ってしまうように。相互作用としての交流の中で、意味や詩が、絵画の向こう側に立ち上がる。その過程こそ、このアートの核心に思える。

パク氏は「この作品はアートであって詩ではない。しかし、読み手がこのアートから詩を読み取ることを意図している」とも語っていた。
確かに、これは単に“多義的に読める”という言語内部のバリエーションではない。書き手と読み手のあいだで、常に新しい詩が生まれ続けるような構造を持つ。それは本質的にアートであり、詩などの言語芸術とは異なる領域に位置している。

とはいえ、詩がそこに肉薄していく余地はあるように思う。自己の内省からいったん自由になり、他者との関係性の中に詩を置くことで、詩はより広い領野を獲得できる。
その先には、容易に想像がつくように、詩そのものが抱える“意味の希薄性”との闘いが待っているのだろう。

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