年金1級からの社会復帰②あがいても変われない日々
前章の続きです。
建築現場で働く

うつで大手企業を退職し、離婚をした。
一人で食い扶持を稼がなければいけない。
心機一転し、僕は建築現場の作業員になりました。
あいかわらず新天地を夢を見て、今までと180度違う生き方をすれば何かが変わると思っていたのです。
建築現場の作業員、いわゆる「職人」と呼ばれる人たちは,、それまで僕が最も敬遠していたタイプです。
半数はいわゆるヤンキー、元ヤンです。
なぜか底辺の仕事と思われがちですが、実際のところ学歴社会からドロップアウトして「他に選べなかった」人よりも、「望んでこの世界に入ってきた」人の方が多数派でした。
勉強なんてつまらんから、早く自分の力で稼いで一人前になりたいよ、ってタイプです。
そして昨今の日本においては、オフィスワークも肉体労働も給料に差はありません。
(業界経験ゼロでもいきなり日当1.3万とかいけます。)
筋肉・運動神経ゼロだった自分が、そこで少しばかり続けられたのは、そこで出会った人たちが本当に好きだったからです。
サラリーマンの世界とは違い、バカヤローコノヤローは日常茶飯事、時には手や足も出ます。
ずっと年下(20歳くらい)の先輩に怒鳴られ、すみませんでした、と頭を下げなければなりませんでした。
でも彼らはネチネチ嫌味を言ったり、いつまでも根に持ったりはしません。
怒った後は「さあ、リセットだ」と言わんばかりに僕に期待してくれます。
そして、そうやって怒鳴ったり偉そうにしている人ほど、後輩に優しいです。
残業代が出るわけでもないのに時間を割き、資材の担ぎ方や番線の結び方をいちから教えてくれました。
社長は社長で、大して儲かってなくても見栄を張り、月に一度は焼肉を奢ってくれて、全員が「ごちそうさまでした」と頭を下げます。
そんなもの行きたくないし、どうせ経費で落ちるんだろと、タダ酒飲んでも誰も何も言わないサラリーマン時代とは大違いです。
職場の飲み会で感動したのは人生初でした。
そんな出来事の積み重ねは、仕事観というより人生観が変わる体験でした。
発達特性が働く

僕が再び逃げ出した理由は、彼らがとても好きだったからです。
肉体労働に必要な能力は、筋力・運動神経より、視覚と聴覚の処理能力でした。
「発達障害あるある」にありそうですが、
僕はなんとなく見えたものを全く記憶できません。
見たものにすぐ反応するのも苦手です。
GoogleMapを見ても道に迷う方向音痴で、車幅感覚がつかめずに車もよくぶつけます。
つまり、視覚で周囲の状況を把握することがほぼ不可能でした。
現場で必要な材料を素早く探したり、指示された場所へ一人で移動したり、改装中の建物で資材をぶつけずに運ぶ、ということがほぼできませんでした。
聴覚に対しても、僕は難聴を疑われるほど悪かったです。
実はこれは聴力ではなく、建築現場の騒音の中で「雑音と人の声が区別できない」という言語処理力の欠如です。
(カクテルパーティ効果といいます)
筋力がなくて物をたくさん持てなくても、ダッシュで倍往復すればいいのです。
そうすることで「根性だけはあるやつだ」と周りも認めてくれます。
ですが、視覚と言語処理力の問題は、周囲を非常にいらだたせ、自分の力ではどうしようもありませんでした。
昨今、建築業界は人手不足です。
先輩の当たりが強くて若手が何人も辞めていきます。
負けず嫌いな若者が減ったのだと思います。
僕は若くないにしても、何度怒鳴られても辞めない、あとよく分からんすごい大学出てる、という珍しい存在で、可愛がってくれる人にはたくさん出会いました。
ですが、そういう期待を向けられても応えられないことが辛くなり、ついには逃げ出してしまいました。
その先には何もなく

大手企業キャリアコースからドロップアウトし、自分の好きな世界からも逃げ出した。
その理由は明らかで、自分が非力だからです。
食い扶持を稼ぐに必要な力も、何かあったときのストレスに耐えるメンタルもない人間でした。
不潔な格安シェアハウスの部屋にこもり、自己否定のどん底からうつ状態・就労不能の泥沼に浸かっていました。
似たような人がたくさんいることは見て見ぬふりをし、自助グループのことを調べようともせず、常に孤独と二人きりでした。
その時は、自分は世界でたった一人、一番最悪な人間だと思い込むことが、妙に心地よかったことを覚えています。
虚無感を埋めようとするように、布団の中で自虐的な妄想をくり返します。
朝起きると、賽が振られその日の予定が決まる。
出目はランダム、イカサマは禁止。
「最悪、最悪、悪い、悪い、悪い、マシ」の六面体。
愚かな考えですが、当時の心情を思い返すとぞっとします。
「誰もわかってくれない」
「誰も助けてくれない」
「救われない」
そのことを100%疑いませんでした。
…はい。
また暗い内容になってしまいましたが、次章はいよいよそこから浮上する話です。
以上です。
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昔の自分のようにお金がない人が多いと思いますので、無理はしなくて結構です。