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セルフレジ不正問題。未然に防ぐ店舗づくりとは?

近年、スーパーマーケットやコンビニエンスストアで導入が進むセルフレジ。レジ待ちのストレス低減や人手不足への対応として顧客・店舗双方に利便性がある一方で、操作への抵抗感や、運営コスト、サポート体制など、様々な課題も指摘されています。
そうした中で、「不正」という新たな課題も顕在化しているようです。セルフレジの適切な運営とお客様の買い物体験向上を両立するには、どういった工夫が求められるのでしょうか。
今回は、セルフレジの現状と課題、そして店舗側の対策について、「販売革新」編集委員・梅澤聡さんにレポートいただきました。

年々増加するセルフレジの導入

セルフレジの導入がスーパーマーケット各社で進んでいます。
『2025年版 スーパーマーケット白書』(「一般社団法人 全国スーパーマーケット協会」発行、企業数856社、店舗数23,039店)によると、お客が自分で商品バーコードをスキャンして精算する「セルフレジ」の導入率は、2020年の15.8%から伸長を続け24年には37.9%に達し、従業員がスキャンしてお客が自動釣銭機で精算する「セミセルフレジ」も、20年の64.0%から24年の77.1%まで拡大しています。

出典:一般社団法人全国スーパーマーケット協会
2025年版 スーパーマーケット白書」より筆者作成
※業界推計値。算出方法は、回答企業の保有店舗構成比を
国内スーパーマーケット企業の保有店舗構成比にウエイトバックを行った

マルエツ、カスミ、マックスバリュ関東、いなげやのスーパーマーケット4社を束ねるユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(イオングループ)も、2024年度の施策として挙げたデジタル化の進展の中で、セルフレジの導入が660店舗中の約460店舗(69.7%)に伸長したと記しています(2025年2月期決算説明資料)。

マルエツはセルフレジを積極的に設置している。
写真の「マルエツ千歳船橋店」では、
セルフレジエリアをワンウエーにして、
お客にとってストレスのない環境をつくっている
(2025年5月30日「販売革新」編集部撮影)

同社が商圏とする都市部の店舗は、地方部と比較して客層が若く、セルフ化に抵抗感のないお客が多いといわれる中、セルフレジの導入を積極的に進めています。

コンビニ業界を見ると、セブン-イレブンは20年9月にセミセルフレジの導入を始めて、21年夏に全国の9割にあたる店舗への設置を終えています。それと併用してセルフレジも25年度に設置可能な全ての店舗に導入する計画です。セブン-イレブンは、お客がセミセルフによる支払いに慣れたとみて、今度は商品の読み取りもセルフで行うセルフレジを本格採用しています。

ウォルマートがセルフレジを導入する理由

小売業でセルフレジが拡大する背景には、人手不足の解消と、店舗人件費の適正化が挙げられます。スーパーマーケット各社の決算書を見ると、食品の値上げにより売上高が増加し、原価を引いた売上総利益も伸長。その一方で販管費(販売費及び一般管理費)も増加、中でもベースアップや時給アップを進める必要性から人件費の抑制が難しく、売上総利益から販管費を差し引いた営業利益が軒並み前年比でマイナス傾向になっています。

その結果、「増収減益」の企業が続出、人件費の適正化は喫緊の課題であり、その一つにセルフレジの導入と拡大があると考えてよいでしょう。

ただしセルフレジ導入の目的に、お客の利便性向上を忘れてはいけません。有人レジ配置のスペースを考えると、それより多くのセルフレジを配置できます。結果としてお客の「レジ待ち」時間を削減でき、快適な買物環境の提供に寄与できます。世界一の小売業であるウォルマートも自社の動画で次のように説明しています。

「With fewer lines, customers are able to save time. Hosts are there to help customers.
And wide-open area allows more freedom to interact with customers and associates.
Testing ideas like the new checkout area will help us build better experience.

「お客はレジに並ぶ行列をなくすことで時間を節約できる。(セルフレジの)サービス係はお客を手助けする。そして広く開かれたレジスペースは自由にお客と従業員が交流できる。新たなセルフレジエリアは、よりよい体験を作り上げることに手助けになるだろう」。

(特定非営利活動法人 全国万引犯罪防止機構 ホームページ「セルフレジ不正について」より)

また背景として、スキャン精度の向上やキャッシュレス決済との連携、AI画像認識の導入などで操作性が改善するなどの技術革新は見逃せません。さらにセルフレジ機器の価格低下により、中小規模店舗でも導入可能となるなど、コスト面も大きく影響しています。

不正はどのようにして発生するのか

その一方で深刻な問題があります。セルフレジで起こる「不正」です。
前述の万防機構は小売業における不明ロス額は年間で8,350億円(2023年度)と算出、そのうち万引き被害額は3,460億円あると推計し、セルフレジの不正もその要因の一つと考えています。

万防機構は、24年12月に、小売事業者、保安警備業者、セルフレジメーカー、警察などの事業者が参加する「セルフレジ不正対策会議」を開催、セルフレジで生じる不正について情報交換の重要性を訴えています。
万引きの被害に悩む事業者のみならず、各社が情報を共有し、警察とも連携しながら協力体制をとり、対策を講じていく必要があるとしています。

前提として不正がどのように起こるのか、知っておく必要があるでしょう。

一つ目は、バーコードを手で隠す、あるいは故意にバーコードをスキャンせずに袋に入れる方法です。仮に従業員に不正を指摘されても「気が付きませんでした」と、うっかりミスで通すことができます。

