お姉ちゃんの声 761字
早朝、屋根付きのベンチへ行って、ウクレレの朝練をする。
その前にいつもそこに置いてある箒で、ベンチ周り、通りの掃き掃除をしていた。落ち葉とか多いのでね。
そうしている内に、そこを通りがかる一人の女性と仲良くなった。お互い「つるちゃん」「お姉ちゃん」と呼ぶ親しい仲になった。
元々明かるい気質、朗らかなお人柄だった。直に、私の来ない時は、彼女が掃き掃除をしてくれるようになった。
私は努めて、そのベンチの前を通る人へ「おはようございます」と挨拶していた。彼女も掃き掃除をしながら、私の真似をするようになった。私よりも素直な性格故か、他のみなさんとすぐに打ち解けて、短い会話を交わすようになった。
「つるちゃんには感謝してる。いつも何でも私の話聞いてくれて答えてくれるから。みんなって、話を聞いてもらいたいんやね」
「お姉ちゃんだって、話を聞いてもらわなきゃ。そのための私よ」
「人さまを見てると分かるの。最近だけど。みんな聞いて欲しいんだなって」
彼女の声ははきはきしていてよく通る。だから私も努めて、はっきりとした声を出して、彼女の声に応える。彼女のテンションに合わせている訳だけど、気は悪くないので、進んでエネルギーを使いたい訳だ。いい朝になる。
掃除が終わると、そのくりっくりの目玉を輝かせて、「ラジオ体操に行ってくる、ありがとう、つるちゃん」と言ってさよならする。
彼女のお世話をしているつもりが、気が付いたら頼もしくなられて、私の方が、彼女を慕う気持ちになっていた。恋愛ではないけれど、人としての魅力を感じるようになっていたのだった。ベンチへ行けば、彼女がてきぱきと掃き掃除をする姿と、元気な「おはようございます」の声が聞ける。こういう人との出会いもあるものだなぁ。掃き掃除もしてみるもんだ。
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