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都合の悪い事実ほど、正面から扱える組織へ

私は銀行・証券・事業会社で金融や財務に携わり、現在は上場企業の監査に関わっている。そこで感じるのは、経営者に関係する問題ほど、事実の確認が難しくなるということである。説明を求める相手自身が、その問題の当事者であることもあるからだ。

SDGsの目標16は、「効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する」ことを掲げている。ターゲット16.6は、直接には公共機関について、「有効で説明責任のある透明性の高い公共機関を発展させる」と定める(外務省仮訳)。しかし、正しい情報に基づいて判断し、その過程を検証できる仕組みは、企業にも欠かせない。

2026年6月、I-neは、東京証券取引所から宣誓書違反による再審査に係る猶予期間入りと、3,360万円の上場契約違約金の徴求を受けたことを公表した。

発端は、過年度に商標権を取得した取引先が、同社の関連当事者に該当したのではないかという疑義である。東証によれば、代表取締役社長は、その取引先の代表者に多額の融資を行い、事業方針などの重要な意思決定を支配していた。それにもかかわらず、取締役会、監査等委員会、会計監査人や東証に対し、関与の実態について事実と異なる説明が行われていた。

私が「あれっ?」と思ったのは、監査等委員が問題意識を持って確認し、外部専門家にも照会していたのに、執行側から独立して情報を検証する組織的な仕組みが十分でなかったことである。また、取引に違和感を持つ従業員がいたものの、その声も適切に上がらなかった。

透明性とは、都合のよい情報を開示することではない。経営トップにとって都合の悪い事実ほど、正面から確認し、必要なら本人の説明とは別の経路から検証することである。

未来のためにできることは、「誰が説明したか」ではなく、「何によって事実を確認したか」を問い続けることだ。その姿勢が、組織と、そこで働く人や会社を信じる人を守ると考えている。
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元証券マンが「あれっ」と思ったこと
発行者HP http://tsuruichi.blog.fc2.com/
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