二つ目は、高額な商品と安価な商品の二つを同時に手に持って、安価な方のバーコードをスキャンして高額な商品を不正に入手する方法。例えば、お米の袋(5キロ)とガムを同時に持って、ガムのバーコードだけをスキャンする手口です。

三つ目は、高額商品のバーコードをはがし、あらかじめ用意した、もやしのような安価な商品のラベルを貼り付けてスキャンする方法。米国や英国では典型的な手口とされています。

四つ目は、セット販売の商品を単品で登録する方法。外側に付いたセット金額のバーコードではなく、内側にある単品の商品バーコードをスキャンする方法。こちらも「間違えました」と、うっかりミスで逃れることもできるでしょう。

五つ目は、バーコードの付いていない商品の不正。例えば青果物の一部を画面上で選択する際に嘘の申告をする方法。商品は、ジャガイモや玉ネギ、キュウリのバラ売り、あるいはブロッコリーなどパッキングが難しい商品に適用されます。異なる商品を登録したり、個数をごまかしたりするケースもあるでしょう。

上記以外にも、あの手この手は考えられます。こうした方法はSNSでも数多く紹介されています。店側への注意喚起ならよいのですが、「裏技」と称した、不正につながるような紹介も散見されます。

長い間、お店を利用し続けた顧客でも、ある日、魔が差して不正を働く可能性があります。不正を発見する店側にとっても辛い出来事になるでしょう。店側は不正の手口を知っておく必要がある一方で、お客に不正をさせない環境づくりが求められます。

不正をさせない店側の環境づくり

不正をさせない環境づくりに関して、一つ目セルフレジを設置するエリアの視認性を良くすることです。レイアウト上、入り口と出口を明確に定めて、ワンウエー(一方通行)でお客の流れをつくること。精算前のお客と、精算後のお客が導線上で交差しないことが大切です。利用客にとっても、ストレスが少なくスムーズな流れとなり、店側にとっても不審な行動に気が付きやすくなります。

「デリシア うえまつ店」では、
セルフレジエリアの入り口がわかりやすく表記され
スペースも充分に確保され
スムーズに会計できるよう留意している
(2024年10月23日「食品商業」編集部撮影)

二つ目は、最新デジタル機器の活用です。今やセルフレジの上部や側部に不正防止のためのカメラの取り付けは当たり前になっています。録画していれば不正の証拠になるし、カメラの存在が不正の抑止につながっています。

さらに不正行為を検知するAIカメラも既に開発されています。セルフレジに持ち込まれたカゴの中にある商品の数を検出して、レジに登録された商品の数と差があるか否かを確認して、スキャン漏れを検知します。また、バーコードリーダーの前を通過した商品の画像情報と、スキャン登録された商品が一致しているかを識別するAIカメラも開発されています。

AIカメラの進歩は日進月歩で、同時に導入コストも下がれば、いずれはセルフレジがスーパーマーケットをはじめ、さらに多くの小売業で展開されると推測できます。しかしながら、セルフレジの操作が困難な高齢者もいれば、店舗によって異なるシステムに不慣れであるとか、あるいは有人レジの時代と同様に、可能であれば従業員と一言二言、言葉を交わしたいといったニーズもあるでしょう。

そこで三つ目の環境づくりは、セルフレジのエリアに配置する接客要員です。目的は不正の摘発ではなく、お客が快適にレジ精算できるようにサポートすることです。その上で不正を検知したら、お困り事と捉えて事情を聞くことです。スキャン漏れが、恣意的なものなのか、単なるミスなのか判断ができないケースが多々あります。例えば、店舗によって、レジ袋にはバーコード付きのものと、バーコード無しのものがあり、前者はレジ袋を広げる前にスキャンが必要で、後者は広げた後に画面上で登録をします。後者の精算方法に慣れた利用客が前者のお店に行くと、レジ袋のスキャン漏れを起こしやすくなります。

実は筆者もその一人で、前者のお店でレジ袋をスキャンせずに広げたところ、険しい顔をした従業員から「レジ袋の登録はお済みですか」と強い口調で言われて、驚いた記憶があります。 

また、高齢化が進展すると、一度覚えた操作手順でも、例えばシステムの更新などがあれば、高齢の利用者が直ちに順応することは難しくなります。接客要員が使用方法の説明をしっかり実施しながら「いつもお越しいただきありがとうございます。他にご不明点などございましたら、いつでも結構です、お声掛けください」と感謝の意を表明すれば、お店の好感度はさらに向上するでしょう。

不正を起こすお客の発見を店側が優先すると、従業員のお客に対する目も「犯人捜し」に終始してしまいます。本来であればホスピタリティ(おもてなしの心)を軸にお客との接点を考えるべきなのに、それらが失われてしまったら身も蓋もありません。

セルフレジの導入は、お客の利便性を高め、快適なレジ精算の提供により、買物体験を向上させる取り組みです。販管費の削減に留まらず、しっかりと不正に対処しながら、お店の好感度を高めるチャンスと捉えたいものです。

 (文)販売革新 編集委員 梅澤聡

セルフレジの普及と不正の実態、さらには店舗での具体的な対策について、詳しく解説していただきました。
不正を防ぐための環境整備には、視認性を高めるレイアウト設計やAIカメラの導入といったハード面の工夫だけでなく、接客を通じて信頼関係を築くソフト面の姿勢も欠かせないことが印象的でした。中でも、「犯人捜し」というマインドではなく、「お困り事として捉える」という接客スタンスは、多様な世代が利用する店舗において、ホスピタリティの重要性をあらためて感じさせるポイントです。
今後、技術の進化とともにセルフレジはさらに広がっていくものと思われますが、人だからこそ伝えられる温かみや心配りをどのように残していくのか、そのような視点からも注目していきたいと思います。